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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
番外 エピローグ編
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番外編 終章 腰抜け王

「…以上が報告であります。」

臣下がそう言って書類を持った手を下ろした。

会議では活発な議論が交わされていた。


その様子を見つめる男が一人。

王族、にしては簡素な衣装に身を包んだ男。

「ベルクール王、裁可は如何に?」

臣下の一人が王に話し掛けた。

ベルクール王と呼ばれたその男、そう、ケヴィンである。


ここはナイザール王国王都にあるバイゼル城の会議室。

所々戦いの爪痕が残る部屋の中で、国の復興に向けた話し合いが行われていたのだ。


「うむ、良きに計らえ。民には必要な物資が行き渡るようにな。それと治安維持には細心の注意を払うように。」

「はっ!」




会議が終了し、臣下達は部屋を出ていった。

「ふぁぁぁぁーー。」

最後の臣下が出ていくのを確認すると、ケヴィンは気の抜けた声を出しながら背伸びをした。

義兄上(あにうえ)、何と情けないお声を…」

その様子を呆れたような表情で見る男がいた。

「うるせえな、ジョルジュ。だいたい俺は王なんて器じゃねーんだよ…」

ジョルジュとはマルゴワール伯の事である。

この世界でいう義兄とは血の繋がらない兄弟もそれに含まれる。

先代マルゴワール伯の養子であったケヴィンの事を、ジョルジュは義兄上(あにうえ)と呼んでいた。

「政治だったらお前の方が慣れているだろう? お前が王になれば良かったんだよ。王国内筆頭貴族でヘンドリクセン王家の遠縁なんだから資格はあるはずだ。」

ケヴィンは顎鬚を触りながら言った。

「何をおっしゃいます義兄上(あにうえ)。私こそ王たる器など持ち合わせておりません。私なんぞ、地方領主で収まっているので十分な男です。…それに、戦乱後の義兄上(あにうえ)の政治手腕は実に素晴らしいものですよ。」

事実、後世の歴史書ではベルクール王は辣腕を振るったとの評価をされている。

ナイザール王国中興の祖であるとも言われているくらいだ。

そこには“腰抜け冒険者ケヴィン”であるような記述は見られない。

その政治手腕は自らの城であるバイゼル城修復であったり自らの私腹を肥やすようなことよりも、国民生活の復興に捧げられたのだ。


「だがまだ十分では無いな。国内北方貴族の所領などではまだまだ治安が良くないとの報告もある…」

ナイザール王国の北方貴族達は国中央から遠く、南部ほど帰属意識が高くない。

表立って逆らうような動きがあるわけでは無いが、混乱が起きている所には色々な弊害があるものだ。


ピイピイ!

念話の呪文書(スクロール)が音と共に明滅した。

携帯電話における着信音のようなものだ。

「ロイか、どうかしたか?」

ケヴィンは時折冒険者仲間と連絡を取り合っていた。

王になった今では簡単に城から遠出することができないから、仲間達に国内及び国外の情勢を調べさせていたのだ。

「分かった。報告に感謝する。」

ケヴィンが呪文書(スクロール)と閉じた。

「ロイさんからですか。何かあったんです?」

ジョルジュが問いかけた。

ロイとはケヴィンの冒険者仲間だ。

「ああ。北方国境近くの町で偽の薬を売る悪徳商人がいるようだ。」

「混乱に漬け込む輩はいるものですな。早々に対処させましょう。」

「いや…、それについてはもう解決したようだ。」

「解決…?」

ケヴィンの言葉にジョルジュが首を傾げた

「その悪徳商人はグヴェナエル共和国を本拠にする奴だったらしいんだが、そこに隻腕の魔族の少女がカチコミ掛けたんだとよ。」

「カチコミ…ですか?」

「ああ。その魔族の少女は金色の魔眼を持ち、漆黒の剣を腰に下げてたんだそうだ。そんでもってその店にいた若旦那を咎めたんだそうだぜ。そしてその魔族はリディ・ベルナデット・ウイユヴェールと名乗ったらしい。」

ケヴィンはニヤリと笑った。

「…義兄上(あにうえ)、何だか楽しそうですね。しかし、リディという事は姫様…いえ、アスカの仲間だった子ですか?」

「そうだ…。元気にやってるみたいだから、アスカもきっと喜んでいるだろうよ。」

ケヴィンは会議室の窓から外を見た。

復興は進んできてるとは言え、城の所々が崩落している。

特に玉座の間があったあたりは戦乱の時のままだ。



アスカよ。お前は本当に死んだのか?



大規模な戦闘が収束した後、全力でアスカ達を捜索した。

だがアスカやアルフレッドの遺体は見つかっていない。



アスカよ。お前は元々はこの世界の人間じゃないそうだな?



いつだかアスカは言っていた。

自分は、自分の意識は別の世界から来たと。



フフフ、もしかしたらお前はアルフレッドと共に、元いた世界に帰ったのかもしれんな。

お前達、そっちの世界でも仲良くやっているか?

お前の仲間のリディは、元気よくやっているみたいだから大丈夫だ。

この国は俺がきっと立て直してみせるから安心しろ。



まぁ…、お前達が仲良くやっているかどうかって事に関しては、心配する必要はねえか。

ケヴィンは目を瞑った。

その瞼の裏に移った光景は…




見慣れない街並。

恐らくこの世界とは文明が違うのだろう。

その街の中で、制服姿の少年と少女が、弾けるような笑顔を浮かべながら歩いていたという。



2016年3月末より連載してまいりました『俺・プリンセス』はこれにて完結となります。

始めて投稿した小説に付き未熟な部分が沢山あったと思います。

伏線(のつもりで書いた部分)も、回収できなかったところもあります。


それでも(この話を投稿する前までで)30,471アクセスを頂戴いたしました。

ここまでやってこられたのも、読んでいただいた皆様のお陰です。

ありがとうございます。


駄作になるかもしれませんが次の小説も考え始めておりますのでまだまだ未熟もの

ではありますが、今後とも応援を頂けます様よろしくお願い申し上げます。

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