第51話 北方洞窟探索
「うわ~、いかにもって感じのところだね。」
俺は洞窟の入り口を見た。
霧の町を出発して二日、俺達は北方洞窟の入り口にたどり着いた。
ノワールコンティナンは唯でさえ薄暗いところであるが、洞窟の奥は吸い込まれそうな深い闇が広がっていた。
「この洞窟の全体像は明らかではない。前回の探索では入口より3キロ程で引き返して来たそうだ。」
テオドールが言った。
「うーん、中からは魔物の臭いや、腐ったような臭いがするよ…」
「そうだね。何かが蠢くような物音も聞こえる。」
カールとリディが俺にしがみつきながら言った。
「前に言ったと思うが、中には大蜥蜴系の魔物、不死系の魔物がいる。不死系の魔物と言うのは分かりやすく言えば骸骨戦士やゾンビのような奴らだ。ノワールコンティナンに入植した人間がこの洞窟を発見して以来、数多くの冒険者がこの洞窟の探索に挑んだが、大半は帰ってこなかった。その冒険者達の遺体が魔の力で甦ったのが、不死系の魔物というわけだ。…さて。」
テオドールが袋から小さい玉のようなものを取り出した。
「これは魔力を込めると光るものだ。松明を用いても良いのだが、燃料が無くなった時点で使えなくなってしまうからな。今回はこれを使う。魔力が尽きない限り、消えることは無い。」
テオドールはそう言ってから俺を見た。
「というわけだ。よろしく頼む。」
デスヨネー!
俺の魔力総量はかなり膨大らしいから、この玉を光らせ続けるくらい訳ないのだろう。
「うーん、分かりましたよー。」
俺は玉を受け取り、魔力を込めた。
人数分の玉に魔力を込めると、少しして玉が輝き始めた。
「各々扱いやすいところにそれを括り付けるんだ。それでは行くぞ。」
俺達は準備を整え、洞窟内部への侵入を開始した。
内部に侵入すると、すぐに魔物が現れた。
某ゲームでやたらエンカウント率が高いダンジョンとかがあるが、まさにそんな感じだ。
「ひええ、大きいね!」
俺は目を丸くした。
大蜥蜴と言っていたからインドネシアにいるコモドオオトカゲくらいのを想像していたが、そんなものでは無かった。
まるでワニだ。
「あれはかなり硬い外皮を持っているから気を付けろ。」
「でも剣速を早くすれば、すぱって斬れるんじゃない?」
「ふ…、その通りだ。」
俺は前に出た。この魔物は図体がでかい分、動きは緩慢だ。
不思議と恐怖感は無い。
俺は大蜥蜴に向かって剣を振るった。
首筋を一刀両断した。
「おいおい、あんまり飛ばすなよ? 俺の出番がなくなっちまうぜ。」
ガストンが続いた。
これは作戦通りである。
入り口付近の大蜥蜴はそんなに強くない。
問題は奥に進むにつれて現れるであろう、不死系の魔物だ。
テオドールが言うには不死系の魔物は腕を落としたり、首を落としてもすぐには死なないそうだ。
弱らせて、火の魔法で焼き尽くす必要があるらしい。
俺達の中で、魔法が使えるのはアルフレッドだけだ。
つまりアルフレッドの魔力はその時まで温存せねばならない。
このパーティは俺、アルフレッド、カール、リディ、ガストン、そしてテオドールの6名である。
俺を含めて4名が前衛、クロスボウを使うリディと魔導士のアルフレッドが後衛である。
「よし、周辺のは粗方片付いたな。」
テオドールが剣を収めた。
「ここでいったん休憩するぞ。各自武器の点検も行っておけ。」
「え、もう休むの?」
俺はテオドールを見た。
「この先はどこまで続いてるか分からんのだ。休める時に体を休めておかんと身が持たんぞ。」
「あ、そうか…」
俺は頷いた。
やはりAランクとなると、リスク管理に対する考え方が違うようだ。
俺はアルフレッドの隣に座った。
「アスカ、お疲れさま。改めて思ったんだけど、特訓のせいか、凄く強くなったよね。」
「そ、そう? ありがと。」
俺は顔を赤らめた。
アルフレッドに言ってもらえると、凄くうれしい。
「以前の俺はアルフレッドに守られてばかりだったからね。今の俺なら、アルフレッドと一緒に戦える。そう思うよ。」
俺は洞窟の奥に続く暗がりを見た。
この闇がどこまで続くのか全く想像できないが、入ってしまった以上は力を合わせて進んでいくしかない。




