気弱な婚約解消
すみません、魔法だの魔物だの出てくるのが異世界で、適当貴族の話は現実世界だと思ってたんですけど、どうも違うようなので設定のジャンルを異世界に変えます。
「クラウディア」
「はい?」
「その…あの…」
「はい」
「なんだ…えーとほら…なんていうか…」
「はい」
「……」
「……」
いや言いたいことあるならさっさと言えよ。
我が婚約者ながら、うじうじうじうじうじうじしててイライラする。
こんなんが王太子だなんて、この国の将来が不安だわ。
「あの…」
「はい」
「もうすぐ…卒業式だよな?」
「そうですね」
「……」
「……」
だからなんだよ? 言いたいことはわかってるけど、そのくらい自分の口で言えよ、と思っているので黙って殿下を見る。
「エスコートを…」
「……」
「その…」
「……」
「だめ…かな?」
いや何がだよ! 動詞どこ行ったんだよ!
こめかみの血管がぴくぴくいってるけど、ひきつった笑顔で問いただす。
「何をおっしゃってるのかわかりません」
「……」
「……」
「その…」
「……」
「別の…令嬢に…」
「は!?」
「ひっ!」
ちょっと強い声で聞き返しただけで、殿下は「気を付け」の体制で硬直した。
「な、なんでもない、時間を取らせてすまなかった…」
何しにきたんだよ…。あわてて立ち去る殿下の後ろ姿を見ながらため息をつく。
たぶん殿下は、お気に入りのピンクブロンドの子爵令嬢をエスコートして卒業パーティーに出たいんだと思う。
そして私に婚約解消を申し出たいんだと思う。
だけど私が殿下にビシバシ説教するような性格だから、怖くて言えないのだと思う。
あんなに気が弱いんだもの、そりゃ私みたいな性格の女といるのは息が詰まるでしょうね…。
だから「婚約解消もやむなし」と思っているのだけれど、向こうが解消したいのに、私から願い出るのもなんか腹が立つので、自分で言うまでほっとこうと思っているんだけど、もう3日続けてこの会話だ。
まあでも、今日は「別の令嬢」まで言えたから、少しは進歩してるのかもしれない。
卒業パーティーまで1週間。なんとか解消まで言えるといいね。
大勢の人が集まるパーティー会場で宣言するのとか無理だもんね。
その前になんとかしないとね。
翌日、学園の中庭で休んでいると、また殿下が近寄ってきた。
なんだかもうひな鳥を見守る親鳥の気分で、殿下が声をかけるのを待つ。
「クラウディア」
「はい」
「……」
「……」
「あの…その…」
またここからかよ!
つーか、殿下にコナかけた子爵令嬢は何してんの。
殿下に寄り添って「殿下ぁ、クラウディア様に睨まれて怖いですぅ」とかなんとか言って甘えれば、殿下だってフンガーってなって勇気が出せるでしょうに。
そう思ってあたりを探してみると、柱の陰にピンクブロンドが見えた。
うわー、柱の陰で不安そうな顔でこっちを見てる。
飛雄馬を見守るアキコねえちゃんかよ、と思ったけど、若い子には通じない気がするのでスルーしてください。
ってよく見たら国王も隠れてない? あっ王妃も!
第二王子も王女もいるじゃん! なにこれ! 王家総出の応援??
どういうことよ?? 国王も婚約解消を望んでるってこと?
王命なのに??
なんか悲しくなってきた。殿下にふさわしい王太子妃になるために、王太子妃教育もがんばってきたのに。殿下に厳しい言葉をかけるのだって、殿下のためだと思うからこそだったのに。
こんなにみんなに嫌われてたの?
「クラウディア!?」
「うっ」
こんなとこで泣くなんてみっともない。みんなが見てるのに!
そう思うのに、悲しくてくやしくて涙があふれて止まらない。
「おバカーーーーーーーーーーーーー!!」
ばちーん!
「!?」
木陰に隠れていた王妃様が飛び出してきて、殿下にビンタした。
「何泣かせてるのよ! ちゃんとしなさい! ばかたれが!」
「は…母上…」
「自分の! 気持ちを! 自分の言葉で!」
いや…ちゃんと婚約解消とか、殿下の言葉で言われたら、もっと泣くと思うんだけど…。
周りの応援は止まらない。
「男を見せるときだろうが!」
「兄上! みんな兄上の味方です!」
「そうですお兄様! やればできます!」
なにこれ…どんなイジメ?
「そうです殿下! がんばってください!」
ピンクブロンドまで参加してきた。
くっそー! もう泣いてやるー! そしてこんな国、出てってやるー!
と決心したところで、殿下が叫んだ。
「クラウディアが好きだーーーー!」
は?
「やっと言った!」
「よかった!」
「もうひやひやさせて!」
「わーん心配させてもうー!」
「よかったですう!」
え?
「どうか! 卒業パーティーでエスコートさせてください!」
跪いて頭を下げ、右手を差し出してきた。
ポカンとして動けない私に、不安になったのか殿下が頭を上げて
「だめ…かな?」と聞いてくる。
「いやそんなわけないでしょ! 婚約者なんだから! むしろ率先してエスコートしてくださいよ!」
あわててそう返すと、「よかった…」とほっとした表情を見せた。
「でも殿下、別の令嬢をエスコートしたかったんじゃ…」
とピンクブロンドを見ると、
「うわーやっぱり! ほら! だから誤解されるからって言ったのに! 殿下は、クラウディア様の前に出ると、緊張で声が出せないことを相談にいらしたんですよ~~」
と言って殿下をにらみつける。
「だ、だって…」口ごもる殿下。
「だってじゃないです! 婚約してから3年もたつのに、何も言ってないなんて、不安になるのが当たり前です! 言葉にしないと伝わらないこともあるんですよ!」
「は、はい…」
きのうのあれ…「別の令嬢に…」の続きは「相談したんだ」だったの??? もしかして!?
「あっすみません! わたくしったら殿下に向かって偉そうな口を!」
「いいのよ! 学園では同級生なんだし! お兄様ったらほんとにヘタレなんだから!」
「ほんとだよ! ひとめぼれだったくせに!」
「わたしも王妃に脅されて告白したから気持ちはわかるが…」
「まあそんな昔のことを、ほほほほ」
「やっと言えたのですか」ガサガサと草むらから側近が出てきた。
「これで一安心だな」えっ宰相まで?
「卒業パーティーが楽しみだな!」騎士団長もいらしたんですか…
「殿下ー! おめでとー!」同級生がわらわらと…
どんだけ見守られてたの殿下…。
よかったけど…婚約解消じゃなくてよかったけど…
雰囲気は大団円なんだけど…
「この国…大丈夫かな…」と不安になった私だった。
適当な知識で適当なこと書いてますすんません。




