三分娘はカップラーメンの夢に墜つ
――私は町で噂の三分娘!
言われたことはなんでも三分でこなすし、自分でやることも三分の天才少女。
それが私だ。
そんな私でも三分でやりきれないことはある。
その代表格がカップラーメンだ。
故に私は時間がかかるものを食べていない。
しかし私は今、カップラーメンの夢をみているらしい。
これは私が三分娘じゃなくなるまでの物語。
「なんて夢だ……」
私の目の前にはカップラーメン達が社会を形成していた。
道行く人々は全てカップラーメンであり。
手と足が生えている。
ご丁寧に全員三分でできるやつのみが歩いている。
私は探索を開始した。
今のところ人間を彼らに置き換えただけの社会に見える。だか、その考えはすぐに打ち砕かれた。
五分だ。五分の奴がいる。
そいつが道を歩くたび三分の奴らはひれ伏していた。
「おい!すぐひれ伏せ!じゃないと調理されるぞ!」
三分のカップラーメンの内の一人が話しかけてきた。
調理の意味がわからなかったが、とりあえず言われるままにひれ伏した。
やがて五分の奴は通り過ぎていった。
「あんた、危なかったな」
「危ないとは?」
「知らないのか?五分のほうが偉いからひれ伏さないと調理されるんだよ。」
「その……調理されるとは?」
「なに!?調理も知らないのか、まあいい調理は頭の蓋をあけられてお湯を入れられると死んでしまうことだ。」
死ぬ?カップラーメンに死ぬとかあるのか……
「教えてくれてありがとうございます」
でもなぜ五分のほうが偉いのだろう?
食べるだけなら三分のほうがありがたい気がするが。
「あの五分のほうが偉いのはなんでですか?」
「………五分の奴らのほうが仕事が丁寧だからだよ……」
その言葉を聞いた途端冷や汗のようなものが出てきた。
「三分の方々は丁寧にはできないんですか?」
「できたはずだった……」
「だが、早さに固執しすぎたのさ……」
「早さ?」
「そうだ……昔は仕事が早くできるやつになりたくてみんながそれを目指した」
「だがだんだん皆、仕事が早い人という名誉に固執したのさ……」
「その結果社会は早いだけでミスや雑な仕事をする奴ばっかになった」
「国はそれに対処するため仕事が丁寧にできるやつを優遇しだしたんだ」
「なら、皆さんも丁寧に仕事をすればいいじゃないですか?」
「忘れられないのさ、名誉や称賛が」
「じゃあやっぱりちゃんと仕事をすれば……」
「そうじゃないのさ、嬢ちゃん」
「みんな恐れているのさ、自分だけじゃなくみんなが丁寧に仕事をしたら、それが当たり前になり誰にも称賛されない、名誉がもらえない」
「それが怖くてみんなで足を引っ張りあった結果、誰も三分から五分になれなくて今の五分の奴らの横暴に繋がっているのさ」
耳が痛かった。
三分娘と言われ舞い上がっていた自分と重なるものがあったからだ。
最初はただ純粋に褒められたかった、だから何でも早く終わらそうとした。
三分娘と言われた時は変なあだ名だけど嬉しかった、だがだんだん三分に固執していった。
三分娘だからなにがなんでも三分で終わらせないといけないって、天才なんかじゃなかった。
ただ三分で終わるように無理やり物事をこなしていただけだった。最初から三分で無理なものは目を背け触れなかった。きっと私が見ようとしなかっただけで、三分娘はもうただの蔑称に変わっていたんだろう。
「愚かですね……」
「あぁ……そうだな」
覚悟は決まった。夢から覚めなきゃ。
「ありがとうございます、おかげで帰り道わかりました」
「よくわからないが、さっきまでとは目つきが違うな」
「はい!私は変わるんです!」
「そうか……俺も変わらなきゃな」
「さよなら!」
「あぁ、じゃあな嬢ちゃん!」
町を出てひたすらに走った。
やがて何も無い空間に出た。それでも走り続けた。
光が見えてきた。目を覚ます時だ。
――私は普通の娘!
言われたことはなんでも丁寧にこなすし、自分でやることも丁寧な普通少女。
それが私だ。




