第18話 城への潜入
「いいか? 俺の魔法は他人に掛けることもできる。」
ケヴィンが仲間の男に魔法を掛けた。姿がケヴィンに変わった。
「だが“俺以外”の人間に掛けた場合の弱点としてはこの魔法は俺の魔力で、“姿を上書き”してるので、掛けられた本人が自身の魔力を使った場合、効果が無くなってしまうというのがある。」
仲間の男が指先に魔力を込めると、姿が戻ってしまった。
「変身中は魔法を使えないのか。」
「そうだ。だから俺達は腰抜けなのさ。」
ケヴィンは肩を竦めた。
「だからあの日は、逃げてただけなのか…」
「ああ、ちょっと仲間は変身を解けなくてな。ま、それは今はいい。」
ケヴィンは水をグビっと飲んだ。
「今回は城の兵士に化ける。俺は冒険者ローランで行こうと思う。だから、必要な時まで俺以外は魔法を使うな。」
僕達は城にほど近い路地まで来た。
「さてどこから城内に潜入するかだが、どこだったかな。」
ケヴィンは既にローランに変装していた。
僕達はは城の裏手にある廃井戸の方に向かった。
「これだこれだ。」
ケヴィンが井戸の蓋を開けた。
「ロイ、ロープをそこに引っ掛けてくれ。」
「ケヴィン、これは…?」
「ああ、ここは抜け穴でな。城内に繋がってるんだ。」
「どうしてそんな事を…? 僕でも知らないのに」
「そんなことはいいじゃないか! さあ行くぞ。」
僕達は順番に井戸へ降りて行った。
井戸は城内の水路に繋がっていた。恐らく今は使われていないものだ。
どうしてケヴィンは知っているのだろう?
「さて城内に潜入する前に、変身の魔法を掛けてやろう。」
ケヴィンが一人一人魔法を掛けてゆく。
最後の一人が僕なわけだが…、ひげもじゃのおっさんにされてしまった。
「ななな、何だよこれ。」
「ククク、文句言うんじゃねえよ。」
ケヴィンは笑った。他の仲間もニヤニヤ笑った。
「くそ…」
僕はフードを被った。
「さてこっちだ。ついてこい。」
ケヴィンが先導、僕は最後方で付いてゆく。
「この梯子が城の裏庭に出るはずだ。ここなら見つからずに城内に入れるだろう。」
僕達は梯子を登った。
なるほど、ここは裏庭だ。少し行けば、僕がマリユス達に暴行を受けた場所だ。
「俺は冒険者ギルドの仕事を受けたことになっている。実際に城内警護の仕事を登録済みだ。皆はそれに従う兵士の役目をしてくれ。」
ケヴィンが真面目な顔になった。
少しすると、見たことのある顔がやってきた。噂をすればマリユスだ。
「貴方は、冒険者ギルドから来た方か?」
「そうだ。Aクラス冒険者のローランだ。」
ケヴィンが冒険者ライセンスを見せた。
「依頼にあった城内警護の仕事で来たのだが、この兵士達に城内を案内してもらっている。」
「そうでしたか、よろしく頼みます。」
「こちらこそよろしく頼む。」
ローランとして話すと凄い威厳だ。
マリユスはローランに礼をし、去っていった。
「さて、お姫様は三階だったな。ロイ、人払いの魔法のスクロールは持ってきたな。」
「ああ。」
「三階の階段を登ったら使用する準備をしてくれ。俺は先に行って様子を見てくる。俺が合図したら登ってこい。」
ローランが先に階段を登って行った。ロイと呼ばれた男が袋からスクロールを取り出した。
スクロールは事前に魔力が込められている呪文書で、魔力を使わず魔法を使うことが出来るものだ。
準備を整えるとケヴィンが僕達を呼んだ。
「見張りが2名いる。お姫様の部屋はあそこで間違いないな?」
「うん、そうだ。」
「ロイ、合図したらスクロールを使え。同時に俺が出てあいつらを倒す。」
「分かった。」
ケヴィンは身構えた。そして合図をした。
ロイはスクロールを発動、その瞬間、かなりの速度でケヴィンが走り出す。
見張りはケヴィンの接近に気付き剣を抜こうとするが、その前にケヴィンが一人目に掌底を食らわせ、もう一人には膝蹴りを腹に当てた。
二人の見張りは崩れ落ちた。
強い…。
「何をしている。スクロールの効果は十数分だ。早くしろ。」
ケヴィンがそう言うと、僕はハッとして姫様の部屋に向かった。




