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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第2章 王国騒乱編
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第20話 帰還、そして王国からの出奔

俺達は合流場所に指定された酒場に帰還した。

「はぁ…」

俺は膝に手を当てて屈み込んだ。

「大丈夫ですか? 姫様(アスカ)。」

アルフレッドが心配そうな顔になった。

「大丈夫な訳ないでしょ! いくら魔法があったからってこんなに走ったのは久しぶりなんだから!」

俺はアルフレッドを睨み付けた。

「あ、ああ。そうだね。」

アルフレッドは苦笑いをした。

「そんな所で痴話喧嘩してないで、こっちに座って休んだらどうだ?」

元の顔に戻ったロイが飲み物を注ぎながら言った。

「俺は酒だが、あんたらはジュースだ。」

「あ、ありがとうございます。」

俺は椅子に座ってジュースを受け取った。

アルフレッドは俺の横に立ったままジュースを受け取った。

「…座らないの?」

「僕はその…」

「俺は従者としてあなたを解雇したの。だから、あなたは従者じゃなくて…」

「恋人か?」

ロイがそういって豪快にビールを飲み干した。

「な、ちちち、ちがっ。」

俺は顔を赤くした。

「と、友達です!いいから、アルフレッドは席に座りなさい。」

「は、はい…」

アルフレッドは隣に座った。

「ははは、仲良いな。」

「と、ところでロイさん、でしたっけ。お仲間はまだ戻られないですけど、心配ではありませんか?」

「ああ、ケヴィン達はうまくやるよ。あいつはこういう大きい仕事ほど燃える奴だからな。」

「ケヴィン!? ケヴィンってあの時の…?」

俺はアルフレッドを見た。

「そうです。僕が協力を頼みました。」

「でも、顔が…。あ、そういう魔法か。」

ガチャ!

「お、噂をすれば帰って来たぞ。」

ケヴィン達が帰ってきた。

「お疲れさん、ケヴィン。先に頂いてたぜ。」

ロイがビールを持ち上げた。

「おお、装備を置いてくるから、俺たちの分も頼むぜ。」

「ああ。」

ケヴィン達は部屋の奥に入っていった。




ケヴィンは装備を置いて出てくると、顔は元に戻っていた。

「おっと。お姫様に置かれましてはご機嫌麗しゅう。」

ケヴィンは礼をした。

「そんな礼はやめてください。あなたは私の恩人ですから。」

「そうか? なら楽にさせてもらうぜ。」

ケヴィンはドカッと椅子に座って、注がれた酒を飲み始めた。

「ケヴィン、あなたたちは僕達と別れてから何をしてきたんだ?」

「ん?ああ、お前達には答えてやっても良いかな。」

ケヴィンはジョッキを置いた。

「俺達はあの魔導兵器を破壊する仕事を引き受けてたんだ。悪いがお姫様の救出はついでだったのさ。」

「あなたはあの魔導兵器の存在を知っていたのか?」

「ああ。発動の鍵となるのはそこのお姫様だってこともな。だが、使用可能状態になっているとまでは知らなかったんだが。」

その言葉に俺は視線を落とした。

「…お姫様、あんたを責めてるんじゃねえよ。あんたには何の責任も無い。」

「え…?」

「単純にあの兵器を使えない様にするなら、あんたを攫うか殺せばいいだけさ。でもな、近くに素敵な王子様(アルフレッド)もいたし、あんたは俺達をボアから救う選択もしてくれたしな。」

「…ひょっとして、あの時、あなたは私を攫おうと近づいてきたの?」

「ん、まあな。まぁ、そんな事は良いじゃないか。」

ケヴィンはビールを一口飲んだ。

「それより、お姫様。あんたらはこの先どうするんだ? 魔導兵器は破壊できたが、この国はまだ第2王子の支配下にある。長兄ギュスターヴの軍に合流するのも良いが、あの一撃で大打撃を受けてるし、ギュスターヴ自体生きてるか分からんな。それでも、第2王子の勢力下のこの町からは出た方がいいな。」

「そうですね…」

「俺達が城内を引っ掻き回してやったから、すぐに追撃の部隊は編制できまい。まぁ町に兵は出すだろうが、俺の魔法があれば掻い潜れるさ。」

俺はアルフレッドを見てから、ケヴィンに視線を向けた。

「ケヴィンさん、私とアルフレッドは国を捨てようと思います。もう少し私たちの面倒を見てくれませんか? お願いします。」

俺は頭を下げた。

「ははは、止してくれ。俺達はお姫様に頭を下げられるほど身分が高くねえよ。」

「身分の事を話してしまったら、私は王族でアルフレッドは奴隷の出です。」

俺はアルフレッドの手を強く握った。

「私がこうしてアルフレッドと手を繋いでいること自体、考えられない事です。でも私はそうは思わない。」

俺の言葉を聞いて、ケヴィンはアルフレッドを見た。

「アルフレッド、お前はどう思っているんだ?」

アルフレッドは突然話を振られ少し戸惑ったが、顔を赤くしながら強い口調で話し始めた。

「僕はアスカが行くところならば、どこでも行くつもりだ。でも僕はお姫様の従者ではないから…」

アルフレッドがチラッと俺を見た。

「…友達って言われない様に頑張るとするよ。」

アルフレッドが恥ずかしそうに視線を落とした。

「はーっはっは、そりゃいいな。お前達、気に入ったよ。行きたい所、どこでも連れて行ってやるよ。おう、お前らもそれでいいな?」

「おう、いいぜ。」

仲間たちも口々に言いながら頷いた。

「ありがとうございます。」

俺達は頭を下げた。

「その代わりケヴィンさんなどと、他人行儀なのは無しだ。分かったな?」

「ああ、うん。分かったよ、ケヴィン。」

「それでいい。出発は明日だ。今日は食べて飲んで、ゆっくり休め。」

ケヴィン達は乾杯をして酒をたらふく飲み始めた。




「・・・」

宴会は続いているが、俺は少し離れた椅子に移動した。

アルフレッドがそれに気付き、近くに寄ってきた。

「疲れましたか?」

「うん。」

アルフレッドが俺の隣に座った。

「ねえ、アルフレッド、あなたは良かったの?」

「何がです?」

「俺なんか助けた事で、お尋ね者になったかもしれないことだよ。」

「何で僕がそんなことを気にするんです?」

アルフレッドがはてな? と言うような顔になった。

「だってさ、言ったように俺はアルエットじゃないんだよ?」

「知ってますよ。貴女はアスカでしょ?」

「うん、俺がここにいるから、アルエットはここにいないんだよ?」

「そうですね。でも、僕の人生にとって、たとえ貴女が眠っている時間が長かったとしても、一番一緒にいる時間が長い人です。従者だからとかそんなの関係ない。」

アルフレッドが俺の手を握った。

「僕は貴女が、手の届かない所に行ってしまうなんて、考えられないんです。」

「・・・」

姫様(アルエット)の中身がアスカだとしてもそれは関係ない。それとも、アスカは僕が近くにいない方がいいですか?」

「いや、その…。俺も…アルフレッドが近くにいて欲しいと思う。」

俺は視線を逸らしながら言った。

「良かった。ならそれでいいじゃないですか。」

アルフレッドが優しく微笑んだ。俺はその顔をチラッと見た。

アルフレッドは若干幼さを残した顔であるが、イケメンだと思う。

俺は意識は男だから、この感情が異性として好き とかそういうのなのかは分からない。

だが、アルフレッドが大切な人というのは確かなことだ。

「うん、でもさ、さっきのケヴィンの言ったことじゃないけどさ。俺の事をアスカって呼んでくれるなら…」

俺はアルフレッドの顔をじっと見た。

「中途半端に敬語とか使わないでくれる? それやめてくれないと、…ずっと友達のままだよ?」

「え、ああ、はい。努力します、じゃなくて、分かったよ、アスカ。」

アルフレッドが恥ずかしそうな顔で言った。


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