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十三番目の神将  作者: 夕風清涼
第一章夢か?
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凍てつく白狼

(何てデカい狼なんだ!!熊じゃん!!)


『淳一先生~っ!おいらの右側から足音が聞こえてきていますが、そよ風のイタズラでしょうか~?』


うつ伏せになりながら風神様が叫んでいる。


『いえ!…風神様は絶対動かないで下さいよ!絶対に!』


『危険なんだな!…それも超~ヤバいくらいの~!淳一先生っ、僕との約束わすれないでね~!』


何とか風神様を落ち着かしたが、事態は全く好転していない。

相手は猛獣‥いや、化け物だ‥身体中冷気を帯びている。

辺りは草原と湖しかない、隠れる場所すらも見当たらない。

風神様は横になったままだ‥どうする?一撃でもくらえば一環の終わりだ。


(考えろ‥考えろ‥)


ゆっくりと冷たい気が僕達に流れて来ている。


『風神様、そのままゆっくりと身体を僕の声をする方向にずらして来て下さい、大丈夫!僕には風神様の姿が見えていますから…』


『わかった!…』


風神様はうつ伏せのままゆっくりと僕の方へ移動してくる。

一瞬、風神様の動いた音に狼は近づくのを止めた。


(風神様だけではなく、僕の気配にも気づいたのか…)


もうしばらく動かないでくれ…そうすれば風神様は僕の近くに来れる…。

ゆっくりと風神様は僕の所に寄ってくる。


グルルルルッ~!


狼がうなり声を出し始めた。


『淳一先生っ!‥なんか聞こえますけど‥おいらの腹の音じゃないよな‥間違いなく!』


風神様の動きが早くなり、僕に近づいてくる。

風神様が来てもその後はどうする?

相手は狼‥ゲームのようにまともに闘えるほど現実は甘くない‥ゲームですら最初弱い主人公にはそれなりの敵しか出てこないはず、でも鎧も剣も持っていない僕の前にはいきなりボスキャラ級が現れている‥。


(ほんと‥人生不公平だよな‥)


『前門に狼‥後門には不気味な湖か…』


僕は近づいてくる狼を更に透視した。


(この狼…血が凍っている…全然血液が流れていない…血が出ないのか…それとも…)


ようやく風神様は僕の横を通り抜けた。


『淳一…何が来てるんだ?…おいらにはかなり冷たく空気が流れてきたのがわかったぜ…』


『えぇ…血が凍ったとてつもない大きさの白狼が来ています…襲ってくるのは時間の問題でしょう…』


風神様は息を呑んだ。


『北の白狼っていや‥聞いた事あるぜ‥口から冷気を吐いて相手を凍らす、須弥山の番犬‥いや番狼だ‥』


白狼は全体に冷たいオーラをまとい、ゆっくりと牙を向き僕達を威嚇している。

もし、白狼が飛びかかってきたら真っ先に身動きが取れない風神様が狙われる、いずれにしても僕が白狼を惹き付けなければ‥。

またしても心臓が破裂しそうなほど激しく鼓動し呼吸が苦しくなってくる。


グルルルルル~ッ!


白狼はやや前屈みになりいつでも飛びかかれる体勢でジリジリと僕達に迫ってきた。


(どうする?‥風神様を置いては逃げられない‥考えろ!)


グルルルルルッ!


『風神様!そのまま真っ直ぐ湖に入って肩まで浸かっていて下さい!』


『100数えたら出ていいの?』


『お風呂じゃないですから!相手は氷の狼です、もしかしたら水には弱いかも‥それとこれを!!』


僕は風神様に袋を投げ渡した。



『淳一!おめぇはどうするつもりだ?…』


風神様は袋の口元を湖に向けながら水の中へと入っていく。


(とりあえず風神様はこれで大丈夫だろう…もし、僕に何かあってもこれで風神様は助かる…)


『淳一~!もし、おめぇに何かあっても、おいら…おいら…絶対!おめぇを決して忘れるまで忘れないぞ~!!』


手を振りながら風神様は更に水の中に入っていった。


(意味わからんし…)


『げっ!何だこの水は~…甘しょっぱいじゃねぇか~…やっぱり気持ち悪い湖だぜ~』


どうやら風神様は大きな声を出した時に口の中に湖の水が入ったようだった。


(全く…何してるんだか…えっ!?…甘しょっぱい……もしかして…)


僕はすぐ近くに来ている白狼を見据えながら身構えた。

白狼は牙を向き身体を低くした。


(来る!!)


僕は韋駄天様の御真言を唱えた!!

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