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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第3章 アスカの旅立ち編
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第21話 出発の朝~旅立ち~

「本当に良いの?」

カサンドラが俺に問いかける。

「うん、お願い。」

俺は鏡の中の自分を見ながら言った。

「じゃあ、行くわよ。」

カサンドラが俺の赤く長い髪の毛にハサミを入れる。

シャキシャキ!

切られた髪が床に落ちていく。

「うーん、こんなに綺麗な赤い髪なのに、勿体ないわねぇ…」

カサンドラが髪をカットしながら言った。

「でもさ、こんな色だし、長いままだとすごく目立っちゃうしさ。」

「それはそうだけど…」

「それにしてもカサンドラって、髪の毛切るの上手だね。」

「そりゃ、そうさ。こいつは冒険者になる前、美容師だったんだからな。」

ロイが頬杖をつきながら言った。

「そうなんだ? 美容師さんがなんで冒険者に…」

「ははは、そりゃカサンドラは刃物の扱いに長けていたし、それに腕っぷしも凄くてな。腕なんか隠れマッチョで…」

カッ!

ハサミがロイの顔のすぐ脇を通り、壁に突き刺さった。

「あら、手が滑っちゃったわ。」

カサンドラが笑いながらロイを見た。

笑いながら…、いや、鏡を見るのはやめとこう。

「ロイ、それで私の腕が何なの?」

「い、いや。なんでもねえよ…」

ロイは投げられたハサミをカサンドラに返した。

カサンドラは何事も無かったように俺の髪の毛を切っていった。




「おい、準備は出来たか?」

ケヴィンが顔を出してきた。丁度髪の毛も切り終わったところだ。

「あれ、お前。髪の毛切ったんだな。」

「うん、長いと目立っちゃうから。」

肩より長かった髪の毛はショートボブくらいの長さになった。

「おい、アルフレッド。アスカの髪見てみろよ。どう思う?」

ケヴィンがアルフレッドに言った。

「え? 別に見なくても分かるよ。」

えー! そっけない。ちょっと期待したのに。

「アスカなら、どんな髪型も似合うはずだからね。」

アルフレッドは俺の荷物を荷造りしながら言った。

「ほ、ほんと!?」

思わずにやけてしまった。

「ふーん、見なくても分かる…ね。」

ケヴィンが肩を竦めた。

「準備が出来次第出発だ。既にラカンが馬車を手配している。」

「馬車? そんな堂々として大丈夫なの?」

俺はケヴィンに聞いた。

「さっき俺とラカンで町を調べてきたが、特に手配書とかは無かった。それに俺達は顔を変えて城に入ったから、面は割れてないしな。」

「あ、そうだね。でも、私とアルフレッドの顔は一部の兵士さんとか知ってるかも?」

「馬車の中にいれば問題ねえよ。不安ならそのローブのフードでも被っとけ。もし検査とかあったら俺の魔法で顔も変えちまえるしな。」

「馬車が来たぞ。」

ラカンが酒場に入ってきた。

「よし、荷物を積み込んだらすぐに出発だ。」

俺達は荷物を積み、馬車に乗り込んだ。




俺達の馬車は順調に進んだ。

途中で検問もあったが、問題なく通過することが出来た。

俺達は一応冒険者ケヴィンパーティー一行という事になっている。

「ケヴィン、僕達はどこに向かってるんだ?」

アルフレッドはケヴィンに問いかけた。

当然舗装路など無い道だ。

揺れは酷いが、アルフレッドが俺の肩に腕を回して支えてくれているので、何とか耐えられた。

「ああ、この馬車はナイザール王国国内ではあるが、マルゴワール伯爵領に向かっている。そこは第二王子の支配が及んでいないからな。まずはそこで情報を集めようと思う。」

ケヴィンは周辺の地図を見ながら言った。

「マルゴワール伯爵家と言えば、ヘンドリクセン王家の分家にあたる家系だ。レオポルドもすぐに手出しはしねえだろう。当面は安全さ。それに冒険者ギルドの支部もあるから、仕事も出来るしな。」

「冒険者ギルドか…、僕も登録しようかな。」

アルフレッドが頷きながら言った。

「ねえ、アルフレッド。それって俺でも出来るのかな?」

「出来るは出来るけど、本名(アルエット)で登録するわけには…」

「ケヴィンだって、二つの名前で登録してるんでしょ? てことは、別にどんな名前でも良いんじゃない? あ、そうだ」

俺はアルフレッドの横顔を見た。

「アルフレッドの姓ってなんて言うの?」

「僕の姓はフランクールだよ。」

「じゃあじゃあ、俺、アスカ・エール・フランクールで、登録する。ダメ?」

「ダメじゃないけど…。アスカみたいに弱っちい冒険者に、何が出来るんだ?」

「そ、そのうち強くなるよ!」

俺はむくれ顔になった。

「ところでよ、アスカ。」

ケヴィンが話に割って入ってきた。

「仲良く話している所悪いが、アスカ。俺はお姫様(アルエット)についてならそれなりに知っているが、お前(アスカ)についてはあまり知らねえ。お前(アスカ)の事を教えてくれねえか?」

「そうだね、実は…」

俺はケヴィン達に目覚める前での世界の俺、今に至る顛末を説明した。

「そうか、お前は転生者か。」

「うん、でも思ったのは、本来の人格(アルエット)はどこに行ってしまったんだろう? 俺の中にいるのかな?」

俺は自分の胸の真ん中を抑えた。

「それは分かんねえな。俺は古代魔法についての知識はあまり無いからな。」

ケヴィンが答えた。

俺がアルフレッドを想う気持ちを考えれば、今の俺の意識にかなり影響を与えているのが分かる。

そうすると俺と本来の意識(アルエット)は一緒になっているのかもしれない。

無意識にしている自分の仕草や喋り方も、たまに女の子っぽい気がするし。

でももし、俺の意識が消え、アルエットが目覚めたとしたら、俺はいったいどこに行ってしまうんだろう?

俺はアルフレッドの肩に寄りかかりながら考えた。


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