第54話 北方洞窟探索(4)
「す、すごい…」
俺は目の前の光景を目にして呟いた。
100体はいるであろう不死系の魔物達が次々と石と化しているのだ。
そう、まるでメデゥーサの目を見てしまった者のごとく。
数分後、最後の1体が石化した。
「ふぅ…」
リディが目を押さえながら息を吐いた。
「もう、大丈夫だよ。ぅ…」
リディはそう言って振り向いたが、ふらついて倒れそうになった。
カールが駆け寄り、リディの体を支えた。
「リディ、大丈夫?」
「う、うん…。今のが…俺の能力のひとつ、石化凝視だよ。長く使うと頭がくらっとするんだ。」
「大したもんだ…。む!?」
ドドドド!
前方の岩が崩れ始めた。
そしてその奥から…!
「な、何なのあれ!?」
俺はその姿に驚きの声を上げた。
数メートルはあろうその姿は、まるで恐竜の骸骨のようだ。
「ふん。こういった場所にはフロアボスみたいなのがいるのは定石だろう。」
テオドールがニヤリとした。
「た、確かにそうだけど、ちょっと大きすぎない?」
「あれは俺が…」
「待て。」
リディが立ち上がろうとしたが、テオドールはそれを制した。
「今のお前は消耗しているし、あれに石化が効くかも分からん。それよりも…」
テオドールが俺とカールの方を見た。
「カール。オレとアスカが左右から奴の注意を引く。お前は少し遅れて中央から掛かってくれ。そしてリディ、お前はクロスボウで後方から援護してくれ。アルフレッド、お前は習得した光属性の攻撃魔法を詠唱して、合図とともに放ってほしい。」
ですよねー。
俺、気付いたら前衛キャラになってしまった。
風の永続的身体強化が出来る様になったから、敵の動きの読み違えさえなければ大丈夫なはずだ。
多分。
防御力は無いから、うまく立ち回らないといけないけどね。
「ガストン、すまんがお前はリディとアルフレッドのガードをしていてくれ。」
「…分かった。」
ガストンにしたら面白くはないだろう。
だが今回の場合、前衛にガストンの出番は無い。
テオドールの剣技と風の永続的身体強化を習得した俺の方が、戦闘能力は高いからだ。
カールにしてもそうだ。カールも既にガストンの実力を超えているだろう。
「よし、行くぞ!」
テオドールの合図で、俺達は前に出た。
俺は風の力で一気に加速した。
横を見ると、テオドールもそれほど変わらないスピードで前進していた。
…訳が分からない。
こいつは何でこんなに速く動けるのだろう?
体にド○ゴンボールの「気」みたいなものでも纏っているのだろうか?
ヴォォォォ!
恐竜骸骨(仮名)が息を吸い込んだ。
骸骨で肺が無さそうなのに何で息を吸い込めるのか?
そんな野暮な質問は無しだ。
そして息を吸い込んだ後のパターンは大体決まっている。
そう…、きっとブレス攻撃が来るのだろう。
焼け付く息? 燃え盛る炎?
そんなものは何でも良い。きっとろくでもないものだ。
「テオドールさん。これは恐らく…」
「ああ、お前の想像の通りだろうな。奴が口を開けた瞬間、お前は右に飛べ。」
「うん!」
「カール、お前も気を付けろよ!」
「はい!」
恐竜骸骨の口が開いた。
ガァァァ!
大きな声を共に、巨大な炎が口から放たれた。
ファイアブレスだったか!
だが俺達は事前に予測できたので、難なく回避した。
ヒュヒュ!
後方から矢が飛んできた。
リディの援護射撃だ。
矢は恐竜骸骨の足元を的確に射抜いた。
恐竜骸骨はそのせいでその場から動くことは出来ない。
「よし、左右から奴の腕を落とすぞ。」
「はい! …やぁぁ!」
俺とテオドールは恐竜骸骨の両腕に斬りかかった。
ガシュガシュ!
ウガァァァ!
恐竜骸骨の悲鳴と共に両腕が切り落とされた。
「やった!」
俺は歓声を上げた。だが、その時。
バキバキ…
恐竜骸骨の背中から軋むような音が聞こえて来た。
「え…!?」
何と背中から新たに4本の腕が生えて来たのだ。




