第49話 実技訓練
「今日から剣を教える。」
「ほ、本当!? やったー!」
テオドールの言葉に、俺は顔を輝かせた。
素振りを始めてから1週間。ずーっとずーっと素振りだけだったのだ。
「お前の素振りの仕方を見ていて分かった。お前はケンドウをやっていたな?」
「…!」
俺はテオドールの顔を見上げた。
「貴方、剣道を知っているの…?」
「ああ。オレの父は異世界人でな。父がこの世界で刀鍛冶になったのも、召喚される前の世界でやっていたらしい。オレの剣も、父から教わったものでな。」
こんなところに異世界に繋がる人がいたなんて。
「…実は俺も異世界人なんだ。いや、この体はこの世界の人間のものだけど意識だけ異世界人というか」
「こちらに転生する前にケンドウをやっていたのか?」
「小学生…えっと、子供のときねやってたんだよ。」
「そうかなら説明は早い。」
テオドールの講義が始まった。
「・・・」
俺はテオドールの講義を聞きながらぼけーっとした。
長い。長すぎる。もう1時間近く話を聞いている。
「…おい、アスカ。聞いてるのか?!」
ゴツン!
「いたっ!」
テオドールが鞘で俺の頭を小突いた。
「理屈を分かっておかないと、上達できんのだぞ?」
「むーっ!」
俺はテオドールをじーっとみた。
「俺、前の世界では不良だったから、長い話好きじゃないんだよね。」
「…仕方ないな。」
テオドールが自身の剣を手に取った。
「では実技を始める。お前は自分の剣を使って俺に攻撃して来い。」
「思いっきり攻撃して良いの?」
「構わん。かかってこい。」
「わーい!」
俺は黒曜石の剣の柄に手を掛けた。
「じゃあ、行くよ! えーい!」
俺は一気に剣を抜いた。
ビュッ!
1週間ずっと剣を振り続けていたせいか、かなり速く剣を抜くことが出来た。
「いっ!」
ガシャーン!
テオドールが変な声を上げ、自分の剣でガードした。
「け、結構速いな。お前の居合い…」
「でしょう? あまり舐めない方がいいよ?」
俺はにこっと笑った。
「そうだな。」
テオドールが俺の剣を払いのけ、距離を取った。
「オレも真面目にやろう。さあ、改めてかかってこい。」
「うん。」
俺は頷いた。
30分くらい経っただろうか。
俺の剣は最初の居合い抜き以外は全て躱されるか、軽く受け流されていた。
「はぁ…はぁ…」
俺は肩で息をし始めた。
こんなに長く、連続して戦った経験は全くない。
「アスカ。お前は中々筋は良さそうだ。」
「と、とても褒め言葉には…聞こえないけどね…」
俺は息を切らしながら答えた。
さっきの初撃はテオドールをビビらせることは出来たが、それ以降は全く話になっていない。
「ご、ごめん。ちょっと、休ませて。」
俺はその場にぺたりと座り込んだ。
「ふむ、今日は限界か?」
「ちょ、ちょっと疲れたかな…」
俺は苦笑いした。
「分かった。今日はこれで終わりだ。だが明日は5分多く戦えるようにしろ。明後日は更に5分だ。少しずつ伸ばしていくようにするから、そのつもりでいろ。」
「は、はい…」
「それではオレはカールやリディの鍛錬を見てくることにしよう。」
テオドールはそう言うと、カール達が鍛錬している方に向かって行った。
実際に実技訓練を初めて分かったが、テオドールの指導法は理に適っていると思う。
まず素振りをすることで剣の重さに慣れ、早く振れるようになる。
早く振れる様になったら実技訓練。
そしてその継続時間を伸ばしていけば、持久力も付いてくる。
仕事に出るまで3週間。少しでも強くなりたいものだ。




