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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第5章 霧の町編
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第41話 霧の町

俺達はついにノワールコンティナン唯一の町「霧の町」にたどり着いた。

いや、唯一の町というのは語弊がある。

人間が多く住んでいる大きめの町、という意味である。

人が住む小さい集落は他にいくつか存在しているし、魔族が統治している町はあるようだ。

「へ~、ここが霧の町かあ。」

俺はきょろきょろと見まわした。

ノワールコンティナンにある町ということもあるのだろうが、空全体に霧がかかっていて昼間なのに薄暗い。

まさに「霧の町」だ。

「・・・」

リディはフードをすっぽりかぶって頭を隠していた。

尻尾や羽も折りたたんでローブから出ない様にし、俺にぴったりとくっついていた。

「リディ…?」

「俺、こんな大きい町、来たことない。」

「ああ…、大丈夫だよ。」

俺はリディの頭を軽く撫でた。

「よし、とりあえず宿を探そう。まずは疲れを取らなくてはな。」

ガストンが言った。

俺達は町の中心から少し外れたところにある宿屋に泊まることにした。

マルゴワールで止まった宿よりは少し手狭だが、部屋も二部屋あり、この人数でも問題なさそうだ。

俺は自分の荷物をソファの近くにおいた。

「フー、疲れたー。」

それもそのはずである。昨日冒険者ヘリオスがいた小屋を出発して、一度夜に数時間の休憩を挟んだが、大体歩き続けていたのだ。

カールもどすんと荷物を下ろした。

カールは昨日からリディの荷物も背負っていたし、戦いで前面に立っていたため疲れも溜まっているだろう。

「カール、荷物持ってくれて、ありがとね。」

リディは水筒を差し出した。

「う、うん。大丈夫。お水ありがとう。」

カールは照れくさそうに笑いながら水筒を受け取った。

アルフレッドとガストンは何やら話をしている。

きっと今後の事を話しているのだろう。

はっきり言って俺は冒険者としての経験は殆どないから、今後どうしたらいいとかそういう分野では役に立たない。

アルフレッドも経験は浅いが、俺より柔軟に物事を考えられるし、俺よりも世間を知っている。

「アスカ、俺はこのままこの町の冒険者ギルドに行ってくる。ヘリオスの記録を提出する用事も兼ねてな。」

ガストンが俺の方を見ながら言った。

「私達は付いていかなくていいの?」

「俺一人で良い。冒険者の記録を他人が出す場合、色々調べられるんだ。その面で言えばDランクのお前が一緒にいるよりはBランクの俺だけの方がいいだろう。」

なるほど。あの記録はあくまでも他人のものだ。

それを持っているということは悪い方法で入手したことも疑われるんだろうな。

「とりあえず行ってくる。お前達はくつろいでいてくれ。」

ガストンは宿を出て行った。

「ねえ、アルフレッド。お願いがあるんだけど!」

俺はアルフレッドの袖を引っ張った。

「ん? 何だい? アスカ。」

「俺に、お料理教えてくれない? すぐ近くに食材屋さんみたいなのあったし。」

「ああ、良いけど、どうして?」

「だってさー。アルフレッドはお料理上手だし、リディも出来るでしょ? カールは食べる専門だから良いけど男の子じゃん。俺、女なのに全然できないのが悔しくて。良いでしょー?」

もとい…、意識は男だったはずだが…、最近よく分からないのが正直なところだけど。

「うーん、分かったよ。とりあえずお店に行ってみようか?」

「うん!」

俺とアルフレッドは近くの食料品店に行くことにした。




ガランガラン!

俺はお店のドアを開けた。

「いらっしゃい。」

店の主人が言った。

俺は店の主人に会釈をしてから、商品棚に並んでいる食材を見た。

「うげ、これは何なんだ?」

…あまり見たことのない食材が並んでいた。

「えっと…、これはカエル? ヘビ? うぎゃー、ネズミもあるよ。」

「かなり個性的な品ぞろいだね…」

アルフレッドも目を丸くした。

「や、野菜を見よ!」

俺はアルフレッドの腕を引っ張って野菜のコーナーに向かった。

「う、うーん。」

野菜もかなり個性的だった。

いや、それぞれキャベツのような葉物野菜だったり、キュウリのようなものもあるのだが。

形が変だったり、色が見慣れない感じなのだ。

「あの…、ご主人? 普通のお野菜とかありませんか?」

俺は店の主人を見た。

「おや、あんた他の大陸から来た人たちかい?」

「え、あ、はい。そうなんです。」

「それじゃ見慣れないのも仕方ないだろう。ノワールコンティナンはね、この大陸を覆う霧のせいか、作物が普通に育たないんだよ。毒があるわけじゃないんだけどね。巨大化したり逆だったり、変な形だったり…。私らはもう慣れてるけどね。」

「そ、そうですか…」

俺は店の主人の言葉を聞いてから再び商品棚を見た。

…普通の形にならないのなら仕方あるまい。

「ねえ、アルフレッド。大丈夫だよね?」

「大丈夫じゃないかな…」

アルフレッドもあきらめ顔だ。

「ではご主人、これとこれと、あとこのお野菜をください。」

俺達は店の主人に食材を注文した。

…まぁ見た目が変でも味が良ければ良いだろう。

俺達は食材を持って、宿に戻った。




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