創成班宣布部は世間の人間が決して知ることのない、教会の闇を担っていた……
今回は説明のような内容の為、ちょっとつまらないかも知れません。
創成教会の男性教会員は満18歳になると、教会内に設けられた年齢別・性別別の組織に所属させられる。
男性の花形は創成班と呼ばれるもので、その他、教会施設の警備、駐車場の整備を行う守城会、武道・格闘技経験者からなる教団幹部の護衛を担当する光輝会などがある。
各組織には創成班大学校、守城会大学校と呼ばれる独自の機関がある。
大学校と名付けられているが教育機関ではない。授業のある時間帯も昼間でなく、仕事や学校の授業が終わった夜間で、授業の総時間も少ない。
では、何の為の機関かというと、教義を頭に叩き込ませ、教団に都合のいい駒として扱う為に教会員らをマインドコントロールする場だった。
創成班員に選抜される為には、高度にマインドコントロールされていることが条件で、創成教会に絶対的な忠誠を誓い、指示が出れば疑問を持たずに従い、命を捨てる覚悟のある人物であると教会幹部が看做した者であることが条件だった。
彼らに対して行われる教育は、単純明快だった。
仏法は国の定めた法律、地方自治体の定めた条例の上位に位置している。
教会の指示は仏法に従って出されており、常に正義である。
教団の指示は絶対であり、実行しなければならず、逆らってはならない。
教会の指示が法や条例に反する場合、間違っているのは法と条例である。
謗法者は地獄に落ち、その咎により、転生時には心身に障害を持って生まれる。
謗法者に罰を与え、心身を痛めつけることは、間違いを正す善行である。
謗法者に死を与えることは、新たに罪を起こさせない点で善行で功徳がある。
これらは原則として、日蓮が鎌倉時代に記した立正安国論が根拠となっている。
立正安国論は戦前、テロリストたちの聖書となった曰くつきの書物だ。
日蓮が生きた時代は科学の発達していない、宗教が厚く信じられていた時代で、宗教勢力が武装し、殺し合っていたことから、そうした点を考慮せずに同書を読むと、暗殺やテロリズム、クーデター、宗教弾圧を正当化する恐ろしい書となる。
逆に言えば、人をマインドコントロールし、手駒として都合よく使い、邪魔者や逆らった人間を潰し、金と権力を得て悪さを働きたい悪党共には、この上なく悪用し易い書物だということだ。
そうして教会員らをマインドコントロールし、教会が指示すれば犯罪を平気で犯す鉄砲玉の狂信者を量産すると同時に、その中でも更にマインドコントロールのかかり具合が高く、頭も切れる連中を選抜して招集したのが、創成班宣布部だった。
創成班宣布部が行っているのは、非合法活動だった。
例えば市役所職員であれば、敵対者に関して、市役所職員としてアクセスできる全ての情報、住民票、戸籍謄本、印鑑登録原票、課税情報、納税情報、世帯の所得・資産状況、家族構成、生活保護、児童手当、障害者手帳などの申請・受給状況等々、ありとあらゆる情報を盗ませる。
創成教会はあらゆる業種に教会員が従業員として勤務している為、創成班宣布部員に指示を出して、各員が勤務先から対象者のあらゆる個人情報を盗み出させ、教会に提供させれば、対象者の人物像を丸裸にし、弱点を握ることが容易にできた。
組織的なストーキングや嫌がらせ、ガスライティングを働いても、被害者に証拠を掴ませずに決行できるのは、そうして個人情報を徹底的に収集した上で、戦術を練っているからだった。
哲夫も生前、部員として、勤め先から多くの個人情報を盗んだ。
その人達は皆、自殺するか、精神病院閉鎖病棟に入院するか、教会に屈服し、最下層の手駒として、奴隷のように扱われ、犯罪行為をさせられている。
彼らが行う非合法活動のメインは情報盗と敵対者潰しだが、このように高度にマインドコントロールされてどんな指示にも従う狂信者の集団ということで、公正党経由で自由保守党の国会議員や大物地方政治家からの依頼を受けることもあった。
特定個人を自殺に追い込んだり、組織的なガスライティングで精神的に圧迫して脅したり、犯罪の被害に遭った人や、議員に都合の悪い情報を握っている人、内部告発しようとしている人を潰すといったものだった。
自由保守党が連立相手である公正党を切れないのは、こうした闇の仕事を創成教会に引き受けて貰い、弱みを握られていた為でもあった。
次回は9月1日21時30分投稿予定です。