第10話 風の魔導具
「これはこれは、酷くやられましたね。」
ブレーズがアルフレッドの怪我の様子を見ながら言った。
「しかし心配いりません。私が治癒魔法で治してあげましょう。さ、上着を脱いでください。」
「はい…」
アルフレッドが上着を抜いた。やはり蹴られたあたりにかなりの痣が出来ていた。
「聖なる光よ、わが手に宿り友なる者の傷を癒せ。治癒魔法!」
ブレーズの手が明るく輝いた。
少しずつアルフレッドの痣が小さくなっていく。
そして、完全に無くなった。
「あり・・・」
「ありがとうございます! ブレーズ先生!」
アルフレッドが言う前に、俺がブレーズにお礼を言った。
アルフレットはぽかーんとした表情になった。
「はいはい、どういたしまして。」
ブレーズは笑いながら言った。
「さて、アルフレッド君。君は誰にやられたんだね?」
「そ、それは…」
アルフレッドは口ごもった。
俺はアルフレッドを見た。アルフレッドの性格上自分からは言わないだろう。
「…たしかマリユスってのが、その中にいたよね」
俺はアルフレッドの顔を見て言った。
「はい…」
アルフレッドは仕方なくと言った感じで頷いた。
「マリユス様…ですか。たしか第二王子レオポルド様の従者で、上級貴族でしたな。」
ブレーズが腕を組んだ。
「アルフレッド君。3年前、姫様が巻き込まれた事故でぶつかってきた馬車も、レオポルド様の関係のものだったね?」
「…そうです。」
「事故の後、レオポルド様は姫様の見舞いとかは来たのかね?」
「はい。快復への祈祷とかで、何やら魔導士と一緒に見えられました。」
「なるほど…」
ブレーズが難しそうな顔になった。
「先生? どうしたんですか?」
「いえね、私の邪推かもしれませんが姫様の呪いの件、いや姫様が昏睡状態になられた件も含めて、第二王子レオポルド様が関係しているのでは無いかと思うのですよ。」
「第二王子って…、私の兄ですか?」
「はい。レオポルド様は権謀術数に長けた方です。そして…次の王位を狙っているとも噂されています。」
「王位を狙っているって、それが私に何か関係があるんですか…?」
「姫様も王族です。王位継承権では3位におられるのですよ。順当に行けば兄王子様方の順番を抜くことはありませんが、国王陛下がもし貴女に王位を継がせると言えば、継承権は繰り上がるのです。」
ブレーズは息をついた。
「私は魔素解析で姫様を見ましたが、魔力総量はかなりのものでした。私よりも遥かに多いでしょう。」
「わ、私がですか?」
「そうです。もし姫様が魔法を使いこなれせるようになれば、かなりの魔導士になれるはず。そうなればレオポルド様から見たら、自身を脅かす、そう考えたのかもしれない。」
「そんな事が本当にあるんですか…?」
「考えられない事ではありません。」
ブレーズはアルフレッドを見た。
「アルフレッド君の事も、警告を兼ねているのかもしれません。もちろん、私の考えすぎかもしれませんがね。」
ブレーズはそう言うと、机の中から短刀を取り出した。
「姫様にはこれを差し上げます。」
「これは…?」
「これは名はありませんが、風の精霊の加護を受けているものです。単純に武器としても使えますが、姫様に直接戦闘は向かない。ですが…」
ブレーズは短刀に魔力を込めると、短刀を中心に風が舞い始めた。
「魔力を込めることで風を起こすことが出来ます。使い方次第では何かに使えるかもしれません。」
ブレーズは俺に短刀を渡した。
「今のは魔法…ですか?」
「そうです。魔導具と言って、詠唱をしなくても魔法を使うことが出来るものです。是非お役立てください。」
「あ、ありがとうございます!」
俺は魔法を使うことは諦めかけていた。
でもこの魔導具をうまく使っていけば、俺にもアルフレッドを守る力が得られるかもしれない。
俺は強くうなずいた。
以上で第1章を終了と致します。
この後の話からは第2章として続きを作っていこうと思いますので、よろしくお願いいたします




