第25話 意外な才能
子守3日目、俺は子供達と遊んでいた。
「お姉ちゃん、あれ当たる?」
カールが指さした先にはまな板に置かれた大根(のような野菜)があった。
「前にさ、町に来てた曲芸をしてた人がさ、野菜にトランプ投げて刺さってたのを見て、かっこいいなって思って。」
カールが持っていたタロットカードを投げた。
途中でへなへなと勢いが無くなり、届くことなく地面に落ちた。
「お姉ちゃん、やってみてよ。」
カールが俺にカードを渡した。
「ああ、いいよ。それ!」
俺は渡されたカードを投げた。
カードが大根に向かって一直線に飛んだ。
シュパン!
当たった所で大根が真っ二つになった。
「お、お姉ちゃん凄い!」
「そ、そうかな?」
「もう1回やって!!」
「ようし、えいっ!」
2枚目もさっき切った大根の下に命中し、そこから大根が切れた。
「わー、すごいー!!」
カールや他の姉弟達が嬉しそうに手を叩いた。
ガラ!
お店の方からアルフレッドが入ってきた。
今日の営業が終わったようだ。
「ん、盛り上がってるけど何があったんだい?」
「アルフレッドお兄ちゃん、アスカお姉ちゃんがね。カードで野菜切れたんだよ!」
クロエが笑顔で言った。
「へえ、アスカ、やってみてよ。」
「う、うん…」
俺はもう1枚のカードを投げた。
スパン!
カードが命中し、さらに大根が切れた。
「おお、それ普通に投げてるだけなんだよね。」
「んー、一瞬力を込めているイメージだけど。」
実は俺も良く分かってない。
「ふむふむ。」
アルフレッドは腕を組んで何かを考えているようだ。
「なに? アルフレッド。」
「何でもないよ。さ、ご飯にしよう。みんな支度手伝ってくれるね?」
「はーい。」
子供達は嬉しそうに立ち上がった。
俺もそうだが、アルフレッドも凄い子供達に懐かれていた。
こうして5日間の店番、子守の仕事は無事に終わった。
冒険者の仕事としては意外なものだったが、充実した仕事だと言えるだろう。
家に帰ってきた店主夫妻も子供達が楽しそうにしている様子を見て、とても喜んでくれた。
最終日に別れる時子供達が大泣きしてしまって俺もホロリと来てしまったが、初仕事は大成功と言えるだろう。
「アスカ、ちょっと寄り道して、町の外のあの丘に行ってみない?」
アルフレッドが丘を指さした。
「え、あ、うん。」
俺は頷いた。ケヴィンがこの辺りは町や街道から離れると魔物が生息していると言っていた。
まぁでも、アルフレッドがいれば大丈夫だろう。
俺達は町を守る門を出ると、丘に登った。
「アスカ、君は冒険者になった以上、敵や魔物と戦う術を身につけなければならない。」
アルフレッドが真剣な表情になった。
「僕だってケガをして戦えなくなるかもしれない。そうなったら、君は自分で自分を守るんだ。」
「う、うん。」
いきなり何を言い出すんだ?
「あそこに虫の魔物、キャタピラーがいる。攻撃力は高くないが、硬い外皮に守られて防御力が高い。あれを君一人で倒すんだ。」
「え、で、でも、どうやって?」
前から言っているが俺はひ弱だ。あれを殴ったところでダメージなど入らないだろう。
風の短刀ではどうか? いや、あれでも斬れなさそうだ。
「君が最初から掛けているそのネックレスだけど、僕のと対になっているものなんだ。僕が持っていたものは防御の力がある。あの水路でブレーズ先生の魔法をかき消したのを見ただろ?」
「う、うん。じゃあ俺のは…?」
「詳しい効果は分からない。でも防御の対なのであれば、何かしらの攻撃が出来るんじゃないかと思う。それを使ってみるんだ。」
何と言う無茶振りなんだ…!?
でも、アルフレッドの言う通り、力が無くては冒険者など続けられない。
「よ、よし。俺は行くよ!」
俺は魔物に近づいた。
魔物は俺に気付き、ダンゴムシのように丸まって転がってきた。
「ぅ…、ビビるな俺。たしかあの時はネックレスを握って魔力を込めた…」
俺はネックレスに力を込めた。
するとネックレスから黒い煙のようなものが噴出した。
「な、何なの?」
煙は俺の前で忍者が投げるような短刀に形を変えていった。
それが俺の前に何本も浮いていた。
「!」
俺は閃いた。これを魔物に投げればいいんだ。
俺は浮いている黒い短刀を握ると魔物に投げつけた。
ヒュッ!
外れてしまった。いや、魔物が避けたのか。
黒の短刀は地面に突き刺さると爆発し、地面に少し穴が開いた。
結構な威力だ。
2本目の短刀を握ろうとしたが、魔物との距離が近い。
俺は風の短刀の力で加速し、距離を取った。
黒の短刀は俺が移動すると共に移動し、俺の近くから離れることは無かった。
これは使える!
「よし、今度は良く狙って。」
俺は黒の短刀を握り、魔物に投げ付けた。
今度は魔物に命中した。
バァァァン!
大きな爆発音と共に、魔物の体が爆発した。
俺は初めて魔物を倒したのだ。
「アルフレッド! 俺、魔物を倒せたよ!」
俺は顔を輝かせた。
「うん、これは予想以上の威力だよ。キャタピラーは僕の火属性魔法でも一撃で倒せたことないのに。」
アルフレッドはにっこりと笑った。
「アスカのネックレスの力は魔法で武器を具現化できる力があるのかな。もう少し研究すれば色々使えそうだね。」
「そ、そうだね!」
「それにあのカード投げが良く当たるのを見て、狙ったところにモノを投げる才能があると思ったんだ。今の力はそれにピッタリの能力だね。」
そうか、あの時カード投げの時、アルフレッドはそんな事を考えてたんだ。
それにしても初めての単独での実戦で、やり方次第で俺にも魔物と戦う事が出来ることが分かった。
うん、これは大きな収穫と言えるな。
俺はぎゅっと拳を握った。




