母親の罪。そして私も同じ状況。②
兄夫婦もリビングに入ってきた。
「ただいまー」と言いながら兄夫婦はソファーに座ると同時に
「お兄ちゃん、ごめんな・・・」とお母さんが泣きながら言う。
「んで、何があった」と兄は冷静な態度だった。
「職場のお金を使ってしまって・・・」と言うと兄は深いため息をついて
「いくら使った?」と兄が聞くと
「4000万近く・・・」とお母さんは答えた。
5秒間くらい沈黙あって
「なぁ・・・高校卒業してからその職場に就職してからずっと世話になった職場だろ。ずっと世話になった職場でそんな恩を字で返すようなことすんなよ」と兄は金額を聞いても冷静な態度だった。
ばあちゃんも泣きながら
「お兄ちゃん、お母さんは人として悪いことしてるけど、でもこうなってしまったのもお母さんだけの原因じゃない。だから許してあげて・・・どうかお願い・・・」と言いながらばあちゃんは兄に頭を下げた。
「原因って、どんな原因なん」と兄は聞くと
お母さんはうつむいた顔をあげて「じいちゃんが生きていた頃に困った人がいればお金をすぐ貸してたのよ。返ってくるのもわからないのに。じいちゃん、お金なくなっても自分が借金してまでも人にお金貸し続けてさ。その状態のままじいちゃんは死んでいって、残った借金はなんとかしてお母さんが少しずつ払ってたけど全然借金減らなくて・・・でも家族には言えなかったし子供たちにはやりたいことやらせてあげたかった。そしたらどんどん首が回らなくなってしまって・・・最終的に会社のお金に手をつけてしまった・・・」
「そんなん知ってたら進学だってしなかった」と兄が言う。
「私も、自分のことばかり考えてた・・・そんなことになってるなんて知らなかった。一人で抱え込ませて本当にごめんなさい。」と涙ながら私が言うと
「横領したことがバレてこないだから職場で幹部からの聴取を受けてるんよ。これからどうなるんかまだわからない。多分このままだと逮捕が普通だと思う。」
普通はそうだろう。
私は小さい頃の記憶が蘇った。
私が悪さやお母さんの言うことを聞かずにいたら口癖のようにお母さんは
「もう知らないよ。そんなんだったらお母さんいなくなるかもしれないよ。いいんだね。」と言っていたことを思い出した。
その「お母さんいなくなるかもしれないよ。」って言うのは、いつ逮捕されて離れ離れになるかもしれないよってことだったのかな・・・
そう思うと、そんな昔から一人で抱え込んで一人でつらい思いさせてたんだ。
そんなことも知らずに私はやりたい放題だった。欲しいものは絶対に買ってもらうまで駄々こねてたし、
中学や高校でやってた部活でもかなりお金をかけてくれた。
申し訳ない気持ちでいっぱいになって涙が溢れた。
「とりあえず状況はわかった。これからのことは今からってことな。多分これからはその4000万円を返済していくことにはなるんだろうな。」と兄が言うと
「うん、多分そうゆうことになると思う。もしお母さんが逮捕されても借金として返済していくことになると思う。」とお母さんが答えた。
「うん、わかった。これからの事は受け入れて進んでいこう。」と兄が言いみんなで頷いた。
その日は夜ご飯まで食べて帰ることにした。
お母さんがかぼちゃコロッケを作ってくれた。
私は何かしてないと落ち着かないし、お母さんの心が心配だったから、一緒に作ることにした。
「ねぇ、お母さん。大丈夫なん?夜寝れてる?」
「うん、大丈夫。みんなが思う以上にお母さんって強いんだよ。夜はね、ばあちゃんが前に処方してもらった睡眠薬をもらって飲んで寝てるから大丈夫。」
「そっか。でも辛かったよね。ごめんね。」
「なんであんたが謝るのよー、悪いのはお母さんだから。本当にごめんね。」
二人で泣きながらかぼちゃコロッケを作った。




