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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第3章 アスカの旅立ち編
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第22話 マルゴワール領

ナイザール王国の地方都市マルゴワール伯爵領は、王国北部の海沿いにある。

中央から見れば辺境の地と言えるが、ヘンドリクセン王家の分家筋にあたる血統から、一定の発言力・高度な自治が認められていた。

「わぁ、綺麗! 海が見えるよ!」

俺は馬車から身を乗り出した。

「ほら、危ないよ。アスカ。」

アルフレッドが俺の肩を抑えた。

「良いじゃない! 俺、海を見るの久しぶりなんだから!」

目覚める前も“海なし県”に住んでいたからな。

「峠を越えたからもうここはマルゴワール領内だ。海沿いに町が見えるだろう。」

ケヴィンが指さした方には港があり、その周りにそれほどの大きな規模ではないが、町が広がっている。

「町に着いたら、とりあえず宿を取ろう。」

馬車は40分ほどで町に到着した。

遠目で見たらそれ程大きくないと感じた町であるが、市場にも活気があり、数多くの人が歩いていた。

俺達は市場からほど近い場所に宿を取った。

「さて、俺とロイで町の様子を見てくる。それと魔導兵器破壊任務の依頼主に会ってくるから、お前達は適当にくつろいでてくれ。」

ケヴィンはそう言うと、ロイと共に部屋を出て行った。

アルフレッドやラカン、カサンドラは馬車から荷物を下ろしていた。

「えーっと…」

俺はその様子を眺めた。暇なのだ。

「みんな、俺も手伝うよ!」

俺は服の腕を捲って馬車に近づいた。

「アスカはやらなくていいよ。重い荷物ばかりだから。」

アルフレッドは俺を追い払うような感じで言った。

「えーでも、暇だし。俺だって手伝いたいし…」

「じゃあ、これ持ってみて。」

カサンドラが大きな袋を渡してきた。たぶん、服とか装備品が入っている袋だろう。

「う、うん!」

俺は袋を抱えた。カサンドラが袋から手を放した。

「んぐ…、うぐぐ。」

俺は顔を真っ赤にして、何とか荷物を運ぼうとした。

よろよろと5歩くらい歩いたところで荷物を持っていられず、その場にへたり込んだ。

「言わんこっちゃない、だから僕達に任せてって言ったのに。」

アルフレッドはひょいっと袋を持ち上げた。

「ご、ごめん…」

俺はその場に座り込んだまま俯いた。

この体がひ弱なのは分かっていたけど、まともに荷物を持ち上げることも出来ないなんて。

「・・・」

アルフレッドは右手に荷物を持ったまま、俺を見た。

「アスカ・エール・フランクール。君は冒険者になるんだろ? こんな所で座っている暇はないぞ」

アルフレッドが左手を差し出した。

「そ、そうだよね。」

俺はアルフレッドの手を借りて立ち上がった。

「みんな、その荷物は任せるから、俺は部屋でお茶淹れてくるね。」

俺は気を取り直して、階段を駆け上がった。

今は自分のできることからしていこう。




部屋に荷物を運び込みくつろいでいると、1時間ほどでケヴィン達が帰ってきた。

「ケヴィン、報酬の方は貰えたの?」

カサンドラがケヴィンに聞いた。このパーティーの財務を握ってるのはカサンドラらしい。

「ああ、一応な。20ナイザール金貨だった。」

「何ですって? それじゃはっきり言って赤字ギリギリよ」

「ああ、高価な呪文書(スクロール)を何枚も使っちまったからな…」

ケヴィンはばつが悪そうだ。

「伯爵様ってこんなケチだったっけ?」

カサンドラは不満そうだ。

「いや、聞いた話だとヘンドリクセン王家長兄ギュスターヴ軍の生き残りがここに逃げ込んでるらしい。」

「え、ちょっと聞いていいか?」

アルフレッドがケヴィンを見た。

「ああ、いいぜ。」

「レオポルド殿下の魔導兵器を破壊することを依頼してきたのって、マルゴワール伯爵様なのか?」

「…そうだ。伯爵は魔導兵器の存在に気付き、俺達に破壊を依頼してきた。レオポルドがヘンドリクセン王やギュスターヴを亡き者にしたら、次狙われるのは自分だと思ったんだろう。」

「なるほど。」

アルフレッドは腕を組んだ。

「…ところで、伯爵様に直接仕事を依頼されるって、あなたと伯爵様はどういう関係なんだ?」

「ああ、それはまだ話してなかったな。お姫様(アスカ)の事を聞いておいて隠していてはいけないなよな。」

ケヴィンは椅子に座った。

「俺は元は王族で本名はベルクール。ギュスターヴやレオポルド、アルエットとは従兄弟に当たる。マルゴワール伯爵とは義理の兄弟の間柄なんだ。先代マルゴワール伯爵には子が中々生まれなくてな、後継ぎ候補として俺は養子に入っていたんだ。だが後に子が生まれたんで、俺は身分を捨てて冒険者になったんだ。…黙っていてすまなかったな。」

(アルエット)の従兄妹…」

俺は目を丸くした。

「そうだ。だからこそ血縁者を魔導兵器の発動体として使おうとするレオポルドが許せなかったんだ。」

「ケヴィンもヘンドリクセン王家の血を引いてるってことは、魔法に関する特別な力があったりするの?」

「いや、まぁ、変身の魔法を使えるのは特殊と言えば特殊だが、俺は妾腹だし、魔力はそれほどでもないぜ。」

「ふーん。でも、(アルエット)の身内の人で良い人がいて良かったよ。王様は少なくとも(アスカ)は会ったことないし、兄の一人は俺を道具にしようとしたし…」

「そ、そうか? そう言ってもらえると助かる。」

ケヴィンは柄にも無く照れているようだ。

「でも、俺は王族とかじゃなく冒険者としての自分が、本当の俺だと思ってるんだ。だから、堅苦しいのは無しに行こうぜ。」

「そうだね。」

俺は窓から外を見た。夕日が水平線に沈んでいくのが見える。

つい昨日までは俺は城の中に閉じ込められていた。

それが今は穏やかな気持ちで夕日を眺めることが出来る。

アルフレッドやケヴィン、仲間たちに感謝しよう。

俺は美しい夕日を見ながら思った。

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