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十三番目の神将  作者: 夕風清涼
第一章夢か?
9/29

暗闇の先に

♪カサッ…カサッ…カサッ♪


足音が風神様の近くまで来ているようだ、風神様は全く足音に気が付いていない、強心臓なのか警戒心が無いのか疲れ果てているのか、完全に熟睡している。


(風神様…早く気が付いてよ!)


もし足音がいきなり騒がしくなったら、僕は風神様の袋で応戦するつもりでいた。


♪カサッ…カサッ…カサッ♪


《ゴクッ……》


僕は息を止めて音が聞こえる方向に袋を向けた…。


(来るならこい!)


真っ暗闇で視界はゼロだ!闇雲に風を放出するしか手段は無い…。


♪カサッ、カサッ…カサッ、カサッ♪


(????)


足音は寝ている風神様を通り過ぎたように聞こえた、もしかしてこの暗闇の中でも戦闘態勢をとっている僕の姿が見えているのか…。

もし、そうだとしたらかなり不利な状況だ…僕は神経を耳に集中して足音がする位置を模索していた。

(いきなり飛びかかられたら一巻の終わりだ…負けたら即!地獄行き…)


袋を持つ手がガタガタと情けなく震えている。


(こんな状況、誰だって怖いよな…)


『はぁ‥はぁ、はぁ』


口からの呼吸が荒くなっていく、心臓の鼓動が激しい!


♪カサッ、カサッ、カサッ‥♪


僕は音の方向に身構えた!


『ゴクッ‥すぐ近くだ‥さぁ来い!』


僕は暗闇の中から近寄って来る恐怖に異様な圧迫感に襲われていた、大声を出して喚き散らしたい気分だった。


♪カサッ‥カサッ‥‥‥‥♪


足音は僕のすぐ近くで止まった。


『そう恐れるでない、少年よ!』


暗闇から少し低い声が聞こえた。


『えっ‥だ、誰?』



声をかけてくるという事は僕らに対して敵意は無いのだろう、僕は必死に声のするほうに目を凝らした。


(ダメだ‥全然見えない‥くそっ!‥)


今まで物が見えている事を普通だと思っていた、それが一旦視覚を失うと身体は硬直し少しの音でも怯えてしまう‥視認すれば簡単な事でも視覚を失っては確認するまでにも時間がかかってしまう。

たとえそれを触れたとしても判断に迷う事もあるだろう‥。特に未知の世界においては、視覚を失うイコール死を意味しているに等しいと僕は感じた。


『誰なんですか?‥』


『そんなに暗闇が恐ろしいかね?‥少年よ…私には解る‥お前の呼吸‥焦りでの筋肉の硬直‥異常なまでの音を聞き入る耳の動き‥早き鼓動‥かなり恐怖感が現れてるな‥』


『あなたは…誰ですか?…どうして僕の状態が解るのです?』


『簡単な事だ、私がお前の気持ちになって、心を落ち着かせて考えればすぐに解る、どんな者でも視覚を失うと冷静になれないからな‥そこに大きな隙が生まれる‥』


(この声の主は暗闇を知り尽くしている‥闇を知っている者‥鬼か?‥)


僕は声の主に警戒した。


『今、お前は少し身構えたな‥どうやら私を警戒しているな、一気に上腕筋に血液が流れる音がしているぞ‥』


(ダメだ‥暗闇でも僕の考えや動きを全部見透かされている‥何者なんだ?)


『恐怖を押し殺して、眠っている風神を助けたいのか?‥少年よ‥自分を犠牲にしても良いのだな?‥』


僕は風神様と出会ってから沢山の事を学ばせてもらった、体育祭の時はこっそりと屋上から僕を応援してくれた、僕を思って涙を流してくれた!この旅の最初は僕の見守り役だった‥でも、今は僕の大切な友達だ!!


『僕は友達を見捨てたりしません!風神様は僕の友達だから!‥』


暗闇の中の者はしばらく声を出さなかった。


(‥襲うタイミングを狙っているのか‥)


僕は風神様の袋を強く握り締めた。


『この年齢で対したものよ‥帝釈天様のお考えが少し解るような気がする、私の名は《大暗黒天》その名の通り暗黒の神だが、そなたの世界では《大黒天》と言われておる』


『えっ!あの七福神…』


僕は神社やお祭りでよくイラストを見たりしていたから、大黒天様の事はよく知っていたけど、暗黒の神様までは知らなかった。



『そのようにも崇拝されておる、私がここに赴いたのは、天部に報告された内容の確認をする為に、私は気配を消してそなたらを歩いて探していた、修羅門を抜け修羅の鬼を駆逐したそなたらを見る為にな…』


『天部に報告……?』


『うむ‥ただ、そなたは考えずともよい…』


『はぁ……』


『この少年が…ふむ…青面金剛の報告に間違いないわ…ならば!…』


一体、何がどうなっているのかサッパリ僕は理解できずにいた。

こんな状態なのに僕の耳にはまだ風神様のいびきが聞こえていた。


『少年、風神が気になるか?風神はしばらく私が眠らせておいた!何かと騒がしいヤツなのでな‥』


(天部でも風神様は有名なんだ~‥)


『そうですか、良かった‥』


『少年よ、修羅門をくぐり抜けよく修羅の鬼を見抜き駆逐した!よって《大暗黒天》の真言を授ける!心して覚えよ!』


大暗黒天様は僕の額に手をかざした。



『オン・マカキャラヤ・ソワカ』


韋駄天様の真言のように、また自然と僕の頭に記憶された。


大暗黒天様はかざした手を戻し、こう僕に伝えた。


『少年よ、もし漆黒の闇に包まれたなら、我の真言を唱えよ!‥さすれば暗闇に迷う事はない、さらにこの先の試練を越えれるか、私も見ておくぞ‥』


♪カサッ‥カサッ‥カサッ………カサッ…………カサッ♪


次第に僕の前から足音が遠退いて行った。

風神様で始まり、青面金剛様、大暗黒天様と次々と僕の前に神様が現れる、一体僕の事で天部は何が起こっているのだろう?


『うっ、あ~っ!寝た寝た…わっ!おいら目が見えねー!どこだ?淳一!!おいらを置いとかないで~!どこ~?』


眠っていた風神様が目を覚ました、そういえば風神様が眠る前はまだ黄昏時で周りも見えていたから、何も見えない真夜中の今じゃ当然パニックになるだろう。


『風神様!今は真夜中で何も見えないんです!日が昇るまでの辛抱ですから、安心してそのまま動かないようにして下さい!』


僕は大声で風神様に答えた。


『その声は、淳ちゃん!?…ほんとに僕の目が変になったんじゃないんだね?だったら僕、淳ちゃんを信じて安心しちゃうよ!嘘だったら泣いちゃうからな~!』


『はい!大丈夫ですから、落ち着いて下さい‥』



さっきまで僕も泣きそうだったから風神様のパニックも解らないではなかったが、大暗黒天様が言っていた《騒がしい》はついつい僕も納得していた。


(新しい真言を教えてもらったけど、本当に闇夜で迷子にならないのかな~?)


『ねぇ!淳ちゃんてば~!お返事してよ~!真っ暗闇できょわい!…こら!アンポンタン!どこにいらっしゃるの~…』


『たぶん風神様の近くに居ますから、もう少し待って下さい!オン・マカキャラヤ・ソワカ…』


僕は両手を合掌し、真言を唱えた。


(あれ?…暗闇で目が慣れてきたのかな??)


だんだん僕の目は暗闇の中でパニックっている風神様の姿が見えてきた、風神様はいつもの空手家の構えをしながらキョロキョロとしていた。


(これが、大暗黒天様の力…だからあの時に僕の動きが大暗黒天様には解っていたんだ…凄い!)


まるで暗視カメラのように僕は周りの状況が見えるようになってきた、僕の左側には湖があり右側では風神様がパニックっているのもはっきり視認する事が出来た。

更にそれだけではなく、じっくりと風神様の姿を眺めていると風神様の体内に流れている血の動きまでも観察する事が出来た。


(凄い!…今、風神様の頭へと血液の流れが早くなっている……かなり怒ってるか、焦ってるんだな…)



『落ち着いて下さい風神様!今、僕が袋を持って湖に風を送って香りを防いでますから~!僕の声の場所が解りますか?』


『わかるぅ~!聞こえたぞ~!淳一~、わりぃな~‥ずっとやっててくれたの?後で褒美に《風神様フィギュア》をプレゼントしてやるぞ~』


ようやく風神様も落ち着いたようだった。


『風神様!そろそろ交代して下さい、僕も疲れちゃって…』


僕自身も安心したからか、疲れが出てきて少し眠りたかった。


『おう!じゃ淳一!こっちに袋を投げてくれ~!こっちだぞ~』


僕の目には暗闇の中にもかかわらず、両手を振っている風神様の姿が見えていた。


『いきますよ~!‥はいっ!』


僕は風神様に向かって袋を投げた、風神様がしっかりと掴んだ事を見届けてから僕は地面に倒れ込んだ、大暗黒天様の事は夜が明けた時に風神様に話そう‥。

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