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ある日その時

作者: ウニセフ

    「なぁ~?」

    

    「なんだ?」

    

    「彼女ってどうやったらできんの?」

    

    「はぁ?」


日曜の昼すぎ、幼馴染の部屋で漫画を読んでダラダラと過ごしていた。

とくにすることもなく、いつものように何の変わり映えもないそんな日だ。


    「なんだ急に?」


と言ってみるが、今に始まったわけではない。こいつはいつも急に何か言い出す。

ある時なんか


    「甲子園に行こう」


しかもチャリで行こうと言い出したのが中学2年の冬だ。

高校野球真っ盛りでも、プロ野球がやってるわけでもない。本人自身野球をやってるわけでもない。

ならばなぜ?と思ったが

理由は単純明快だった。

読んでいた漫画が高校野球の漫画だったからだ。


ふと奴が持ってる本に目を向ける。

奴の手には妹から借りたらしい少女漫画がある。


    「それ読んで彼女がほしくなったのか?」

    

    「さっすが、おれの幼馴染~♪いい勘してるぜ」

    

    「だてに幼馴染やってねえからな、てかお前の場合わかりやすすぎる」


    「そうか?まぁなんでもいい、そ・れ・で!さっきの質問の答えやいかに!?」


    「はぁ・・・まぁ~なんだ?好きな子に告ってそれがオッケーだったら、彼女ができて、めでた

     しめでたしって感じだろ?」

    

    「なるほどね~」


    「・・・てか、本読んでたらそのぐらいわかるだろ」


    「ん?だって漫画だぜ?参考にならんでしょ!」


それを読んで彼女がどうとか言ってるのにそれはどうなんだ・・・


    「いや~、好きな子か~、好きな子ね~」


と、ぶつぶつつぶやいてる。

今思うと、こいつから恋バナなんて聞いたことない。

誰かと噂になってたりすることもない、幼稚園から高校までずっと一緒だが、タイプなんかも聞いたことない。

仲良さげに話してる女子もいたが、友達以上の感じはなかった。

気になるな・・・


     「お前ってさ、好きな子いんの、てか好きな子いたことあったか?」

     

直球である。まぁへんに遠まわしに言っても仕方ないしな


     「ん~、ないね~」


まぁそうだろう


     「好きなタイプとかは?」

  

     「ん~、面白い子?」


     「女子に面白いを求めるのか・・・」


     「だって、一緒にいて楽しくなかったらいやだろ!」


     「いや、まぁ、そうなんだが・・」


     「よし!今から面白い子をナンパしに行こう!」


     「行動早すぎだろ!!」






     「いや~、いるね~いるね~面白そうな子!」


幼馴染に連れられて、人通りの多い商店街へきたのだが

 

     「それ、女子に対して言う言葉じゃねえだろ。褒めてんのか、けなしてんのかわからんぞ」


     「もち!褒めてるっしょ!」


     「そうかい・・・」


もうここまで来たら何を言っても無駄だなと、諦めモードに入る俺。

せめて目立たないよう努力しよう。

    

     「そういえばお前・・・」


ナンパしたことあんの?と聞こうとして


     「そこのお姉さん、面白そうだね~」


いきなりナンパしている幼馴染がいた。しかもその声のかけ方は間違っているだろ。


     (あのばか!)


早足で駆け寄っていく


      「はぁ?ケンカ売ってんの?」


と苛立った声が聞こえる。気の強い女子に声をかけたようだ。


      「いやいや~、彼女がほしくてナンパしてます!」


      「直球すぎんだろ!」


気の強い女子が突っ込みを入れる。

遅れてその場に駆けつけた俺をみてにらんでくる。


      「何あんた、こいつの連れ?」


      「あぁ、うん、ごめんね。こいつ頭がちょっとあれなんだ」


      「あれとかひどいな幼馴染!」


頭があれな幼馴染をスルーして彼女を見る。年は同じぐらいだろう。しかもきれいだ。

幼馴染は何をもって面白いと判断したのかわからん。

あんまりじろじろ見るのも良くないと思い視線を外すと、もう一人いるのに気が付く。隠れるように立っている彼女はこちらを怖がるようにちらちら見ていた。

めちゃめちゃかわいい、ドストライクでど真ん中だ。

ついじっと見てしまう。そんな俺に気付かない幼馴染


     「君たち今暇~?よかったら俺たちとお茶しない?」


     「典型的なナンパだな!」


と鋭い突っ込みを入れる気の強い女子、なかなか様になっている。

その隣の彼女をちらっと見ると


     「ふふっ!っっっつ!」


さっきまで怖がっているかと思われた彼女は肩を揺らして笑いをこらえていた。


     「おっ、そんなに面白いかい?よし、君には俺のサイン色紙をプレゼントしよう」


     「誰もいらねえわそんなもん!」


     「っっつ、あはははは」


ついにこらえきれなくなったのか、声に出して笑う彼女。そんな彼女を見て気の強い女子は半ばあきれたようだ。


     「で、答えやいかに?」


     「そんなの!」


     「いいですよ~」


幼馴染の質問に断ろうとした気の強い女子に、かぶさるように答えた笑う彼女。 


     「だって楽しそうでしょ?」


笑う彼女には反対できないのか気の強い女子はそのまま溜息を吐く。 


     「あんたもそれでいいの?」


俺に向かって不機嫌に投げかけてくる。断る理由はない。


     「あぁ、うん」


     「んじゃ、れっつらごー」


ハイテンションで先を行く幼馴染と、くるりと振り返って 


     「どっかいいとこしらない?」


     「お前が誘ったんじゃねえのかよ!」


と、気の強い女子が突っ込む。もはや夫婦漫才してるようだ。

それを見て笑う彼女。


そんな光景を青い春だなとか思いながら歩く俺がいた。

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