第17話 腰抜けな味方
「・・・」
僕は冒険者ギルドで出会った冒険者・ローランに案内され、寂れた酒場にやってきた。
僕は2階に通された。
「ローランさん、僕をこんなところに連れて来て何なんですか? 先程仲間にならないか、と言っていましたが。」
「ああ、ギルドで話し出すとがめつい連中が寄ってくるんでな。場所を移させてもらったよ。」
「…僕はこんなことをしている時間は無くいんです。」
「まぁ慌てるな。急いては事を仕損じるという言葉があってな。」
「何です?それは…」
「とある異世界人が言っていた言葉でな。物事は焦ってすればするほど、冷静に出来なくなるものだ。焦っている時ほどじっくり落ち着き、考えて対処しろ という意味だよ。」
ローランがコップに入れた水を差しだした。
「どうもお前は急ぎすぎているように見える。少しは落ち着け。」
僕は水を受け取り、一口飲んだ。
「でも、僕は…」
その時、雷のような音が聞こえて来た。
僕は窓から身を乗り出した。
眩い光を放つ光球が山の方へ向かって行く。
ゴゴゴゴ…、ガァァァァァァァ!
無数の雷が山の麓に落ちるのが見える。
「ほう、恐ろしい魔力だな。」
ローランも空を見上げた。
あの恐ろしい雷撃魔法から微かに感じる魔力は、姫様だ。
「くっ…」
僕は唇を噛みしめた。恐らくあの大魔法の発動をさせられたのだろう。
早く助けてあげなければ…。
「ローランさん、僕はこんな事をしてる場合じゃないんだ。」
僕はローランを見た。
「だから落ち着けって言ってるだろ? 落ち着かないと見えるものも見えなくなるぜ?」
ローランが腕を組んだ。
「目の前の男の正体すら、見抜けないだろ?」
ローランは右手で顔を押さえた。
手を退けると…
「ケ、ケヴィン…!」
馬鹿な、顔が変わった…?
「へっへっへ。まあ、落ち着いていたところで俺の変装は見破れないけどな。」
ケヴィンがニヤリとした。
「変装…だって?」
「ああ、魔法を使った変装でな。世界中見てもこんなの使えるのそうはいねえだろう。」
ただ変装するだけならだれでも出来る。
だけどケヴィンのは違う。顔も、声も、感じる雰囲気さえも全く変えることが出来るのか…?
「ケヴィン…!」
僕は机に手を付けて立ち上がった。
「頼む、力を貸して欲しい…!」
「ん…?」
ケヴィンが僕の顔を見上げた。
「僕は姫様を助けたい。…さっきの魔法は恐らく、姫様の魔力を利用して放たれたものだ。」
僕は拳を握った。
「第二王子レオポルド殿下は姫様の魔力を利用し、またあれを使おうとするだろう。あれが使われたら、一体何人の人が犠牲になるか…。そんな光景を見続けたら、姫様の心は壊れてしまうかもしれない。」
「…そうだろうな。レオポルドはあんたのお姫様の心が壊れようが関係ない。寧ろ壊れちまった方が魔力供給装置として使えて良いのかもしれないからな。」
「そうなる前に何としても助けないといけない。でも僕だけじゃそれは無理なんだ。」
「ふむ。でも、何で俺なんだ?俺はあんたに剣を突き付けられたリ、ボアにやられそうな姿しか見せてないはずだが?」
ケヴィンはじっと僕を見た。
「僕は、あなたの底から感じる力はそんなものじゃない、と思ったんだ。」
「ははは、そうか。」
ケヴィンが立ち上がった。
「悪いが俺達は腰抜けパーティーだ。正面からの戦闘はしない、それでも良いか?」
「正面から戦って、レオポルド殿下の軍に勝てるとは思ってないよ。」
「違ぇねえな。よし、今仲間を呼んでくるから、ここで待っててくれ。」
ケヴィンは部屋から出て行った。
あとから聞いたんだが、ケヴィンはローラン・サルヴェールとしても冒険者ギルドに加盟しているらしい。
ローラン・サンヴェールは剣技に長け、冒険者ランクはAランクとの事だ。
とんだ“腰抜け”がいたもんだ。




