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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第4章 ノワールコンティナン・黒の大陸編
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第36話 お目付け役リディはお友達

長老との話を終え、俺達は客用の家に向かった。

ガチャ!

「戻りました。」

「おお、話は終わったのか…ってなんでお前はここにいるんだ?」

ガストンは俺の後ろから入ってきた人物を見て言った。

「俺、お前達の世話役だ。」

その人物はあの少年だった。

「監視役ではないのか?」

「うん、監視役だ。」

少年がニッと笑った。

「分かった分かった、よろしく頼むよ。」

ガストンはため息をついた。

「おう!」

少年はガストンにそう言うと、俺達を見渡した。

「俺、自己紹介してなかった。俺、リディ。よろしくな。」

リディはペコリと頭を下げた。

尻尾がぴょこんと見えて、何か可愛らしい。

「おい、お前アルフレッドだっけ。俺、腹減った。一緒に飯作ろう。」

リディがアルフレッドの袖を引っ張った。

「え、何で僕?」

「お前がこの中で一番料理できそうだから。」

「な、なぬ!」

この中で唯一の女である俺に声を掛けないとは…。

女子力ゼロかよ、俺。

「あそこに材料はある。好きに使って良いものだ。」

「わ、分かったよ。」

アルフレッドはしぶしぶ料理を始めた。

リディが横からそれを手伝い始めた。

悔しいがリディの手際は素晴らしい。

30分ほどで料理が出来上がった。

「ぐぬぬ…」

凄いおいしそうだ…。

「うわぁ…」

カールが目を輝かせながら感嘆の声を上げた。

そういえば、あの時以来あまり喋っているのを見なかったな。

食べたそうな顔をしているが、カールはおずおずとガストンを見た。

「ん? こんなことまで俺の顔を伺う必要はねえよ。」

「う、うん。いただきます!」

カールが料理を食べ始めた。

あの時ガストンとカールは何を話していたのだろう? 

後で確かめておく必要があるな。

「えっと、いただきます。」

俺も料理を食べ始めた。

う、うまし!

これはとても美味しい。

山菜が多く入ったスープ、肉はボアだろうか?

ヤムイモのような芋を摩り下ろして作った芋もちもとても美味だ。

「どうだ? 俺が手伝った料理、美味いだろ?」

リディが肩に腕を回して、うしろから顔を出した。

「う、うん。悔しいけど美味しいよ。」

「悔しい? 何でお前悔しがる?」

リディがきょとんとした。

「私、こんなに上手に料理できないから…。食べる方専門で。」

「そうか! なるほど!」

リディはアルフレッドを見た。

「お前、アスカを甘やかし過ぎだ。」

「そ、そんなことは…」

アルフレッドが言葉に詰まった。

「お前もそんなことじゃいいお嫁さんになれないぞ? いいのか?」

リディが俺の頬を両手でグリグリしてきた。

「んぐぐ…」

俺は悔しさで右こぶしを握り締めた。




食事後、俺はせめてもの手伝いとして、食器を片付けていた。

アルフレッドは俺が洗った食器を拭いていた。

俺は居間の方を見た。

絨毯の上で、リディがカールをモフモフしていた。

いや、毛繕いをしているのだろうか。カールは気持ちよさそうに目を閉じていた。

「おい、あんた。リディだっけか。随分そいつらに馴染むの早いじゃないか。」

ガストンが酒を飲みながら言った。飲んでいるのはこの村の地酒らしい。

するとリディの手が止まった。

「俺、お前達をいるの、楽しいんだ。」

「へぇ、なぜだ?」

「俺、この村で唯一の子供。他に誰もいないんだ。」

その言葉に、俺は皿を洗う手を止めてリディを見た。

「唯一って…、どういうことだ?」

「俺達の一族、戦いから逃げて来た。でもその途中で、俺の父さんや母さん。他の大人たち、殺された。父さんたちは俺達を逃がす為に、戦ったんだ。」

リディは少し俯いた。

「俺のほかに子供はいた。でも生き残ったのは俺だけ。大人は族長様や年を取った者だけだ。この村は、いずれ滅びるしかないんだ。」

「そうか…、辛いことを聞いて悪かったな。」

ガストンが軽く頭を下げた。

「気にしなくていい。俺の方こそ、雰囲気悪くしてごめん。あは、あはは…」

リディが笑った。でもこの笑いは作り笑いだろう。

俺はリディの方を見た。

「リディ、じゃあ今日から俺やアルフレッド、カールにガストンさんもみんなあなたの友達だ。それでいいかい?」

リディはハッとして顔を上げた。

「おまえ、俺の友達になってくれるのか? 本当か?」

「うん、当り前じゃないか。ねえ、みんな。」

「ああ、もちろんだよ。」

「うん、ボクも友達だよ。」

アルフレッドとカールが答えた。

「ガストンさんは?」

俺はガストンを見た。

「…いや、俺は友達にはならねえ。」

ガストンはリディの傍にドカッと腰を下ろした。

「俺はもうだいぶおっさんなんでな、お前は子供の様に見えるよ。俺はお前の父ちゃん役になってやる。」

ガストンがリディの頭を撫でた。

「う、うん! ありがとう!」

リディの顔がぱぁっと明るくなった。



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