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共通の趣味

作者: WAIai
掲載日:2026/08/30

ランチタイム、放送部がいつも通りに曲を流してくる。

市原は母親の手作り弁当を食べながら、耳を澄ましていると、聞いたことのある曲が流れてくる。

「んー!!」

机を合わせた友達に、スピーカーを指すと、友達は訝しそうな顔をする。

「ちゃんと物を食べてから、話せ」

こくこくとうなずき、咀嚼すると、市原は興奮したように言う。

「この曲!! 俺の好きな曲なんだよ!!」

「え…。そうなのか?」

「歌詞が綺麗なんだよ!! あー、ありがとう、放送部!!」

手を合わせながら礼を言い、続きを聴く。

4人組のバンドで、歌番組には滅多に出てこないのだが、人気のある4人だった。

「CMの曲になったんだけど、知らない?」

「CMの曲…? …うーん、俺、詳しくないからな」

「あっそ。くそー、有名なのに」

机に爪を立てると、市原は一緒にリズムをとっていく。

キラキラ光った宝石を散りばめたような曲。

音自体が星と星と星がぶつかったような、軽くて美しい音をしており、心が静かになっていく。

「あ。ここまでくれば、聞いたことがあるわ」

サビの部分になり、友達が言うと、市原は身を乗り出す。

「そうだろう、そうだろう。有名だもん。あとでYOUTUBEを見ろ」

「分かった、分かった。とりあえず飯を食え」

宝石の雨が降ったかのような、そんな続きを聴きながら、ボーカルの声にうっとりする。

彼の声が高くもなく、低くもなく、まるで子守唄を歌うような、優しくて澄んだ声。

毎日、毎日、家で聴いているので、市原はリラックスしていく。

「…あ、終わった」

曲が変わり、違うバンドの曲になった。

残念に思っていると、教室の別の場所から声が上がる。

「あーもう!! 終わっちゃったじゃない!!」

同じクラスの山内だった。

ショートカットなのだが、明るくてさっぱりしているので、男子に人気があった。

市原も実は狙っており、今が声をかけるタイミングだと近寄る。

「お前も、さっきのバンドのファンなのか?」

「そうよ。それがどうかした?」

「俺もなんだよ!! だから違う曲に変わったのが悔しくて!!」

「悔しいわよね、うん」

2人でうなずくと、スマホを差し出す。

「お前、どの曲が好きなんだ?」

「あたしは…そうね、これかな」

「それか。それも良い曲だよな。胸に言葉が突き刺さるというか。…俺はな、これかな」

一曲選んで指差すと、山内は「きゃー」と悲鳴を上げる。

それは否定のものではなく、肯定からくるものだった。

「LIVE、行ったことがある?」

「ない。行きたいけど、一緒に行ってくれる人がいないし」

「あたしと一緒に行かない? 申し込んでおくから」

「まじで!? いいの!?」

「いいわよ!! あんたもバンドのファンと分かれば、味方だもん」

山内は胸を叩くと、堂々と言ってきた。

市原は「わあ」と興奮し、山内に言う。

「LIVE、行けるといいな。抽選なんだろう?」

「そうみたいね。絶対、当選してやる」

「そのいきだ。頼んだぞ」

2人で笑い合うと、ハイタッチする。

周りの皆は、何2人で話しているんだと注目されたが、山内とならいいかと無視する。

「誰のファン?」

「えっとね、この人」

「そうか。人気あるもんな。俺は…この人」

「え? そうなの? 意外」

ずっと2人で話していたかったが、それぞれの友達が名前を呼んでくる。

「ちょっと待って。ねえ、連絡先を教えてよ」

「え…。い、いいけど…。お前のも教えろよ」

「うん、もちろん!! 仲間だもん」

「仲間…」

その言葉にじんとし、市原は嬉しくなってくる。

近くに同じものを共有できる人間がいると思うだけで、強くなれる気がした。

2人はスマホを操作し、互いに連絡先を交換し合う。

「…、よし。じゃあ頼んだぞ。また話そうな」

「うん!! いっぱい喋ろうね」

手を振られ、小さく手を振り返す。

それから自分の席に戻り、箸を持つ。

「おい、市原。何、山内と話していたんだよ?」

「教えなーい。ふふ、楽しみだな」

満足そうに呟くと、卵焼きを口にしたのだった。


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