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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第10章 王都決戦編
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第94話 悍ましきもの

ゥゥゥ…

オァァァァァ。

ここは王都バイゼル城の一角。

薄暗い部屋の中には呻き声が響いていた。

「バルストネットが落ちましたか。それでリオネル将軍の第2軍はどうなりました?」

ある男が黒いフードで顔を隠した人物から報告を受けていた。

「リオネル将軍は直属の兵およそ1000を率いてギュスターヴ殿下の魔闘兵部隊に突撃し、部隊は全滅したとの事です。残りの4000は撤退し、南東方向に敗走中です。」

「なるほど。リオネル将軍は主力を逃がす為に自ら捨て石になりましたか。さて…、もう一方の首尾はいかがでしたか?」

「そちらの方は上手くいっております。ご安心ください。ギュスターヴ殿下の軍は準備が出来次第、こちらへの侵攻を開始するでしょう。」

「分かりました。それではこちらも急がねばなりませんね。」

男は鉄格子の中を見た。

鉄格子の中に広がる部屋の中では、何人もの男達が呻き声を上げていた。

頭を掻きむしる者、冷たい床でのた打ち回っている者、生きているのかいないのかピクリとの動かない者もいた。

「フム、我やブレーズ殿の様にはいきませんか。」

「ええ。近衛と言うから期待していたのですが、簡単ではないようです。」

ブレーズはニヤリと笑った。

「ですが、まぁ、何とかなるでしょう。貴方は引き続き戦線の動向を探ってください。」

「畏まりました。」

フードの男は一礼すると影の中に消えていった。

「フフフ、貴方も意識を半分喰われている気がしますがね。クフフ。」

そう言うと再び鉄格子の中の者達を一瞥した。

彼らはブレーズによって行われた実験の犠牲者達だ。

彼らが苦しんでいる姿を見てもブレーズは意に介さない。

ブレーズは自らの目的の為に、今後もその悍ましい行為を続けていくだろう。




「戦局はかなり前進したようだな。」

ケヴィンが方々で収集した情報を元に俺達に戦局の説明をしてくれていた。

俺達も(冒険者ギルドなどで情報を集めることも出来るが)、それを正しく分析する知識が高くない。


「バルストネット周辺での会戦も終わったばかりだからギュスターヴの方も態勢を再編する時間を取るだろうが、そう遠くない時期にバイゼル城奪還への行動を開始するだろうな。」

それが開始されたら俺達は兄ギュスターヴと同行しなければいけなくなるわけか。

「ところでケヴィン。この、南東に逃げた第2軍の4000人ってどうするのかな?」

ここでアルフレッドが質問した。

「そうだな、あくまでも俺の考えだが、ギュスターヴはこの4000人については捨て置くんじゃないかな。指揮官だったリオネル将軍自ら1000人を率いてギュスターヴの軍を押し止め残りを逃がした。これが王都の方に逃げたのならともかく、王都とも戦線ともより遠い方向に逃げたわけだからな。」

「でもギュスターヴ殿下の軍が進軍した時、横を突かれる可能性は?」

「可能性としてはあるが、レオポルドがそのつもりであれば最初から一計を講じるはずだ。情報を見れば見る程、この第2軍はある意味の捨て石として派遣されたようにしか見えん。バルストネットの会戦が終わりこのタイミングまで中立を保っていた周辺諸侯も雪崩を打ってギュスターヴに味方し始めたと聞く。」

「つまりギュスターヴお兄様の方にかなり勢いが付いてきたってこと?」

俺が口を挟んだ。

「数の上ではな。だが俺としてはレオポルドの方も手をこまねいているとは思えねえ。用心は必要だろう。」

ケヴィンの言う通りだ。

武人肌のギュスターヴに対して、レオポルドは頭が切れるタイプだ。

そんな兄が何の対策をしてないとは思えない。

「とはいえ、今の所はギュスターヴがかなり有利だ。何か変わったことがあればすぐ知らせられるようにしよう。」

「うん、ありがとう。お願いね。」

俺は笑顔で答えた。




そして一月後、ついに最終決戦と言うべきバイゼル城奪還作戦が発動された。


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