第14話 クーデター
兄、レオポルドの動きは非常に迅速であった。
彼の軍隊は瞬く間に要所要所を制圧していく。
入念に計画され、訓練されていたのだろう。
~玉座の間~
レオポルドが兵を引き連れ、玉座の間に入った。
「来たか、我が息子レオポルドよ。」
ヘンドリクセン王は頬杖をついたまま言った。
「父上に置かれましてはご健勝のこと、真に喜ばしく思います。」
レオポルドが慇懃丁寧に礼をした。
「ふん、皮肉を言いに来たのではあるまい。」
ヘンドリクセン王が不機嫌そうな顔で言った。
「父上ほどの方が俺の動きに何も手を打てぬとは、やはり老いたようだな。」
レオポルドがニヤリと笑った。
「さて父上、政治的にどうであれ、あなたは私の父です。命乞いをしていただければ、お命だけはお助け申し上げますが…」
「儂が貴様なぞに命乞いをすると思っているのか?」
「ははは、当然思っておりません。」
「さもあろう…な!」
ヘンドリクセン王は杖を握って立ち上がった。
その瞬間、杖が眩く光り、大きな炎が放たれた。
地獄の炎熱魔法だ。
対・単体の火属性魔法としては最高クラスの攻撃を誇るものだ。
「ふん…」
レオポルドが手を掲げた。
レオポルドは杖を持っていないが、指輪が魔法発動体の役目を果たす。
「障壁…」
バァァァン!
大きな爆発音が鳴り響いた。
「今のを防ぐ…か。」
ヘンドリクセン王が呟いた。レオポルドは無傷だ。
「防ぎますとも。父上は俺を侮っておられる。」
レオポルドは笑いながら言った。
「しかし流石は父上です。ヘルファイアを無詠唱で放たれるとは、ですが…」
レオポルドは手をかざし、衝撃波を放った。
ドンドンドンッ!
「ぐ、ぐう…」
ヘンドリクセン王が苦悶の表情を浮かべた。
「無属性魔法は大ダメージを与えるような属性効果はありませんが、その逆は少ないのですよ。」
レオポルドは衝撃波を連射した。
ヘンドリクセン王は防御しているが次第にダメージが蓄積していく。
そして膝から崩れ落ちた。
「さて父上、チェックメイトですな。」
レオポルドはヘンドリクセン王に近づき、見下ろした。
「…貴様の愚行は何れ王国軍の主力を率いるギュスターヴに知られるだろう。そうしたら、貴様はどうするつもりなのかな?」
血だらけのヘンドリクセン王は目線のみレオポルドに移した。
「我が国には素晴らしい魔導兵器があるではありませんか。」
レオポルドがニヤリとした。
「…馬鹿な。あれはまともな魔導士には使えぬ。」
「いえ、使えるものが一人だけいますよ。」
「ま、まさか…」
「そのまさかです。幸いなことに、妹はブレーズの勧めで魔導具の使い方を曲がりなりにも習得しました。」
「貴様…、実の妹を魔導兵器の歯車として使おうと言うのか…?」
「こうして父上に牙を向けようと考えた時から、肉親の情など捨てております。俺の覚悟を甘く見ないで頂きたい。…もっとも、アルエットは半分妹と言えるか分からない代物ですが…ね。」
レオポルドが手をかざした。
「…父上を捕らえよ。大人しく下る者は良し、抵抗する者は皆殺しにせよ。」
「はっ!」
数名の兵がヘンドリクセン王に縄をかけ運んでいき、残りの兵は王宮内に展開していった。
ここに、レオポルドのクーデターが成立したのである。




