第34話 魔族の村
翌朝、俺達は出発した。
「・・・」
俺はカールを見た。
カールは既に拘束を解かれていた。しかしカールは俺のちょっと後ろを無言で歩いていた。
早朝にガストンと何かを話していたが、それが関係しているのだろうか。
歩き続けて3,4時間ほど経っただろうか、森が開けた丘の上に出た。
「見ろ、人里が見えるぞ。」
ガストンが指さした。
眼下にはそれほど大きくないが集落のようなものが見えた。
「人住んでるかな?」
「さぁ、行ってみないと分からんな。」
崖を下りる道は続いている。とにかく行ってみない事には始まらない。
俺達は坂道を下りて行った。
坂を下りて、俺達は集落の入り口に来た。
元々薄暗いせいもあるかもしれないが、あまり活気があるようには見えない。
ガストンが先頭になって集落に入って行った。俺達は後に続いた。
「おい人間、お前達どこから来た?」
誰かが話しかけて来た。
声が聞こえて来た方を見ると、木の枝に紫色の髪の毛の少年がいた。
いや、おそらく少年は人間ではない。
背中には羽が生えているし、尻尾も生えている。
肌の色は青白く、歯にはドラキュラのような犬歯もある。
「ねぇ、アルフレッド。あの子、魔族ってやつかな。」
俺はアルフレッドの耳元で囁いた。
「たぶんそうだね。」
アルフレッドは小声で答えた。
「ピンポーン! それ正解! 俺、魔族。」
少年が俺を指さした。
「ええ、聞こえてたの?」
俺は驚いた。
「うん、俺、耳凄く良い。ひそひそしても意味ないよ。」
少年がニッと笑った。
「で、お前達どこから来たんだ?」
「ああ、すまない。俺達は森の奥の転移魔法陣から出て来たんだ。それで道に迷ってしまってな。偶然ここに来たんだ。」
ガストンが答えた。
「お前、それ本当か? ウソだったら死ぬぞ?」
少年はじろっとガストンを見た。
「ああ、嘘なんかついてねえよ。ここがどこなのかも分からねえんだ。」
ガストンが肩を竦めた。
「そうか。お前達、とりあえず来い。ここに来たからには、族長様に挨拶しろ。」
「ああ、すまない。そうさせてもらうよ。」
俺達は少年についていくことにした。
少年は俺達をこの村の族長の元へ誘った。
族長の家は豪華というわけでは無いが、他の家よりは大きかった。
「ここ、族長様の家だ。入れ。」
俺達は少年に続いて、中に入った。
案内された部屋の中にはは白髪の老人がいた。
この人物もやはり魔族の様だ。
「族長、人間語話せない。俺、通訳する。」
少年が族長と何か話した。
「お前達、まず名前、聞かせろ。」
少年が向き直り俺達に言った。
「俺はガストン、冒険者だ。」
ガストンはそういうと俺に目配せした。
「あ、えっと、私、アスカ・エール・フランクールです。なり立てですが、私も冒険者やってます。」
「僕は…」
俺に続いて、アルフレッドとカールも自分の名前を名乗った。
「族長様は、お前達は、何でここに来たのか聞いている。嘘は許さない。」
「俺達は…」
ガストンが答えようとすると、少年が遮った。
「お前じゃない。そこの赤い髪の女から聞きたい。」
「…だってよ、答えてやれ。」
ガストンが俺の肩を叩いた。
「え、私?どうして?」
俺は少年を見た。
「お前、不思議なにおいがする。」
少年が俺の目の前で鼻をクンクンさせた。
「わ、私、臭う?」
「違う、そういう意味じゃない。早く答えろ。族長様が待ってる。」
「は、はい…」
俺は少年に事の顛末を話した。
勿論、マルゴワール領での出来事から、である。
少年は族長にそれを話した。
「お前達、族長様はお前達を客人として認めると言っている。良かったな。」
少年が俺達を見た。
「この家を出て東側に客人用の家がある。今日はそこにいろ。」
「分かりました。ありがとうございます。」
俺達は族長の家を出ようとした。
「あ、お前はちょっと待て。」
少年が俺を呼び止めた。
「え、何ですか?」
俺は振り向いた。
「族長様がお前に興味があると言っている。お前は少しここに残れ。」
「え、でも…」
俺はチラッとアルフレッドを見た。
「その、アルフレッドも一緒じゃだめ?」
「待て、族長様に聞いてみる。」
少年が族長に聞いた。
「分かった。そいつも一緒で良い。少しここに残れ。話がしたいそうだ。」
少年は俺に言った。
「…じゃ、私はここに残るから、二人は先に行っててくれますか?」
俺はガストンを見た。
「ああ、分かった。お前達の荷物も運んでおくぞ。」
「お願いします。」
俺とアルフレッドは荷物をガストンに渡した。
俺はガストンとカールが家を出ていくのを見送ると、少年と族長の方に向き直った。
この魔族の族長が俺に話があるって? 一体何の話なんだろう。




