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第一話 ソロモン七十二柱が一人

初投稿です。お見苦しい点などあるかもしれませんが温かい目で見守ってやってください。ジャンルは近代ファンタジー? です

 突然かもしれないが俺はロリコンではない。中学生ならまだしも幼女にもみたない赤ちゃんに欲情するほど俺は落ちぶれちゃいないはず。もう一度言うが俺はロリコンではない、健全な男子高校生だ。多少は女の子に興味はあるが、幼女以下に興味はない。それだけは断言しよう。


 いや断言したい。今、俺の部屋そして俺の目の前には、五十センチにも満たない小さな女の子がいる。先に謝っておく、こいつ異常にかわいい。


 毛は赤くツインドリルな髪型で目が言葉では表せないくらいにクリクリしている。少なくとも、俺の近くにこんなクリクリした目の女の子はいない。しかも五十にみたない背丈であるはずなのにその動きは普通の大人と変わらない、きびきびとした動きを見せた。


 もう一度言いたい。俺はロリコンではないと。いや、むしろこれはロリコンより酷いのか?


 確かに俺は女の子に縁がなかった。現在高校2年生であるこの俺は生まれてこのかた十七年彼女が一度もできなかった。別に容姿が悪いわけではないと思っている。いや思いたい。ただ縁がなかっただけなんだと。でもだからといってこんな小さい子をここまでリアルに妄想してしまうと、自分の認識を改めなければならないかもしれない。俺はロリコン以上にロリコンなのかもしれない・・・・・・と。


 ちょっと自己嫌悪。俺も相当たまってるのかもしれない。我ながら下品なことをかんがえてしまった。

 幼女以下のそいつは俺の部屋の中をてくてくと歩き回っている。その様子をじっと眺めているといきなりそいつはピタッと動きを止めた。


「そんな汚らわしい目で見るでない、我が美しいのは百も承知だが、かような目で見られてはさすがに軽蔑するぞ」


 ・・・・・・・・・・・・


「しゃべった。妄想がしゃべった! ってことはこんなことを俺はこんな幼女に言ってほしかったのか? 末期だな・・・・・・」


 そしてふっと俺が笑うと目の前の幼女がむっと頬を膨らます。リスみたいなホッペとはこのことかと俺は初めて関心した。きっと同年代くらいの女の子がこれをやったらただのブリッコで俺はきっとイラッときたに違いない。だがコイツの場合は微笑ましい。


「なんじゃ妄想とは! 我のことを言っておるのかッ? まったくこれだから人間とは関わりたくなかったのじゃ」


 プリプリと一人で怒っている姿を見ているととても和んだ俺は、静かにベットに横たわる。


 幼女が俺にとびかかろうとしているのを確認しながら俺はそっと目を閉じた。

 

(寝ればきっとこんな妄想も消えるだろう。今日はちょっと疲れていただけだ。ゆっくり休んで明日にそなえよう)


「って、寝るでな~い!」


 その声とともに激しい衝突音が俺のわき腹から聞こえてきた。気になってみてみると妄想幼女の足が俺のわき腹に食い込んでいる。


「っお、ぐぉいってぇ! 俺のわき腹がッ。なにすんだてめぇ!」


「お主が我を無視して寝ようとするからじゃろうが、天罰じゃ」


天罰だとッ?


「落ち着け、平静を保て、そして考えろ。俺は今確かにこの妄想に蹴られた。わき腹にも、にぶい痛みがズキズキと響いている。妄想に物質的質量はないはず。ならどうして俺のわき腹に足が食い込んでいた?まさかこいつ、妄想じゃないだと。じゃ何者なんだ、こんなちんまい人間が大人と同じように動けるはずがない。となるとこいつッ! 妖怪か!」


「違うわ!」


 目の前のちんまいのは地団駄踏んでいた。


「違うのか、ってかなぜ俺の心が読まれている?」


「普通にしゃべっておったではないか!」


 まぁいい問題は俺の心の声が聞こえたとか聞こえてないとかではない。コイツが何者なのかって所だ。こいつがもし本当の妖怪だったとしても別に恐怖は感じないし、その可能性が高いだろう。なぜなら五十に満たない背丈のガキンチョがツインドリルな髪型しながら、おばあさん言葉で話すなんてすでに人間じゃねぇし、いたとしても俺が認めないからだ。


「何やらむかつくことを考えておるようじゃの。まぁよい、そろそろ我のことを話させてもらう。おぬしも気になっているころじゃろうて」


 えらそうにしながら腕を組む。なかなか様になっているところが妙にかわいくもあり腹立たしい。だからなんとなく捻くれてみた。


「まぁ、気にならないことはないけど別に話してもらわなくてもいいし」


「ぬ、おぬし生意気よのう。人間とはこんなに捻くれている者なのか。まあよい、寛大な心の持ち主の我はお主の無礼をゆるすとしよう。だからいいか? 心して聞くのじゃぞ。我は誇り高きソロモン七十二柱が一人アイムなのじゃ!」


「へぇ超すげぇ~」


 俺は間延びした声を出した。


「お主信じておらんな」


 アイムと名乗ったその幼女はへの字口にしてプンスカ怒っている。


 別に俺は信じていないわけではない。かなり突拍子もない話だから普通は信じないかもしれない。しかしコイツには信じるに値する要素がふんだんに盛り込まれている。何故なら先ほども言ったようにコイツは普通の幼子には不可能なことをさっきからしているからだ。とび蹴りなんかは、いい例だと思う。だからコイツが普通の人間ではないってことは信じるに値する。まぁかといって、コイツがソロモンなんたらっていう俺でも知ってるような大悪魔だとは思えない。なんといっても世間様の考えている悪魔とは容姿がかけ離れすぎているからだ。たしかに悪魔やらなんやらの姿ってのは人間の勝手な妄想に過ぎないが、世間様に恐れられているような大悪魔がこんなちんまい生物だと少し幻滅する。ってなわけで俺はコイツが人間じゃねぇッてことは信じるが、ソロモンなんたらの一人とは信じない。


 これでどうだ?


「お主、わざとやっておるのか? 我をなめてるのか? しかも最初に信じるとか期待させつつ結局信じないってどういうことじゃ。はぁ、これだから人間は」


 と、俺の方をちらちらみながらアイムはぶつぶつと小言を言い続けている。なまじ小言の内容が聞き取れるから腹立たしい。


「む、だったらお前にはソロモンなんたらだって言う証明ができんのか? こんなちんまいのが大悪魔とか笑わせてくれるじゃねえか。まぁでもペットとして飼ってやらんでもないがな」


 少しバカにしすぎた気もする。でもしょうがない。自分が言ってること、そしてアイムが言っていることが現実離れしすぎていておかしくなってしまったのだ。といっても、すでにアイムのような不思議生物がいる時点で現実離れしている気もするがそれはまぁ存在しているのだからしょうがない。


「で、何もできないのか? それともなんかできるのか」


「できる」


 俺が聞くとアイムは憤慨しながら端的に肯定した。


 俺は少し面をくらった。


 ここまではっきりと言われると逆に面白くなってくる。アイムが大悪魔だということを是非証明してもらいたいものだ。


「お主に問うぞ」


「なんだよ」


「お主は我がどんなことをしたら信じるのじゃ?」


 確かにそれはもっともな質問だ。仮にコイツが何かをしてもそれが本当に証明になるかといえばならないだろう。何故なら俺は本物のアイムという大悪魔を見たこととがないからだ。だから逆に俺が与えた条件をクリアすることで本物と認めさせるというのは理にかなっている。これは分かりやすくていい。


「そうだなぁ、たとえばこの窓から見える学校を半壊させるとか」


 俺の部屋はドアを開くとすぐ左手に机があり、正面奥にはベットがある。窓はベット側についておりそれ以外は特に何もない部屋だ。タンスがない代わりに俺のベットの下には収納ボックスが何個かありそれに服を収納している。折りたためないようなジャケットやら制服は壁に打ち込んである杭に引っ掛ける。テレビなどはないため暇つぶしするにはあまり使えない部屋だ。


 話しはもどるが部屋の窓からは俺の通っている高校がみえる。徒歩5分くらいだろうか。俺がその高校を選んだのも通学が、楽だからという理由。学力的には上の中くらいだったので入学するにはなかなか苦労した。


 正直アイムに言ったことは冗談半分だった。それでもし、実際に学校が壊れては少しこまる。まぁありえないだろうけどなんとなく言い改めようとしたときだった。


「うむ、そんなことでいいのじゃな」


 あまりにもアイムが簡単に言ってのけたので少しあっけにとられた。


 アイムは何も言わずに目を閉じる。何か唱えているようだが俺には聞き取れないほど小さな声だった。窓の外に右手を突き出すと、その手はわずかに青黒く発光し始めた。しだいに右手の中心に光が収束する。それはやがてサッカーボールほどの大きさとなった。俺は目の前の超常現象に目を奪われ声を出すことすらできなかった。


「poussière di devenez 塵となれ」


 アイムがそう言い放つと同時に光の玉は激しい衝撃とともに打ち出された。やがてそれが校舎に到達すると深い光を放ちながらドーム状に大きくふくらんだ。あまりのまぶしさにおもわず目を閉じてしまう。

 光がおさまり俺はゆっくりと目をあける。


「・・・・・・まじかよ」


 思わずつぶやいてしまった。衝撃音もなにもなかった。なのに、校舎の右上半分が綺麗になくなっている。


 最初に考えたことはお金のことだった。まず間違いなく俺には弁償できない額だ。そもそもできたとして確実に刑務所行き。考えるとお先は真っ暗だった。


「どうじゃ! こんなもの我にとっては造作もないことじゃぞ」


 真剣になやんでいる傍らでえらそうにしている。


「って、てめぇ! 本当に壊してどうすんだよ!」


「っな、何を怒っているのじゃ! 壊せといったのはお主じゃなかろうかっ」


 確かにその通りなのだが、本当にやってのけるとは思わない。


「そうだけど! つかこれ、俺の所為なのか? そうなのか? どうすんだまじで!」


 俺は頭を抱えた。俺が直接やったことでではないが、間接的にはどう考えても俺の所為。どう償っても許されることじゃない。


 そして俺は無言で立ち上がりドアノブに手をかける。


 「どこにいくのじゃ?」


 「警察に自首しに」


 俺が絶望に染まった顔を見せながら言うと、こともあろうかアイムは大笑いしていた。


「くっくく、お主どこまでバカなんじゃ?お主が校舎を壊しましたといって誰がしんじる。人間にそれもまだ高校生のお主にあんなことできるわけなかろうて。いけばかわいそうな子を見る目で見られるぞ。あっははは、し、死ぬ、面白すぎてしんでしまうのじゃ」


 アイムは俺をバカにして笑っていたが、俺は心底安心した。


 俺は結構最低の性格なのかもしれない。自分の身が保障された瞬間から罪の意識がスッパリと消えた。俺は、小さくため息をついた。


「で、信じてくれたかの?」


 正直もう信じるしかない、俺をハラハラさせて、安心させて、馬鹿にして、それはもう俺にとっては大悪魔だ。


「あぁ、信じるよ」


 俺がため息まじりにそう言うとアイムは今までで一番かわいらしい笑顔を向けてきた。





 後日俺は初めて青空教室というものを体験したと言うのはまた別の話。


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