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十三番目の神将  作者: 夕風清涼
第一章夢か?
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恨怒の湖と雑草

湖の香りの罠に引っかかってしまった僕達はこの修羅界の景色や空気、色彩までも疑わなければならなかった。

平成の日本に育ち、イジメられた事以外は親の庇護で何不自由なく生活していた僕にとって、疑う事は信用していない事であり、社会では何よりも信用が大切だと教えられていたが、この世界ではそれが通用しない。

疑う事について本当に僕は無知だった、この修羅界に詐欺師がいるならば僕は最高のカモだろう…一瞬に全てを盗られてたはずだ。

修羅界を経験して改めて僕が住んでいた日本の事を考えた、豊富な食料に毎日が平和で命の危険を常に考える必要もなく、同じ毎日を繰り返して生活している。

同じ事の繰り返し‥退屈な言葉かも知れないが、今の僕にはこれほど感謝出来る言葉はなかった。


以前、何かのニュース番組で大学教授が言っていた言葉を僕は思い出した。


《日本人は当たり前の生活に慣れすぎている、それを失った時日本人は必ず後悔をするが、失う事を前もって考えてる者は少ない!その事が起こるまでは‥当たり前な生活に感謝もしない》


本当に僕もそうだった、こんな状況にいるからこそ、この言葉の意味が深く理解出来た。

当たり前に学校や会社に行き、毎日三度の食事をとり、雨露をしのげる家があって暖かい布団で眠る。

僕もこの生活は未来まで何ら変わりなく訪れると思っていた、そんな未来の保証なんてありもしないのに、未来の生活まで疑う事もしなかった。


なぜだろう‥僕は急に笑いそうになっていた。


(日本人‥か‥‥)


『なぁ!!淳一!‥なに格好つけて突っ立ってんだ?‥鼻の穴に雑草突っ込んで、前のウィンナーをプランプランさせて~‥おいら笑いそう~♪』


顔面に腰巻きを巻き、まるで西部劇に出てくる強盗ような姿で風神様は座って僕の下半身を眺めていた。


『わっ!どこ見てるんですか!?しょうがないでしょ!腰巻き風神様のマスクにしたんですから~‥』


僕は両手で前を隠した。


『そいつは悪かったな~!しかし、この湖から離れるまでは鼻を塞いでおかないとな‥かと言って、もう腰巻きは無いし‥あっ!そうでぃ!淳一、ちょいとこの袋を持て!』


風神様はいつも持っている袋を僕に手渡した。


『どうするんです?この袋…』


『淳一!しばらくこの袋を使って、湖から漂ってくる匂いを吹き飛ばしておいてくんな!』


『えっ!僕使い方知りませんよ~!』


『心の中で《風よ吹け》と唱えればいいんだ!簡単だろ?その間においらが雑草を使って、おめえのプチソーセージを隠す物を作ってやるから!』


『はぁ……』


『ほんじゃ!!頼むぜ淳一~!』


まるで楽しいお花摘みのように風神様は雑草を抜き始めた。


『雑草使うなんて大丈夫かな?…』


とりあえず僕は風神様に言われた通り袋の口元を湖に向けた


《風よ!吹け!》


ビューー!ビューー!


まるで消防士が火事現場に向かって放水しているような勢いで、袋から風が吹き出した。


『うっわ!凄い勢い!』


白い袋からは次々と風が吹き出し、僕は扇風機が首を振っているような動きで湖からの香りを阻止していた。

風神様は雑草を摘み終えて、歌を歌いながら座り込んで雑草を編んでいる。


『♪プランプランの~♪淳一のた~め~に~♪風神ちゃんは~♪内職だ~♪お給料は~♪もらえない~♪』


『どんな歌ですか!』


風の吹き出る負荷で袋を持つ手がしびれくる、僕はよく消防署の前を通る時に訓練をしている消防士さんを見かけていた、汗まみれになってマラソンをしたり、重そうなホースを担いで非常階段を駆け上がる姿に感心していた。


(こんなにハードなら普段鍛えておかないと無理だな…)


命懸けで火事現場で活躍する消防士さんを改めて僕は尊敬した。


(風神様…まだ出来上がらないのかな…)


普段鍛えてない僕はギブアップ寸前だった。


『風神様~……まだですか~~~?』

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