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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第10章 王都決戦編
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第95話 王都決戦

王都決戦…


攻城側であるギュスターヴの軍は、周辺諸侯の軍を取り込み開戦までに2万ほどにまで膨れ上がっていた。

対して防御側レオポルド軍は第1軍5000と近衛1000が籠るのみである。

バルストネットの会戦で敗走するも主力を温存している第2軍の4000名だが、レオポルド軍に呼応する様な動きは見せていない。

またマルゴワール伯爵軍2000は遊撃隊として北西側に位置していた。

これが大まかな配置である。


俺は兄ギュスターヴの本陣近くの部隊に随行していた。

結局カールとリディを外すことは認められなかった。

「あれ、何でアレクサンドルの兄ちゃんが一緒にいるの…?」

「やあ、カール君久しぶりだね…。いくら先生がばけm…うぉっほん。かなりの遣い手だとしても一人でも戦闘員が多い方が宜しいでしょう。先生! アレクサンドル以下3名、伯爵様の命令により護衛として参りました。」

アレクサンドル達が俺に対して一礼した。

マルゴワールの兵をこっちに寄こすことは出来ないからその代わりにアレクサンドル達を派遣してきたのだろう。

「ありがたいことだけど、無理だけはしない様に。」

「心得ております。」

アレクサンドルはそう言うと俺達の数歩前に陣取った。


そしてついに決戦の火蓋が切って落とされた。




緒戦。

ギュスターヴ軍は攻城兵器を前進させ始めた。

この世界には銃や大砲があるわけでは無い。

基本的には中世の様な投石器、弓矢等が遠距離戦の主役である。

違いがあるとすれば魔法があることだ。

魔導部隊に関してはレオポルド軍の方が優勢だ。

レオポルド側が誇る第1軍がギュスターヴの攻城部隊を攻撃した。

ギュスターヴの攻城部隊の前進はこれにかなり阻まれた。

とは言え、ギュスターヴ側もある程度は織り込み済みである。

銃や大砲が弾薬切れを起こすように、魔導士が魔法を放てるのも魔力が続く間だけである。

序盤は無理に進まず魔法攻撃を耐える様に少しずつ進撃すれば良いし、何基か保有する大きいサイズの投石器は通常の投石器を超える射程距離から攻撃が可能なのだ。

この様な事情から、序盤は3倍以上の戦力差がありながら一進一退であった。


しかし数日後、レオポルド軍側からの魔法攻撃が断続的なものになり始めた。

魔導部隊が息切れを始めたのである。

その隙を突くようにギュスターヴ側の攻城部隊が大きく前進を始めた。

そして2日後、東側の城門が破られた。

城門よりギュスターヴ側の兵が王都内部に侵入。

それを切っ掛けに戦局が大きくギュスターヴ側に傾いた。

このまま一気にギュスターヴ軍の勝利で終わると思われた。




「も、申し上げます!」

伝令が慌てた様子で本陣に入って来た。

「何だ? どうしたのだ?」

床几に腰掛けた側近が応じた。

「先だってご報告した通り、我が軍は王都に侵入いたしました。途中まで順調に王都内部を進軍しておりましたが、中心部に到達しかけた所で先鋒隊が進軍できなくなった模様…!」

「馬鹿な! 何が起こっているのだ!?」

ギュスターヴ側近の一人が声を上げた。

「詳細は不明です。しかし先鋒の騎兵隊を率いていたボリス百人隊長が戦死されたとの報が…!」

「筆頭百人隊長のボリスが死んだと…? 一体何が…!?」

側近が声を震わせた。

「ククク、なるほど。確かに何か起こっておるようだな。」

ギュスターヴが側近たちを制するように口を開いた。

「で、殿下…?」

異様な空気を察した側近が恐る恐るギュスターヴを見た。

「皆の者慌てる出ない。我が主力を出動させ、全力を持って王都を奪還する。俺も出撃するぞ。」

「で、殿下自ら…?! た、確かに少し躓いているようですが…」

「殿下が出られなくとも、趨勢は我等に!」

ギュスターヴの言葉に、側近達は慌てて止めようとした。

「レオポルドは魔道に通じておる。奴が何等かの魔道を用いて王都に侵入した部隊の前進を阻んでおるに違いあるまい。それであれば我等も精鋭たる魔闘兵をもってこれに当たるのが当然と言うものだ。」

「それはそうでありますが…」

「クックック…。レオポルドめ、最後に楽しませてくれるようだ。伝令、アルエットにも伝えよ。我が主力と同道し城内へ潜入せよ、とな。」

「姫殿下も、でありますか!? しかし…」

側近が躊躇した。


「この戦いは元よりヘンドリクセン王家が始めたものだ。この忌わしき戦いは、我等王家の力を持ってして終わらせて見せよう。」

ギュスターヴが異様な笑みを浮かべた。




戦後、生き残ったギュスターヴ側近はこう語った。

「我は長年殿下に仕えて来た。だがこの時の殿下の顔は、実に形容し難い、恐ろしいものであった。」


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