第27話 森の中での戦闘
盗賊と思われる集団はかなりの速さで接近してきていた。
俺は左右の“仲間”を見た。
剣士風の男は場慣れしているのだろう。剣を構えながら敵の動きを見ていた。
魔法使い風の男は…杖を握りしめ、少し震えていた。こいつはあまり使えないな。
でも指示を出してやれば、魔法を決めてくれるかもしれない。
冒険者風の男は表情が暗い。こいつはもっとだめだ。
そしてもう一人、吟遊詩人風の男は目を瞑ったまま動かない。こいつは良く分からない。
俺の方だが、なぜだか凄く落ち着けている。一人で魔物を倒す経験をしたからかもしれない。
この戦いにおいて少なくとも2名は戦いを主導することが出来そうにない。
剣士風の男と俺で引っ張っていくしかないだろう。
「ねえ、あなた。得意な魔法は?」
俺は魔法使い風の男を見た。
「お、俺か? こ、氷系魔法だ。」
「じゃあ最大攻撃魔法をいつでも撃てるように詠唱しておいて。」
次に俺は剣士風の男に耳打ちした。
「あの魔法使いの人が詠唱終わるまで時間を稼ぎたい。あっちの冒険者さんはアテになりそうにないから、あなたと私でやるしかないみたい。右5人は私が引き付ける、左3人は任せるからね。」
「ふむ、俺は3人で良いのか?」
「それで十分だよ。」
「分かった。」
「よし、行くよ。」
俺はそう言うと、指輪に魔力を込めて飛び出した。
それを見ると、盗賊の一人が煙玉を爆発させた。
俺は風の宝玉から強風を噴出させた。煙がすぐに散り散りになった。
その後すぐ、ネックレスの力で黒い短刀を具現化させた。
盗賊達は短剣を取り出した。
俺は風の加速で距離を取りながら、黒い短刀を地面に投げつける。
バァン!バァァン!
盗賊達の足元の地面が爆発した。盗賊達の足が止まった。
俺は魔法使いをチラッと見た。詠唱はもう少し掛かりそうだ。
俺は続けざまに黒い短刀を投げ続ける。
この“黒い短刀”だが一度に出すことが出来るのは15本まで。使い切ると1分程出すことが出来ない。
「んー、まだ終わらないのかなぁ。」
もう残り2本だ。俺は2本の短刀を掴むと、投げるのをやめた。
「参ったな、もう2本だ。魔法使いの人に接近されても困るしなぁ。」
俺は一か八か敵に再度接近してみることにした。
俺は力は弱いが、風の宝玉の力で速く動くことは出来る。
当たらなければどうという事はない、と赤い人も言っていたものだ。
目覚める前ケンカばかりしていた俺は、ど付き合いには目だけなら慣れているはずだ。
ビュゥワァァ!
俺は風を纏って一気に駆け出した。先頭の盗賊が短剣で攻撃してきたが、俺は風の力で向きを変えてかわした。
すぐさま右手に持っていた短刀で盗賊の手首の辺りを攻撃した。
その盗賊は手首を押さえ、短剣を落とした。
残り4名は私がいきなり向かってきたのに一瞬驚いて足を止めていたが、すぐに俺に斬りかかろうとした。
「出来たぞ!」
魔法使い風の男が叫んだ。
「じゃあ、ここに向かって放て! 遠慮はいらない!」
俺の合図で、魔法使い風の男が氷系魔法を放った。
氷の矢が何本も向かってきた。
「へぇ、アルフレッドの火系魔法よりは弱そうだけど、結構威力あるじゃん。」
俺は向かってくる氷の矢を見てから、風の力で一気に加速して離脱した。
氷の矢は5人の盗賊達に命中した。
「ぐわぁぁぁ!」
盗賊達は叫び声を上げながら倒れた。衝撃と寒さで動けない状態になっているが、命は無事なはずだ。
盗賊5名が動けなくなったのを見届けると、俺は剣士風の男の方を見た。
男は予想以上に強かった。3名を足止めするばかりか、峰打ちで倒してしまっていた。
なんだ、それならもっと数任せちゃえばよかった。
俺達は盗賊達8名を縛り上げた。
「あんたら、俺達を襲うなんて運が無かったな。」
剣士風の男が盗賊達に言った。
「この人たち、どうする? マルゴワール伯爵様の兵士に引き渡したりするんですか?」
俺はダブリール商会の商人を見た。
「我々としてはあまり関わりたくはありません。色々と面倒ですからね。」
そりゃそうだ。引き渡したりしたら俺達も事情を聞かれるだろう。
そんな暇があったら、さっさと商売したいんだろうな。
「それじゃあ、あんた、俺達が安全な場所まで行ったらこいつらの縄を切れる様に魔法で何とかできるか?」
剣士風の男が魔法使いに言った。
「ああ、出来る。一定時間で氷の刃で切れる様にしよう。」
さっきの氷魔法で5人も倒したもんだから、こいつの顔は心なしかドヤ顔に見えた。
「頼むよ。」
そう言うと剣士風の男がふうっと息を吐いた。
「それにしても、あんた、結構な強さじゃないか。Eランクなんて嘘だろう。」
「嘘じゃないですよ。冒険者ギルドの仕事、2回目だもん。貴方だってあの強さでこんな低ランクの仕事を何でやってるんですか?」
「ははは、俺のは単なる小遣い稼ぎさ。さて、商人たちがそろそろ出かけたそうな顔してるな。」
剣士風の男が立ち上がった。
俺も自分の荷物を拾うと、出発の準備をした。




