警狼ゲームのはじまり 9
桐谷世羅は将の視線が俯くのにふっと笑って
「東大路、お前は気付いていた。だから根津が狼だと分かったんだな」
と告げた。
将はチラリと今セーフ側で座っているのに目を見開いて自分を見ている天童翼を見た。
恐らく天童翼もいま気付いたのだ。
自分と桐谷世羅……教官の二人にもバレていたのだと。
鋭いのだ。最初の占い師宣言の時に天童翼は恐らく直ぐにこの事態を想定したのだろう。
何故か分からないが根津省吾と直ぐに暗号を交換し合った。
もしも、あの手の動きに気付かなかったらきっと自分は根津省吾を次調べようとは思わなかった。
そして自分は『Make』で『Cut』の天童翼より『Ing』の根津省吾の方が言葉として成り立つと根津省吾が狼だと気付いたのだ。
ただ今の疑問は教官たちが何故『狼だけ』は同じ暗号にしたのか。そこに今回の特別林間合宿の理由がある気が将にはしていたのである。
桐谷世羅は厳しい表情で
「お前が根津を狼だといった理由を言え、言わなかったらお前はクビだ」
と告げた。
将は深く息を吐き出すと
「俺はクビの方が良いですけど」
と言い
「情報交換した人間がいる」
と天童翼を見て
「だろ? 天童。お前と根津と……指先でモールス信号で互いの暗号を送ってたよな?」
と告げた。
「お前は根津に『Cut』を送っていた。根津は『Ing』だった。俺はMakeだったから根津が狼だと気付いた」
それに花村満也は驚いて
「え!? じゃあ村人の暗号は全員バラバラだったのか??」
と告げた。
「俺はTalkだったから根津も当てずっぽうだと思ってたけど……村人は全員違うのか? 大谷もingって言ってたから狼は一緒で?」
根津省吾は目を見開くと桐谷世羅をジッと見つめた。
桐谷世羅は静かな笑みを浮かべた。
将は全ての絡繰りを理解すると足が震えるのを感じた。
狼は二人共ingだ。
村人は全員がバラバラだった。
その上でこの状況を考えたら根津省吾を中心に誰かと暗号のバラしあいをするのを待っていたということになる。
その相手が天童翼だったということだ。
言い換えれば、二人の不正によって二人がかなり濃い特別な関係だということが浮かび上がった。
それを公にすることが目的だったと将には考えられた。
だが態々こんな手の込んだことを何故するのか。それこそ将には意味が分からなかった。