第28話 やっぱり俺には…
護衛の仕事が終わり、俺は冒険者ギルドに戻ってきた。
受付で仕事成功の報告と報酬の受け取りを行った。
今日はいつものお姉さんが休みだった。残念。
「えーっと、アスカ・エール・フランクールさんは今回の仕事の結果、冒険者ランクがDに上がりました。おめでとうございます。」
受付の男性が俺に言った。
冒険者カードを見るとランクが書いてるところが光り、Dランクに変化した。
「ありがとうございます。」
カードをしまい辺りを見ると、一緒に仕事した冒険者達が各々手続きなどを行い、帰るところの様だ。
「あんた、アスカって言ったな。今回の仕事ごくろうさん。良かったらまた仕事一緒にやろうぜ。」
剣士風の男が話しかけて来た。
「嫌ですよ、私はむさい男の人は嫌いなんで。」
俺はそっぽを向いた。
「はっはっは、言うじゃねえか。」
男が豪快に笑った。
「…ま、名前だけでも名乗らせてくれ。俺はガストン、Bランクだ。今回は本当に小遣い稼ぎで下位ランクの仕事をしたが、中々面白いものを見せてもらった。アスカ、あんたは戦い方を覚えれば、まだ強くなれるよ。」
「あ、ありがとう。」
俺は礼を言った。素直なのが一番だ。
「じゃあな。またどこかで会ったらよろしくな。」
ガストンは荷物を背負って建物から出て行った。
「さて…」
俺は改めて辺りを見渡した。
「いた!」
護衛一行の中にいた吟遊詩人風の男がギルドの建物から出ていくところだった。
「そこのあなた! 待ちなさい!」
俺は男を追いかけた。風の加速力を使えば追いつくのは簡単だ。
俺は服の袖を掴んだ。
「…ちょっと、いつまでそうしているつもり? ケヴィン。」
俺はじろっと男を見た。
「何で分かったんだ? 俺の変装魔法は完璧なハズなんだがな。」
男が参ったね という表情を浮かべてから顔に手を当てた。
手を退けると、男の顔はケヴィンに戻った。
「何でって…? 何でだろ?」
俺は頬に手を当てて考えた。
「凄く胡散臭そうな所が、ケヴィンぽかったから?」
「ははは、胡散臭いか。そうかもしれないな。」
ケヴィンが笑いながら俺を見た。
「お前が一人で仕事受けたって聞いて、心配だったから一応な。でもまさか、お前があんな戦い方が出来るとは思ってなかったよ。」
ケヴィンはフードの上から、俺の頭をくしゃくしゃっと撫でた。
「ちょっと、子供扱いしないでよ。」
「そう言うな。俺からしたら、まだお前はガキみたいなもんだ。」
「もー。」
俺はケヴィンの腕を振り払った。
「お前が出かけた後のアルフレッドはずっとそわそわしてたぞ! あいつにとってもお前の存在は大きいんだから、あまり一人で無茶しねえこった。今回の戦い方は良かった。けどな、たまたま上手くいったが、次回はそうとも限らない。あのガストンって奴が3人の盗賊を倒してくれたってのも上手くいった要因かもな。」
ケヴィンはそう言うとくるりと後ろを向いた。
「あれ、ケヴィン。どこいくの?」
「持ち主に装備を返しに行くんだよ。本物の吟遊詩人殿はおねんねしてるんでな。」
なるほど、無理やり入れ替わって仕事に参加してたのか。
「その、心配してくれてありがとう。」
俺は小さい声で言った。
「良いんだよ。お前は早く宿屋に帰りな。アルフレッドが待ってるぜ。」
ケヴィンは手をひらひらを振った。
「ただいまー!」
俺は大きな声で言った。
「お、おかえり。」
アルフレッドが答えた。
ご主人様の帰宅を待っていた犬が飛びつきたいのを我慢しているような、ぎこちない答え方だ。
「ねえ、アルフレッド。俺ね、Dランクに上がったんだよ。」
俺は冒険者カードを見せた。
「へぇ、凄いじゃないか。アスカ。」
ケヴィンが変装して見守ってくれてたというのは、言わなくても良いだろう。
「あのね、アルフレッド。今回は心配させちゃったかな?」
俺はアルフレッドの隣に座った。
「い、いや。そんなことは…」
アルフレッドは視線を逸らした。
「俺、自分でどんどん強くなっていきたいって思ったから、一人で仕事探してみたんだけどさ。」
俺は少し下を見た。
「今回はたまたま戦い方がうまくはまっただけ。まだまだ俺は素人だよ。」
俺はアルフレッドの頬に手を触れた。
「だから、俺にはやっぱりアルフレッドが必要なんだ。色々な戦い方を覚えたいし、あなたにはそのサポートをしてほしい。良いよね?」
「もちろんだよ。」
「…そして、俺もアルフレッドをサポートしたい。良いよね?」
「当り前じゃないか。」
「…ありがとう、アルフレッド。」
俺は自分の顔を、アルフレッドに近づけた。
◇この話の後に何が行われたかはご想像にお任せ致します。




