第53話 北方洞窟探索(3)
「あんな数、どうやって突破すんだよ…?」
ガストンが眼下の魔物達を見ながら言った。
「突破なんてできねえよ。まともに戦ってたらな。」
テオドールが腕を組んだ。
「だったらどうするというんだ?」
「あの魔物どもは一体一体は大したことないが、まともに相手してたら体力切れ、魔力切れになっちまうだろう。そこでだ…」
テオドールはリディを見た。
「リディ、お前の力を借りたい。」
「え…。お、俺?」
リディがビクッとした。
「そうだ。リディ、自覚してるかどうかは知らんが、お前は上位の妖魔の血を引いているはずだ。恐らく、お前の祖先には魔王級の魔族がいたはずだ。」
「・・・」
リディは目を逸らした。
「どういうことなの? テオドールさん。」
「オレはかつて仲間だった魔導士から、魔素解析の呪文書を貰っていてな。お前達に初めて会った時、使わせてもらったんだよ。」
魔素解析ってブレーズ先生が俺に使ったやつか!?
いつの間にそんな事を…。
「それでリディが上位妖魔であることが分かったんだ。とは言っても、強大な魔力を隠してるとか、変身できるとか、そういうのではなさそうだ。無論、魔法を使える程度の魔力は持っているだろうが…」
「でも、リディの力を借りたいってどういうこのなの?」
「ふむ。アスカ、魔王になるには、何があればいいと思う?」
へ? 魔王? いきなり何を聞いてくるんだろう。
「え・・っと、強大な魔力とか破壊力とか?」
「そうだな。でもそれらを持っていないとしたら?」
「うーん、力がないとすれば…。誰かを操るとか…?」
俺は首を傾げた。
「正解に近い答えだ。今、ノワールコンティナンにはリカロスという魔王が君臨している。だがその前にはウイユヴェールという魔王がいたそうだ。」
テオドールがリディを見た。
「・・・」
リディは俯いたままだ。
「その魔王は普通の魔導士並の魔力しかなかったのだが、『凝視』と言う能力で敵を排除したそうだ。また多くの魔族や魔物をその力で操り、強大な軍を作っていたと伝えられている。ま、その魔王はとある勇者に倒されたそうなんだが、その魔王には子孫がいるらしい。」
「…まさか、リディがそうだって言わないよね?」
「いや、俺はそうだと睨んでいる。根拠は、お前達がギルドに届けてくれた、ヘリオスの記録だ。」
そういえばヘリオスはリディと交流があったんだ。
俺達はヘリオスの記録すべてを読んではいない。
記録はかなりの量だったし、解析はギルドに任せた方が良いと思ったからだ。
「…さっき言った魔素解析の呪文書をを作ったのはヘリオスなんだよ。奴はリディと交流している中で、リディがかなり高位の魔族だと気づいたんだろう。この大陸で高位の魔族と言ったら現魔王かかつて魔王だったものの一族しかいない。」
リディは能力を隠している。それが魔王の一族に伝わる能力なのだろうか。
「リディ、お前は能力を使いたくないのかもしれないが、今それを使うべき時だと思う。どうだ、使ってくれないか?」
「・・・」
リディは恐る恐るといった表情で俺達を見て来た。
「…使っても俺の事怖がったり嫌いにならない?」
「うん、嫌いになんかならないよ。」
「…分かった。でも良いって言うまで俺の目見ないでね? 見たら仲間でも影響受けちゃうから。」
リディはそう言って一歩前に歩み出て、眼下を見下ろした。
「俺の能力は魔物達が俺の目を見ないと効果が無いんだ。魔物達の注意をこっちに向けてくれる?」
「それなら僕がやるよ。」
アルフレッドが杖を構え、火球を作り出した。
そして火球はリディの10メートルほど前で大きな音を上げて爆発した。
魔物達はその音の反応してリディの方を向いた。
…するとどうだろう。なんとリディの方を向いた魔物達から石化が始まったのだ!




