私がここにいる理由(?視点)
矛盾してる部分があるかもしれません。
ちなみにお兄さん視点です。
私は数百年ほど昔、ある人間の少女とともにこの世界に来た。
その少女は私の主候補であり、悪しきものを倒すために修行する努力を失わない者だった。
だが少女がこの世界の身勝手な都合で召喚され、当時の帝と似た地位の男の息子と結婚することになった。
そして少女は修行をしなくなった。
立場上、常に舎人の者がいたからだろう。
少女は徐々に怠惰となった。
私が何を言っても修行をしない。
そんな彼女を私は疎ましくなり、放置するようになった。
ある日、私を呼び出した少女はとんでもないことを言った。
自分を守れ、と。
同じ世界から来たから、主従なのだからと。
私は怒り狂い、それまでの思いを全て吐き出した。
私が貴様を守る気は無い、と。
同じ世界から来たという事実など関係ない、主として認めた覚えは無いと。
そしてそのまま、その国を出て水晶のあるこの洞窟へと来た。
時折来る人間達は何故か私をここにある水晶を独り占めしようと考えている者だと思ってるのか、襲ってくるのでそいつらは全て殺した。
情報を得るために洞窟にいない時もあったので、その時に来た者は殺さないので運がいいのだなと思っている。
また、私が本来の姿で隠れている時の者もだ。
あれから数百年経った今日。
情報収集から帰ると、ちょうど男の悪魔と人間の少女がいた。
「レイン、武器ってどこらへんにあるの?」
「適当に歩くしかない」
武器?
そんなものあっただろうか?
二人の言葉に首を傾げたが、面白そうだ。
殺気を放ってみれば悪魔は少女を転移した。
「出てこい」
悪魔の言葉に素直に従い、姿を見せる。
人間に擬態した姿だが、まぁいいだろう。
悪魔は驚いた表情になり、そして警戒する。
同時に槍が現れ、構える。
悪魔の武器だろう、三メートルほどのそれの柄は漆黒。
一メートルはあるだろう刃は赤黒く、刀のようだ。
最近の人間の言葉は便利だな、単位が数えやすい。
「人間…じゃないな」
「当たりだ」
気を隠しているが分かったらしい。
にやりと笑えばますます警戒は強くなる。
だが私が気になるのは……。
悪魔の足元と手首から槍を氷でしっかりと覆い、固定する。
ぎょっとしてる悪魔の横を通る。
「てめ、待て!」
振り向こうとしたが失敗したのか、かなり不吉な音が聞こえた。
まぁ、どうでもいい。
あの人間の少女が気になる。
主候補だったあの少女とは微妙に違うが、似た気配を纏った存在。
異世界の気配。
それにあの少女は……面白いものを持っている。
抜け道などを使い、広い空間へと着く。
ここは私が気に入っている場所だ、広くて明るい。
そこの真ん中辺りに少女はいた。
背の真ん中までの髪は漆黒で、触ると手触りが良さそうだ。
身長は……少し低めだな、150に届くかどうか…。
「あの子は、元気かな……」
どこか悲しそうな声。
人間に擬態したまま、優しい笑みを浮かべる。
「誰のことだ?」
一瞬で警戒し、少女が私を見る。
表情を崩さぬまま驚いた。
顔立ちはまだ幼い部分があるが美しく、肌はぬけるように白い。
瞳は髪と同色だ。
細いがまだあまり女らしい体ではないが、そのまま成長しても十分に通用する美しさだ。
だが、私が驚いたのはそこじゃない。
その強い意思を持っている瞳だ。
この少女が欲しい……そう、思ってしまう。
解けぬ警戒に苦笑する。
「すまない、いきなり声をかけて。子供が一人でここにいるのが気になってな」
「……大人の連れがいるので大丈夫ですよ。その連れとはぐれただけなので」
「その連れが現れるまで、一緒にいるか?」
ああ、欲しいなぁ。
この少女を手に入れたい。
あの悪魔を殺せばいいのだろうか?
そうすれば私のものに出来るだろうか?
「そんな警戒されると悲しいんだが」
嘘偽りのない本音。
私は自分の目が冷たくなってるのに気づいた。
あの悪魔を殺せば良かったと、思ったから。
見つめあいのような睨みあいが続いていたが、不意に咆哮が聞こえた。
そちらを見ると水晶みたいなものがあちこちに埋め込まれた、狼のような生き物。
それが五匹。
たしか、クリスタルウルフと呼ばれるものだったな。
そう考えていると少女が私の前に立った。
思わず驚き、声をかける。
「おい……」
「逃げてください」
私に対しての時よりも警戒が強い。
ああ、この少女は本当に……。
クリスタルウルフどもが彼女に襲いかかった時。
「娘、お前は面白い人間だな」
本来の姿へと戻り、クリスタルウルフどもへと腕を振った。
……何故か若干、ヤンデレみたいになったお兄さん。
まだ互いに名前を知らない二人です。
まぁ、月華が警戒してるからなんですが…。
次回、もしかしたらお兄さんの正体と名前が判明するかも!?
…………戦闘シーン、上手く書けるかな…。