第6話 久しぶりの外出(1)
「ねぇ、アルフレッド。」
「何ですか? 姫様。」
「少し、城の外に出たいんだけど…、ダメかな?」
俺はアルフレッドを見た。
書庫に行って以来、俺は少しずつ歩く練習をした。
アルフレッドの支えなしでも、段々歩ける距離が増えてきたのだ。
「俺も少しずつ動けるようになってきたし、少しは外の空気を吸いたいんだ。」
「ふむ…」
アルフレッドは腕を組んだ。
「城下町であれば安全はある程度確保されていますが…、ごろつきのような者もいます。」
「町の外は?」
「町の外には魔物がいます。」
魔物! 何というファンタジー!
「それって危ないの?」
「町周辺の魔物であれば、僕の実力で十分倒すことができます。」
「じゃあ、決まり! 町の近くでいいから、少し外を見てみたい!」
俺は目を輝かせた。
「仕方ありませんね…」
アルフレッドはため息をついた。
1時間後、俺とアルフレッドは城に出た。
まずは城下町を通って町を抜ける行程だ。
俺は頭をすっぽり覆うことができるフード付きのローブを身に着けた。
例えるならばF○の白魔導士のようなやつだ。
俺の顔は結構可愛いと思う。
このローブに猫耳がついていたら、コ○ケに行けば結構写真を撮られそうだ。
残念ながら胸はあまり無いけど…。
「ねぇ、アルフレッド。俺、どうして頭隠さなきゃなの?」
「…用心の為です。」
アルフレッドはそれ以上答えなかった。
アルフレッドは普段の恰好に護身用の剣を携え、マントを羽織っている。
冒険者って感じだな。
さて城下町だが、今俺たちが歩いているのはメインストリートみたいな処だ。
それほど広くはないが両側には商店が立ち並び、かなり活気がある。
「うわ! アルフレッド、あれはなに?」
俺が指さした先には肉屋があった。
凄いでかいイノシシのような動物がぶら下げられていた。
「あれは近くの森に生息する魔物のボアです。あれ程の大きさであればC級の魔物でしょう。」
「あ、あれ食べられるの?」
「ボアの肉は家畜の豚より少し肉が固いですが、美味ですよ。」
アルフレッドはにっこりとして答えた。
「ふーん。」
この世界にはあんな魔物がいるのか。
C級とか、そういうランク付けとかはよく分からないけど。
なんだかワクワクするな!
ドン!
考え事をしていると、俺は冒険者の男にぶつかってしまった。
「ああ? 姉ちゃんよ。 どこ見て歩いてんだ?」
如何にも、というような男が俺を睨み付けた。
どこの世界にもこういうやつっているんだな。
考え事をしている間に、アルフレッドとの距離が少し離れてしまっていた。
「ご、ごめんなさい…」
俺は謝った。
無論、謝るなんてシャクだが、俺はひ弱だ。
前の俺なら、こんなやつボコボコにして終わりだ。
「許してやろう、俺は寛大だからな。だが…」
冒険者の男がニヤニヤした。
「ちょいと俺に付き合いな。さぁ、こっちに…」
男が俺の腕を掴んだ。
「な、何するの…? やめて!」
思わず女の子のようなセリフを出してしまった。
あ、いや、俺は女の子だから良いのか。
俺の力では、振りほどけない。
「貴様、僕の連れに何をする」
俺の声を聞きつけ、アルフレッドが駆け付けてきた。
右手に持った小さい杖を男に突き付けた。
男に向ける目つきは普段見られないような鋭さだ。
「僕は無詠唱で火炎弾を放つ事ができる。冒険者なら、この杖に魔力が込められているのが分かるだろう?」
「あ、あうあ…」
男の目が泳いだ。
「黒焦げになりたいか?」
「い、いや! すまねぇ! そ、そんなつもりは無かったんだ。」
男は俺の手を放した。
「ならば去れ。二度と僕たちに近づくな。」
「わ、分かったよ。」
男は逃げる様に去っていった。