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愛知県警のケイドロ 17

 全員が迷いつつも手をあげなかった。が、山口竜一と黒川巽が同時に手をあげた。

 山口竜一は慌てて

「あ、いえ。その……俺は絶対に立て直します! 俺は子供の頃に銀行強盗にあって犯人を捕まえ助けてくれたのが警察だったんだ。だから刑事になろうと思った。不条理な犯人の暴力や犯罪で苦しむ人を救う。それが警察官の役割だと俺は思う。それが犯罪側に立てばあの時の俺や母や……町に住む人々を守る盾がいなくなる。それはこの町が、愛知が、人の住む町じゃなくて犯罪者だけが住む壊れた街になるってことだから」

 と告げた。


 ……俺は愛知県の善良な市民が安心して暮らせる盾となるように愛知県警を立て直す一端を担うつもりだ……


 黒川巽も手をあげたまま

「俺も兄が守ろうとしたこの愛知県警を……愛知の人々を守りたいと思います。欲を排して正義に生きることを誓います!」

 と告げた。


 中山麻紀も微笑んで敬礼し

「誓います!」

 と告げた。


 全員が揺らいだ心を立て直したのである。


 将は微笑むと敬礼して

「警察機構には他の組織の人間を入れてはならない。そいつはきっと狼になって警察機構自体を破壊する」

 と言い

「それでは犯罪者を隠蔽し善良な人々の生活を脅かすことになる」

 と告げた。

「誰一人狼になるな!」


 翼も笑みを浮かべると

「今の気持ちを忘れずにだ」

 と告げた。

 

 全員が「「はい!」」と強く応えた。


 省吾は安堵の息を吐き出すと島に接岸させるように頼み、全員を乗せると名古屋フェリーふ頭へと戻った。


 山坂順二も三叉政治も尾崎友子もJNRについては口を割らなかった。ただ山坂と三叉については殺人や背任、様々な罪状がつき起訴された。


 平岡政春も冷静に

「俺はもうどちらの命令も聞かない」

 と言い

「どうぞクビにしてくれ」

 とJNRについても何も言わなかった。


 尾崎友子と平岡政春についてはクビとなった。警察機構から排除されたということである。

 尾崎友子は怒り心頭すると平岡政春に将たちに報復するために組織では上となる酒家美咲の元へ行くように誘った。が、しかし。平岡政春は首を振ると断った。


 彼は冷静に

「あのさぁ、尾崎。あんたも姿を隠した方が良い。このままじゃ殺されるぞ。それより俺と一緒に逃げた方が良い」

 と返した。


 尾崎友子は目を細めると

「誰が……美咲さんは私たちを買ってくれていたんだから」

 もういいわ、勝手にしなさいよ! と立ち去った。


 平岡政春は息を吐き出し彼女を見送るとそのまま姿を隠した。


 尾崎友子は平岡政春に呆れながら酒家美咲の元へ行き

「美咲さん、私……私を炙り出した警察に一矢報いたいんです」

 と告げた。


 プライドが傷ついていたのである。


 酒家美咲は優しく彼女の手を掴むと

「そんなことになっていたのね」

 と言い

「天童も根津も藤原も……他の人間は姿を消してしまってどうなったのかと思っていたけれど警察内部で排除されて逃げていたのね」

 と心で呟いた。

「貴方は本当に組織のことを考えてくれているみたいで期待しているわ。私もこれ以上警察から人間を排除されると組織の力が弱まって六家の人たちに粛清されてしまう」


 ……手伝ってちょうだい……

「彼らを陥れる秘密の情報を教えるわ」

 そう告げて、後ろで控えている男を見ると頷いた。


 尾崎友子と男たちが立ち去ると彼女はビルの一室から外を見て

「藤原が突然林間合宿があると言っていたので見に行っていたけれど……あそこにいたのは警視庁に潜入させた天童翼だった」

 と呟き親指の爪を噛みながら

「あいつは寝返ったって事ね。小泉俊也と同じだわ。あいつには二人も一緒に抜けさせる代わりに最後の仕事をさせて始末したけど……まさかその弟分が警察に寝返っていたとは……きっと根津もいたはずだわ。あの双子が別々でいるとは思えない」

 と呟いてふっと笑みを浮かべた。

「おばかで可愛い尾崎も最後に役に立ってもらうわ。裏切りものと我々の洗い出しをしている部署ともども始末させてもらう」


 酒家美咲の思惑など知らない尾崎友子は笑みを深めて

「見ていらっしゃい……裏切り者の末路を教えてあげるわ」

 と呟いた。


 数日後。

 東京湾に尾崎友子の遺体が浮かび、その波止場近くにあるコンビニの防犯カメラにそこへ向かう翼の姿が映っていたのである。


 ……そして翼の消息はその時からプッツリと断たれたのである……


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