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十三番目の神将  作者: 夕風清涼
第一章夢か?
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修羅の試練開始!

修羅の門より遥か北方、須弥山…

この山に阿修羅王の居城があり、この世界の全てを見渡していた。

阿修羅王が玉座に座り、この世界の微かな大気の変調を感じとっていた。


(この感じ……異界の者か……なるほど…)


王の間に城の守備を任せられている親衛隊長が現れ、阿修羅王の前に片膝を着いた。


『申し上げます、先ほど修羅門の警備隊により、異界の者2名が門に向かっているとの事です!迎撃いたしますか?』


玉座に座り、右手を頬に当てながら阿修羅王は答える。


『天部におる娘、舎脂シャチーからすでに書簡が来ておる、まだ子供であろう‥捨ておけ!どうせココには来れぬわ!己の怒りに負け、修羅共に切り刻まれよう‥』


『それが‥人間だけではなく、鬼神も付き添っております!おそらく、あの風貌は風神かと‥』


『何‥‥あの鬼神か‥帝釈天め!‥こしゃくな事をやりおるわ!‥ならば小僧の力量!しかと拝見いたそう‥親衛隊長!』


不適な笑みを浮かべ阿修羅王は親衛隊長に勅命を下す。


『修羅門付近に最近この世界に墜とされた修羅共を配置せよ!数は100でよい!』


『心得ました!』


親衛隊長は立ち上がり王の間から出て行った。


(小僧が修羅界にな…かたはら痛いわ!あの小僧が負けたと同時に、帝釈天よ!この行いは宣戦布告とみなし、わし自ら軍を率いて天部に攻め行ってやるわ!)


『ふっふふふふ』


阿修羅王の笑い声が王の間に響き渡った。


『はぁ…はぁ…風神様…なかなか門まで着かないですね…』


門に向かい歩き出してからかなりの時間が経ったはずだ、岩だらけの道のせいか体力もかなり消耗していた。


『はぁ、はぁ、はぁ…んなもん知るか!最近飛んでばかりで歩いてなかったから、運動不足だわ‥』


『はぁ、はぁ…門まで飛んでくれたら、良かったのに…はぁ、はぁ…』


『アンポンタン!あれ以上おいらがおめぇをおぶってたら、どこで地獄に墜とされるか、解ったもんじゃねぇ!安全第一だ!』



『はぁ、はぁ…風神様!ちょっと休憩しましょう…はぁ、はぁ』


『はぁ…はぁ、おめぇにしちゃナイスなアイデアだぜ‥褒美に後でおいらのサイン色紙をプレゼントしてやる…』


僕達は小高い岩山を登った辺りで休息した、辺りは昼なのか夜なのか解らない風景が目に入る、空はまるでこれから夕立になりそうなぶ厚い雲に覆われていた。


『凄い風景ですね…黒い雲の上には赤い空…それに鉄っぽい臭い…』


『淳一、あの門の右側から更に向こうの空を見てみな!ほら、あそこだ!』


風神様が指差した方向には真っ暗で不気味な闇が見えた、僕はまだこちらのほうが明るいように感じられた。


『急にあそこだけ暗闇になっていますね…地獄の入り口ですか?…』


『違うわ!スットコドッコイ!あの闇の界隈には修羅王の盟友、夜叉王がいるんだ!』


『夜叉王……』


『あぁ!夜叉と修羅は何度も天部に戦をしかけてきてな、そりゃあもうその強さはハンパねぇよ!このおいらでも、勝てるかどうか解らねー!』


『ふ~~ん‥』


『あっ!その目!おいらを疑ってる!ぜ~ったい疑ってる!神様を疑ってる~』


『いえ、そこまでは…疑ってませんから…』




『い~や!おめぇはストロングなおいらを知らねーんだ!…風神雷神は恐怖の代名詞なんだぜ!おいら超~傷ついた…』


『すみません、すみません!じゃ、期待してますから機会があれば、風神様の強くてカッコイイお姿を見せて下さい!』


僕は焦りながら風神様に嘆願した。


『…ほんとに見たい?……』


『はい!ぜひとも!』


『しょ~がねぇな~!!ならば、これからはおいらの強~いところをしっかり見て学びなさい!!わはははは』


いきなり元気になった風神様を見つめる僕はまだ疲れが取れそうになかった…。


僕は修羅の世界についてもう少し風神様に聞いてみた。


『風神様、僕らの世界では地獄は有名なんですが、修羅界ってあまり聞いた事がなかったです!』


『まぁ、そうだろな~!昔は修羅界ってなかったからな、簡単に言うと修羅王は元々は立派な神様だった!それが色々あって帝釈天様に反旗をひるがしちまってな、何度も何度も天部界と戦っていたんだ!でもよ、ある戦いの時に帝釈天様の軍が不利になって後退する時にな、蟻の大群に遭遇したのよ!そこでお優しい帝釈天様は蟻を踏み殺してはならぬと軍の後退を止めた!それを見ていた阿修羅王は何故か進軍をせずに帰っちまった…。

で、その事が天部界に広がってな、新しい世界《修羅界》を作って修羅王一族を追放したって訳だ』


『そうだったんですか…神様の世界でも色々あるんですね…』


『戦えば恨みが生まれ、また戦う…戦争は良くねぇ!…人間界はまだ戦争してやがる!益々、修羅王が喜ぶだけなのにな!さて、淳一!行くか!』


『はい…』


僕らの世界ではどこかで必ず戦争をしている。

神様は遥か昔より戦争を経験し、戦争の悲惨さ苦しさを理解されていたと思うと、争ってばかりしている人間って一体何なんだろうと考えていた。

僕達はまた修羅門に向かって、岩だらけの道を歩き始めた。


『そう言えば風神様、さっきから阿修羅王の事を修羅王と言っていましたね…』


歩き出してすぐにもかかわらずに風神様は息を切らしていた。


『はぁ、はぁ‥あのな、《阿》てのはおめぇらの世界で言うと、小さい子供とかに○○ちゃんとか付けて言うだろ?《阿》とはそう言う意味だ!あんな恐ろしい修羅王に《ちゃん》なんて言えねーよ!でも、おいらには《阿風神》って言ってもよいぞ!』


『なんか言いにくいですから、風神様でいいです‥』


どれだけ歩いたのだろう、僕が感じていた時間だけでも三時間は経っているはずだ。

一歩、一歩…僕達は修羅門に近づいていくにつれ、門の大きさに圧倒されていった。


『はぁ、はぁ…か…かなり大きな門みたいですね……』


『そうだな!それよりも、おいら…クタクタだぜ……』


『はぁ、はぁ…それより、僕思い出した事があるんですけど……』


『なんだ?…はぁ、はぁ…おいら、あまり長く話せねーぜ!…はぁ、はぁ…』


『青面金剛様…たしか…門の中に入ってからは、僕に触れるなと言ってましたよね…はぁ、はぁ、はぁ…』


『……………』


風神様の足が止まった。


『そんな事…言ってた気がする……だぁぁぁぁぁ--!!何やってたんだ俺達は!!!何でもっと早く言わねえんだ!アンポンタン!』


頭を抱えてその場で転がり回りながら風神様は悔しがっている。


『だって、風神様が安全第一とか言うし、僕も初めての世界だから気が動転していたから…』



『返せ!おいらの貴重な時間と消費したカロリーと、汗と涙と体力を~!!』


風神様は座り込み、石を掴んでは前に投げていた。


『風神様、これも一つの試練だと思って行きましょう…ほら、もう修羅門は目の前ですから!』


どうして僕が風神様を慰めなければいけないのかと思いながらも、心の中では風神様が付き添ってくれた事に感謝していた。

もし、この世界に僕1人だったとしたら、こんなに気分が落ち着いてなかっただろうし、恐怖で一歩も進めなかったに違いないのだ。


『僕、本当に風神様が居てくれて心強いんですよ、もし僕自身が負けて消える時は最後まで看取って下さい…』


風神様は何も言わずに地面を見つめていた。


『なぁ…淳一よ…転生っ知ってっか?…』


『??転生…?』


『その反応じゃ知らねーみたいだな…簡単に言うと、死んでまた生き返る事でぃ…』


『なんか聞いた事ありますよ!』


『そうかい!ただ、次に生まれ変わるのはまた人間だと思っていたら大間違いだぜ!鳥かも知れねー、虫かも知れねー!それは現世の行いで決まるんでぃ‥』


『はい‥‥‥』


風神様が地面を見つめながら真面目な顔で語り始めた。


『以前、おいら無間地獄の話しをしたろ?当然覚えてるよな?』


『無論です!真っ暗闇の世界に墜ちると‥』


僕がそう答えると風神様は首を横に振った。


『それは間違いではねぇんだが‥真っ暗闇は無間地獄に行くための落とし穴の事だ‥その落とし穴を抜けるまでに人間界の時間で二千年かかる‥そう!二千年墜ち続ける‥』


『!!!それが地獄の責め苦ですか?』


僕は墜ちていく恐怖を味合わせる地獄だと思った。


『……違う……』


僕はてっきりいつもの《アンポンタン!》と言われるかと思っていたけど、風神様は顔の表情を全く変えずに話しを続けた。


『その暗闇を抜けてからが、本当の地獄の始まりだ…無間地獄と言っても一カ所だけじゃねぇんだ…地下に何層もの地獄があってな、一番軽いのが《想地獄》…しかし、そこに墜ちて転生するまでには1兆6653億年かかる…一番最悪な《大焦熱地獄》の一つ上の層が《大叫喚地獄》…そこに墜ちたら転生までに5京4568兆9600億年かかるんでぃ…』


『!!!!!』


僕は途方もない数字に驚愕した、それだけの年数を地獄で責め苦を受けなければならない事に…


『もし、大焦熱地獄に墜ちてしまったら…もう数字では言えねー…すまねぇ…淳一よ…もっと早くおいらが言ってたら…』


地面を見つめている風神様の目から涙が溢れていた。

(風神様…)


僕は修羅界の恐怖と自分に負けると墜とされる無間地獄の世界を聞き、膝から崩れた…まだ何も修羅界の修行が始まっていないのに…。


《絶望》の二文字が僕の心と身体を支配した、もはや帰る事も出来ない‥逃げる事も出来ない‥無論、死ぬ事も‥全てが自分に負けた事になる‥。


僕の残された道は2つしかない‥地獄に行くか、修行を完了するか‥。


『風神様、僕は自ら進んで修行を願い出ました、だから風神様は何も悪くありませんよ!ありがとうございます‥風神様』


前に進むしかない!自分が選んだ道だから、本当は泣いてでも元の世界に帰りたかった‥怖い‥未知の世界に進む事の重圧‥不安に押し潰されそうだった、でも止まっていても何も解決はしない!前に歩くしかないんだ‥。


『行きましょう、風神様‥修羅門へ!』


口を開けて呆然と風神様は僕を見つめた。


『淳一‥‥』


風神様は目をこすり立ち上がった、風神様の視線は修羅門に向いていた。


『うぉし!淳一!おめぇが修行を完了するか、地獄に墜ちるか、おいらが最後まで見届けてやらぁ~』


風神様は両手で顔を叩き、右腕を振り回して気合いを入れた。



『よぉし!淳一!おいらの背中に乗れ!ぶっ飛んでやるぜ!』


風神様が前屈みになり僕を待ち受ける、僕は風神様の背中に飛び乗った!


『よっしゃ~!いくぜ~!』


僕はギュッと目を瞑った、ふわっと身体が浮いた感じがしたと同時に、一瞬後ろに飛ばされそうになるほどの風圧が僕を襲った、強い風圧は鼻の穴に空気の壁を作り呼吸が出来ない。


ビューーーー!

ババッ…ババッ…


空気を切り裂くような音が聞こえる。

数秒後、次第に僕の耳から激しい音がおさまってきた。



以前テレビでやっていた、宇宙飛行士がフワフワと月面を歩いているシーンと同じように、僕の身体もフワリとしながら地面に着地した。


『さぁ、淳一!修羅門に到着したぜ!』


僕は風神様の背中を降りてゆっくりと目を開けた。


『こ…これが…修羅の門……』


まるでグランドキャニオンの峡谷の間に高層ビルが挟まっているように見えた、その圧倒的な雰囲気は僕達の歩みを拒むかのように大きな鉄の門が閉じられていた。

おそらく門の高さは200mはあるだろう…幅だけでも50mはありそうだ。

『凄いですね…』


『でけぇ…こんなんじゃ、誰もここに墜ちた奴は逃げれねぇな…』


この大きな鉄の門をどうやって開ければいいのか、僕は悩んだ。

とりあえず僕は門に向かい大きな声で叫んでみた!


『ごめんくださ~い!どなたかいますか?』


ポカッ!!


風神様のげんこつが飛んできた!


『痛っ!!』


『このアンポンタン!ビールと洗剤サービスしますから、3ヶ月だけうちの新聞お願いしますよ!とは違うんだぞ~!』


『じゃ…どうすれば…う~ん…風神様は知ってますか?』


『知らん!!』


僕は何か方法はないかと門をゆっくり眺めた。

(????)


僕は門に刻まれている文字を見つけた。


『風神様!ここに何か書いてますよ…』


僕は風神様を呼び門に刻まれた文字を指差した。


『‥ん‥どれどれ‥《小さな川はやがて大きな川となり、川の水は夕陽に染まる、夕陽の水は固い口を開く》‥なんじゃこりゃ?…』


『風神様!この文字が門を開けるヒントなんですよ!…小さな川か……』


風神様は腕組みをしながら、うろうろと歩いていた。


『ちょいと淳一!おいら上に飛んで、辺りに川があるか探ってみるぜ!』


『はい、お願いします!』


ビューー…


風神様は空へと飛び上がった。

僕は文字を見つめこの言葉について考えていた。


(小さな川が大きな川に…)


~須弥山の居城~


王の間に親衛隊長が報告に現れた。


『報告します!侵入者は修羅門に到着した模様、現在は門の前におります。』


天守閣より外の景色を眺めていた阿修羅王が、笑みを浮かべて親衛隊長に答える。


『まずは小手調べといくか‥人間とはまず自分以外の事から考えるからな!その考えをなくさない限り、あの門は開かぬ‥』


阿修羅王は修羅の門に向かって笑い続けていた。


『しかし、陛下‥もしあの門を抜けられたら、1500年振りに人間を入れる事になります‥しかも今回は風神が付いております、油断なさらぬように‥』


片膝を着き神妙な顔で親衛隊長は言葉を返した。


『解っておるわ!‥それにしても、帝釈天め!‥あのような霊力の無い小僧に何を期待しておるのだ‥』


阿修羅王は淳一達よりも帝釈天の思惑が気になっていた。


~再び修羅門~


ビューーーッ!


しばらくして風神様は帰ってきた。

僕は期待しながら風神様に向かって走った。


『お帰りなさい、風神様!川はありましたか?』


『いや…小さい川ならあったんだけどよ…どれだけ先を飛んでも大河なんてありゃしねぇ…ほら、とりあえず水を汲んできたから飲みな!』


風神様は革袋製の水筒を僕に渡してくれた、僕はこの世界にたどり着いて以来、一滴も水を飲んでいなかったので、一気に飲み干してしまった。その水は鉄分を含んだ温泉のような味がしたが、とりあえずは喉を潤す事はできた。



『ここの水、鉄分が多いですね…あまり美味しくないですね~』


『そりゃそうだろうな…この赤い地面は戦いで流れた血を吸い込んでいるから、赤いんだ…そんな所の川なんだから血の味がしても不思議ではねぇだろ~…』


『…血!!』


少し僕の胸が不快感に襲われた…。


『吐くなよ!!干からびたくなかったら、こんな水でも慣れるしかないんだからな!』


風神様は門の文字を見ながら冷たく言い放った。


僕は水の事を忘れる為に、もう一度門の文字に考えを集中した、川は見つかったがどうも門の文字と合致しない、何よりも大きな川が見つからなかったのが、更に僕の頭を混乱させていた。


『あ~っ!畜生!あの文字はイタズラじゃねぇか??おいらが門を飛び越えてやるぜ!』


風神様が門の遥か上を見つめた。


『よし!風神ちゃん!いっきま~す!!シュワッチ!!!』


バヒューーーン!


両手を突き上げ風神様は空へと飛んだ、しかしわずか数秒後に風神様は戻ってきてしまった。

おでこに大きなタンコブを作って…。


『あいたたたた…』


『大丈夫ですか?…風神様…大きなタンコブ出来ていますよ…』


『ダメだ!門の上は結界が張られていて飛び越えられねぇ…やはり、門をくぐるしかねぇよ…イタタ…淳一!おでこ血出てない?血?見て見て!』


(血?‥地面‥血の味‥血の色の空‥)


『そうか!さすが凄いですね!!風神様!文字の謎が解りましたよ!』


『へ‥?‥謎?‥』


『はい、川とは血管の事なんです!静脈と動脈、小さい川と大きい川!だから夕陽に染まるは赤いを意味し、血の事なんです!』


『うん‥‥』


『ありがとうございます!風神様!僕に答えを出させるために、さり気なく僕にヒントを教えてくれたんですね!』


『えっ!?‥あっ…ま、まぁな~!はっはっはっはっ!このインテリジェンスな風神様にかかりゃ、ちょろいもんだぜ~!!淳一よ!これからはおいらの事を《マスター風神様》と呼ぶがよいぞ!』


謎は解けた‥しかし、門を開ける為には僕の血を使わなければならない。


(この門を開けるには僕の血が必要なんだ…どうしよう…指を少し切るくらいでいいのかな…でも、痛いし…)


僕は門の前で躊躇していた、進んで自分から血を出す事なんて…。


『淳一よ!おめぇ、ビビってるだろ?だけどよ、おめぇさん1回飛び降り自殺しようとしたんだぜ!だったら血出すくらい大丈夫だろ?』


お気楽に風神様は門を叩きながら、僕をけしかける。


『そう言われても、刃物なんか持ってないですし…』


『アンポンタンだな!ほれ、周りを見ろよ!先の尖った石が沢山あるじゃねぇか!あっ!これなんかいいぞ~』


風神様は彫刻刀のような先の細い石を拾い、僕に渡した。


『ほれ、こいつは切れそうだ~!ビシッと決めてくれよ~!淳一!』


見るからにこの石は切れそうだった‥

僕は手のひらを大きく広げ、石の先端部を近づけた。


『‥‥ゴクッ‥』


僕は生唾を飲み、手のひらを見つめる。


『淳一~!ファイト!♪レッツゴー淳一!ゴー!ゴー!ゴー!♪』


応援してるのか馬鹿にしてるのか解らない風神様の態度に、僕はムカついた勢いで石を手のひらに刺した!


グサッ!!!


『ウグッ…グッ…』


手のひらに刺した石を3センチほど動かして傷口を広げた、痛みから指が痺れていく、

ポタポタと手の甲を伝い血が流れ落ちて地面の色と同化していった。


『お~っ!痛そう~!淳一、我慢だぞ~!頑張った褒美においらのブロマイドをプレゼントしてやる!』


僕は石を放し、手を擦り合わせて手のひらに血を塗った。


『はあ…はぁ…風神様…僕のすぐ後ろに付いてきて下さいよ…』


ザクッ…ザクッ、ザクッと手のひらからの強烈な痛みが続く、僕はその痛みを無視するかのように両手を門に押し当て、力を込めて前に押した!


♪ギッ…ギッ…ギギッ…ギギッ…♪


あの巨大な門がゆっくりと動き始めた。


『おぉっ!すげ~ぜ!淳一!…門が動いた!!!』


♪ギギッ…ギッ…ギィ---♪


とても不思議だった、普通の人間の力ではこんな巨大な門など動かせるわけがないのに、まるで回転ドアのように簡単に押せた。


『風神様!出来るだけ僕に触れないように近づいて下さい!そして一緒に門を抜けましょう!』


『ガッテン承知!頼むぜ!淳一~』


ようやく僕と風神様が抜けれるほどに門が開いた!


『はぁ、はぁ、いきますよ!風神様!せぇので、僕は左側に飛びますから風神様は右側に飛んで下さい!』


『あいよ!淳一君カッコイイ~!』


『いきます!せぇの~!』


勢いよく僕達は門の中に飛び込んだ!

修羅門は僕の手が離れた瞬間にすぐに閉じてしまった。

飛び込んだ後、僕はしばらく起き上がる事が出来ずにうつ伏せになっていた。


『淳一…おい!淳一…』


風神様の声がする、どうやら風神様も無事に門を抜けられたようだ。


『…風神様…良かった…風神様も門を抜けられて…』


『良かったのか…悪かったのか…淳一…おいら達…かなり運悪いかも…』


僕は身体を起こし、周りに目をやった。


『本当に‥運がないかも‥』


無数の赤い目が僕達を囲い睨みつけていた。

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