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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第4章 ノワールコンティナン・黒の大陸編
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第35話 俺と眠りのアルエット

ガストン達が族長の家を出て行った後、俺達はテーブルのある部屋に通された。

「お茶だ、飲め。人間の口に合うか分からないけどな。」

少年が俺達の前にお茶を置いた。

「ありがとう、頂きます。」

俺はそのお茶を一口口にした。

「うげ! 辛!」

俺は湯呑をテーブルに置いて、ひーひーと息をした。

「やっぱりな。俺達、これが普通だが、人間には辛いようだな。」

少年がにやっとして、コップに水を入れて置いてくれた。

俺は水をがぶがぶと飲んだ。

「ひー、辛かった。」

族長は俺を見て少し笑うと、少年に話し掛けた。

「族長様はお前に腹を割って話そうと言っている。」

少年が通訳してくれた。

「は、はい。話って何でしょう?」

「族長はお前の正体が知りたいと言っている。」

「え、正体…? 自己紹介はしたんだけど…」

俺は族長の顔を見た。族長は少年を介して言った。

「お前の名前は聞いた。でも、お前の中には二人いる。どういう事なんだ?」

…族長は俺の事に気付いているのか?

「族長様、あなたは何を気付いているんですか?」

少年がそれを伝えた。そして族長の言葉を通訳した。

「お前の中に二人の人格が見える。一人はほとんど眠っていて、もう一人が起きている。それがお前だ。もっとも意識の大部分は共有していて、眠っている人格も、お前を介して物事を理解しているようだ。」

アルフレッドもそれを聞いて、目を見開いた。

「…分かりました。族長様にはすべてお話ししましょう。」

俺は俺自身の事を説明すべく、族長の顔をじっと見てから少年の方を向いた。




俺は全てを説明した。

目覚める前の俺、お姫様(アルエット)として目覚めてからの俺、国の事、兄レオポルドの事、アルフレッドやケヴィンをはじめとする仲間の事。

通訳してくれる少年は人間の言葉はたどたどしいので、ゆっくりと言葉を選んで説明を行った。

「それで質問があります。もし分かれば…なんですけど、本来のアルエットはやっぱり私の中にいるのでしょうか?」

俺は少年を介して質問したいことを聞いた。

「いる。お前の中で眠っている。」

「アルエットは目覚める可能性はあるのですか?」

「分からない。ただすぐに目覚める感じはしない。」

「アルエットが目覚めたら、私はどうなってしまうのでしょう? 代わりに眠りにつくのですか? それとも消えてしまうのでしょうか…?」

「それはアルエット次第だ。もしアルエットがお前を拒絶したら、消えてしまうかもしれない。」

俺はアルフレッドをチラッと見た。

アルフレッドは俯いたまま話を聞いていた。

もしアルエットが目覚めたら、アルフレッドはどうするだろう?

アルフレッドの本来の主人はアルエットだ。

アルフレッドが守り続けて来たのは(アスカ)じゃない、お姫様(アルエット)だ。

アルエットが目覚めることは本来の状態に戻るだけだ。

それはアルフレッドにとっては喜ばしくあるべき事なのだ。

だが…。

怖い…。

兄レオポルドの件があったとき、俺はアルフレッドを逃がす為に、彼を拒絶した。

その後の喪失感、これは大変なものだった。意識を捨て去りたいと思ったほどだ。

でも彼は俺を助けてくれた。嬉しかった。

マルゴワール領で彼と逢瀬を遂げたのは、体はアルエットであるが、俺だ。

その時の彼への感情は、アルエットの感情からくるものだけではないと確信したのだ。

俺は俯いて拳をぎゅっと握りしめた。

アルフレッドはそんな俺を見てから口と開いた。

「族長様、アルエット様を目覚めさせる方法はあるのですか?」

俺はビクッとした。

でも当然の事だ。先に言った通り、アルフレッドが守ってきたのはアルエットなのだ。

目覚めさせる方法があるのなら、知りたいのは当然だろう。

「今は分からない。だがレオポルドというものがこいつを召喚するときに使った魔法について調べればあるいは…」

アルフレッドは言葉を遮った。

「分かりました。僕はこれ以上聞くつもりはありません。調べていただかなくて結構です。」

「え…?」

俺はアルフレッドの顔を見た。

「アスカ、僕は君がアルエット様の中にいるから君を大切にしてきたわけじゃない。確かにアルエット様も大切に思っている。アルエット様は君の中で僕の言葉を聞いているみたいだから、こんなことを言うのも心苦しいけど…」

アルフレッドが俺を見た。

「何て言っていいか、うまい言葉は見つからないけど、僕はアスカと一緒にいたいと思っている。信じてくれるかな…?」

「うん…」

俺は小さく頷いた。そして目を伏せた。

こんな状態でアルフレッドの顔を見続けてたら、涙が止まらないだろう。

何てイケメンなんだこいつは。

「ふーん、ラブラブなんだね。あんたたち…」

少年が俺達を見てぼそっと呟いた。



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