草原 ▶︎落とし穴
挿絵があります。
授業によって、才能を見出されたカーチェの希望者には、すぐにハンターギルドや家政カーチェギルドへ紹介・登録がされる。
働き者である彼らは、紹介・登録にはとても積極的だ。
「いってくるみゃん!」
「いつでも帰ってきて大丈夫だにゃー! 気負わずに行くんだにゃー!」
「いってらっしゃいにゃにゃ!」
カーチェたちは、巣立っていく者を見送る。
もし、うまくいかなくても、いつでも帰ってこれる故郷がここにあるよ、と伝えておくことも忘れない。
「今年に入ってもう4匹目か、今年は巣立つカーチェが多いのう」
お年を召した、という言葉が似合うカーチェが、ポツリとこぼす。その隣にいたカーチェは頷く。
「戻ってくる子もおりますにゃーん。番や子供、恋人を連れてくるかもしれにゃいのも、たのしみのひとつにゃーん」
村を出たカーチェのなかにも、村に戻ってくる者はいる。
もしかしたら中には、悲しみを抱えて戻ってくるカーチェもいるのかもしれないが、だれがどんな風に帰ってきても、おかえり、と優しく温かく迎え入れてくれる村だ。
そんな村なので、カーチェたちはいつでも帰れる、と伸び伸び仕事に励み、良い結果を出しているそうだ。
「よーし、ナナヤちょっと狩りに行くミャ!」
「あ、俺もいくみゃん!」
「あたいも行くにゃにゃん!」
巣立つ者へ餞別を渡したら、村の備蓄が減る事になるが、こうやってすぐ補充すれば、何か起きた時、慌てずに済むので、狩りの得意なカーチェは率先して動く。
「ルルルフは、草原へ採取に行ってくるニャ!」
「あ、それなら解毒キノコとマヒ草があったら頼むにゃる」
「わかったニャ!」
=・ω・=・ω・=・ω・=
「……ルルルフは、今どこにいるんだニャ……」
太陽の明かりも月の明かりもない、暗い地の中にあるトンネルを、ルルルフは彷徨っていた。
採取に出かけて、木の陰から解毒キノコを採り、草原で色々な草類を採取していたら、背の高い草で足元が見えなくなっていたところに、ぽっかり空いていた穴へ足が伸びて、穴の中をコロコロ転がっていった。
採取カゴの蓋を閉じていたので、採った物をばら撒かなくて済んだのが不幸中の幸い。
転がりきったら、体が投げ出されポトンと落ちた。落ちたので、戻ることもできずに、暗い中、出口を探してトテトテ歩くしか出来なかった。
ヒゲが揺れて風を感じる方向へ、ひたすら足を向ける。
下り 上り 曲がり を繰り返しているうちに、わずかに先が明るくなっているところを見つけたので、四足走行で駆けて行く。
明るいところに出たが、そこは地上ではなく、ヒカリダケという発光するキノコの群生地だった。
地底湖もあり、ヒカリダケの反射を受けてとても明るいところだ。
「ニャアアアア……キレイだニャー」
ルルルフは迷子になったことも忘れて、口を開けながら辺りを見回して歩き回る。
大きくない地底湖をくるりと一周して、自分が迷子だった事を思い出す。
「こ、こんニャ事している場合じゃニャい!!」
我にかえり、プルプルと頭を振って、出口を探す。
またヒゲに風を感じたのでそちらを見やると、天井にポッカリと口を大きく開けているような穴が見えた。
雲に隠れていた月がちょうど晴れて、顔を覗かせてくれたので空と月と穴が視認できた。
穴の周りには、丈夫そうなツタが幾重にも絡んで垂れている。
「お外ニャ!」
ツタを登れば出られそうなので、安堵の息を吐く。
月と星の方向を見れば村に戻れるので、焦らずに、少しだけヒカリダケと、周りにあった鉱石を採取してからツタを登り、外に出た後、穴に向かってお辞儀をした。
「少しだけキノコと石を頂きますニャ。出口を教えてくれてありがとうニャ」
出口に通じる場所は、己のヒゲで探し当てたようなものだが、ルルルフは地底湖のある場所に感謝を示して、その場を後にした。
月が空一番高く昇った頃、ルルルフは村に帰ってきた。村の入り口で松明を持ったナナヤが、キョロキョロしていた。
「ナナヤ〜、どうしたニャ?」
「ミャ!! 帰ってきたミャ!! 遅いミャ!」
ナナヤがベソをかきながら、トテトテ近づいてきた。
「草原に空いてた穴に、落ちちゃったニャ」
「どこも怪我はないミャ?」
松明を持っていない方の手で、ぺたぺたとルルルフを触りながら心配の声をかけるナナヤに、ルルルフは頷いた。
「大丈夫ニャ、心配ありがとニャ」
2匹は村に入っていく。
おとなのカーチェが、わっと集まってきて、皆ルルルフの無事を確認している。
「心配かけてごめんニャさい。草原に空いていた穴に落っこちちゃったニャ」
「草原に穴があったニャンか?!」
「3日前には、そんにゃ〜のなかったにゃ〜よ」
ルルルフの無事を確認して、穴の存在に首を傾げるカーチェたち。明るくなってから調べることになった。
くきゅるるるる
「お腹空いちゃったニャ……」
大きく鳴った腹の音に恥ずかしがりながらも、お腹がすいた事を告げると、うちでご飯を食べていきなさいと、おとなのカーチェが誘う。
家にご飯を用意出来てないルルルフは、甘えることにした。




