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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第2章 王国騒乱編
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第11話 騒乱の兆し

「行ったよ、アルフレッド。」

「はい、姫様。」

俺とアルフレッドは植え込みに身を潜めていた。

別にどこかに潜入するためでは無い。回避するためだ。

俺たちは第二王子の従者が見えなくなってから、植え込みから姿を現した。




アルフレッドが第二王子の従者からリンチを受けてから数週間。

ブレーズのアドバイスを受けて、俺たちは第二王子の関係先に出来るだけ接触しない様に心掛けていた。

俺たちの側には敵意が無いことを示す為でもある。

触らぬ神に祟りなし、というやつだ。

それと魔導具を扱う練習も続けていた。

この短刀は込める魔力の強さで、風の強弱が変わるらしい。

それともう一つ。

この短刀を介して出した風は、術者の体に纏わせる事が出来ることが分かった。

「見てて! アルフレッド。」

俺は目を閉じて魔力を込めた。

風が短刀から流れ始めた。俺はその風を体に留める様に魔力をコントロールする。

「いくよー!」

ダン!

俺は足を大きく前に踏み出した。

ビュゥゥ!

俺の体は走るよりも遥かに早く進んだ。

「姫様!危ない!」

アルフレッドが叫んだ。

俺の前に壁が迫る。

「うわ!」

俺は慌てて風を体の前に送った。

風がクッションになり、何とか衝突を避けることが出来た。

「びっくりした~。」

俺は冷や汗を拭った。

「こんな狭いところでそれは危ないですよ。」

アルフレッドは呆れ顔で言った。

「そうだね。でも広いところなら使えそうじゃない?」

俺はにこっとして答えた。

「でも姫様が速く動けたところで、その先何をするんです?」

「うーん、それは…」

確かにそうだ。俺は腕力が全くない。

こんな体で敵に接近したところで、ダメージを与える術があるのだろうか?

「そうねー。それはそのうち考えるよ。」

「全く、行き当たりばったりですか…」

アルフレッドが首を振った。

考え込んでも仕方がない。せっかく見えた希望なのだから。

「おお、我が妹アルエットでは無いか。こんな場所で何をしているのかね?」

低い声が聞こえて来た。

俺は声がした方を向いた。

短い顎鬚を生やした長身の男が立っていた。

周りには見たことのある男達もいた。第二王子の従者だ。

「第二王子レオポルド様です…」

アルフレッドが耳元で囁いた。

それを聞いて俺は男の顔を見てから一礼した。

「…これは兄上様。ご機嫌麗しゅう」

「堅苦しい挨拶は良い。アルエットよ、長き眠りから覚め、兄として喜ばしく思うぞ。」

レオポルドが俺の挨拶を遮って言った。

「ありがとうございます。」

「うむ。…さてアルエットよ。先程の問いに答えてはくれぬか? お前はここで何をしていたのだ?」

レオポルドが強い視線を送りながら言った。

さて、どう答えたら良いものか。こういう男に対しては隠し事をすると逆にめんどくさそうだ。

「はい、私は魔法の鍛錬をしておりました。」

「ほう、魔法の?」

「はい、私は“どういう訳か”魔法の詠唱が出来ません。そこで我が師ブレーズ先生より、この魔導具を頂きました故、これを使いこなす鍛錬をしています。」

俺は短刀を掲げて見せた。

「ブレーズからか。」

レオポルドが短刀を見た。

「ですが、私はあまり才能は無いようです。すぐに使いこなすことは出来そうにありません。」

「左様か。まぁ、一生懸命に鍛錬するが良いぞ。」

レオポルドはニヤリと笑った。嫌な笑いだ。

「時に兄上様、私からもひとつ良いでしょうか?」

「何だ? 申してみよ。」

「はい。何週間か前の事です。」

俺は唾を飲み込んだ。

「我が従者、アルフレッドが兄上の従者であるマリユス殿を始め3名より暴行を受けました。」

「…何だと?」

レオポルドが睨み付けるような目つきに変わった。

「…姫様。」

アルフレッドは止めようとした。

「暴行の場面を私は目撃し、止めに入りました。マリユス殿が何の目的があってアルフレッドを暴行したのかは知りませんし、追求しようとも思いません。ですがアルフレッドは私の大切な従者です。その従者に刃を向けるという事は、私に刃を向けるのと同じです。」

俺はチラッとマリユスを見た。マリユスは目を背けた。

「アルエットの言ったことは真か? マリユス。」

レオポルドはマリユスを睨み付けた。

「・・・」

マリユスは何も答えなかった。体が小刻みに震えている。

「…沈黙は肯定と見なすぞ。」

そう言うと、レオポルドはマリユスに手を向けた。

その刹那、マリユスが弾き飛ばされた。

マリユスは倒れたまま動かない。どうやら気絶したようだ。

「アルエットよ。気に入らぬだろうがこれで許せ。」

「兄上、謝罪ならアルフレッドにお願いします。」

いきなりの出来事に少し動転したが、俺はレオポルドを見ながら言った。

「そうだな…」

レオポルドがアルフレッドを見た。

「アルフレッドよ、すまぬことをした。この通りだ。」

「…いえ、勿体無いお言葉です。」

アルフレッドが畏まった。

「うむ。では俺は行くぞ。おいお前、マリユスを運んでやれ。」

レオポルドは従者に指示を出してから歩き出した。

二、三歩歩いた辺りで足を止めた。

「…アルエット。俺はお前が我が行く道に立ちはだかる事の無いのを願っているぞ。」

そう言うと、足早に去っていった。


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