第37話 本当は…
「風呂沸いたよ。」
アルフレッドが家の中に入ってきた。
アルフレッドが火の魔法でお風呂を沸かしてくれたのだ。
「リディ、お風呂入ろー。」
カールがリディの腕を引っ張った。
「え、お、俺は良いよ。」
リディは振り払った。
「えー何でぇ?」
「俺はみ、みんなの後で一人で入りたい。」
「さっき言ってたでしょ。ここは客用の家だから、お風呂も大きいって。」
カールがむくれた。
「そりゃアスカお姉ちゃんみたいに女の子なら、一人で入っても良いと思うけどさ…」
「とにかくやなの!」
リディはさささっと俺の後ろに隠れた。
「カール、嫌がってるものを強制しちゃダメでしょ。」
俺はカールを諭した。
「ぅ~、分かった。」
カールはしぶしぶ頷いた。
「じゃ、俺ら3人は先入ってくるわ。お前達はのんびり待っていてくれ。」
ガストン達は風呂場に入って行った。
「・・・」
リディが俺の服をぎゅっと掴んでいた。
俺より5センチくらい背が小さいだけだが、中身は結構子供なのかな。
「そんなにしがみ付かなくても大丈夫だよ。」
「う、うん。」
リディが手を放して近くのソファに座った。
「でもそんなにみんなと入るのが嫌なの…?」
俺はリディの隣に座って、頭を軽く撫でた。
「・・・」
リディは口を尖らせた。
「言いたくないのなら言わなくても良いけど…」
「…アスカとなら、いい。」
「え? やーねー、そんなに女の子の裸が見たいの?」
俺は笑いながらリディの頬をグリグリした。
「そ、そうじゃない…」
リディは笑わない。
「ん…?」
俺はからかって言ったつもりだったのだが、リディは笑わなかった。
これはもしや…。
「リディ、まさかとは思うけどさ。」
俺はリディの横顔を見た。
「あなた、女の子なの…?」
「う、うん…」
その問いにリディは顔を赤らめながら答えた。
「えええ、本当?」
「本当だ。」
「本当に本当?」
「本当だよ! 嘘だと思うなら見てみるか?」
リディが服のボタンに手を掛けた。
「い、いや、良いって! 信じるよ。」
俺は制止した。
制止はしたが、ボタンが外れたところから少しふくらみがあるのが見えた。
いや、見えてもどうも思わないわけだが(俺は今女であるし…)。
「でも、俺、なんて言ってるから、てっきり男の子かと…。みんなそう思ってるよ。」
「アスカ、お前も、俺って言ってる。」
「それはそうだけどさ…」
確かに男の子にしては細身な体ではある。
魔族の年齢とか成長の仕方は良く分からないが、人間に直したらまだまだ子供なんだろう。
出るとこはあまり出ていない。俺よりも。
72な人並なカップであろう。
「俺、別に隠してたわけじゃない。でも、中々言う機会無かった。」
リディは少し俯いた。
「分かったよ。でもカールは自分が嫌われてるから嫌がったと思ってるかもしれない。そこだけは謝ってあげないと。」
「う、うん。分かってる。カールには謝る。」
最初はいたずら好きな子供かと思ったが、意外に素直だったんだな。
「そうだね。言いづらかったら、俺がみんなに説明してあげるから。」
「いい、自分で言う。アスカ、ごめんね。」
「いいよ。俺には謝らないで。」
俺は笑いながら答えた。
「えええええ!」
お風呂から出て来てほかほか湯気を上げているカールが大きな声を出した。
「カール、早く頭拭きな。風邪引くよ。」
アルフレッドがタオルを渡した。獣人であるカールは毛が多い部分は中々水分を拭きとれないのだ。
「うん。」
カールはタオルで自分の頭をわしゃわしゃ拭き始めた。
「カール、さっきはごめん。俺、お前の事嫌いだから言ったんじゃない。その、恥ずかしくて…」
リディはぺこっと頭を下げた。
「ううん。ボク、怒ってないよ。キミはちゃんと謝ってくれたし、友達だもの。」
カールがにこっとした。
「良かった…」
リディはほっとしたような顔になった。
「じゃあリディ、私とお風呂入ろうか?」
俺はタオルを二人分持ちながら言った。
「うん、俺、アスカと入る。」
リディは嬉しそうな顔で答えた。
「いこいこ。男衆、女の子二人入ってるからって、覗きに来ちゃだめだよ?」
「はっはっは、誰がガキの体なんて見に行くかよ。」
ガストンがふんぞり返りながら酒を飲みつつ言った。




