警狼ゲームのはじまり 5
大谷大地以外の全員がそれとなく顔を見合わせて心を決めたようである。
将は笑みを浮かべると
「後さ、俺がもし夜を越えることが出来たら」
と告げた。
全員が顔を向けた。
将は根津省吾を見て
「次は根津、お前を調べるぜ」
と告げた。
世羅は目を見開いて将を見つめた。聖もまたジッと凝視した。
二人の間に『まさか』という思いが過ったのである。
根津省吾は驚いて
「え!? 俺? な、なんで?」
と呟いた。
同じ様に先走った宣言に驚いた天童翼も苦く笑って
「いや、ちょっと待てよ、東大路。お前さ、もしかして右隣りを順に言ってるとかか?」
と告げた。
「ちゃんと会話聞いて占わないと一発目は運が良かったのかもしれないけど失敗するぞ?」
根津省吾は両手を叩くと
「あ! なるほど! 確かにそう言う順番なら次は仙石?」
と告げた。
「天童が最後だね」
将は目を細めて笑みを浮かべると
「まあ、大谷は確かに横だからだったけどな」
と告げた。
天童翼と大谷大地は両隣で最初の標的にしたのは本当に運だった。
だが根津省吾を狼に選んだのには理由がある。
将の言葉に仙石真美也が苦笑して
「つまり、本当に大谷は運がなかったってことか」
と呟いた。
花村満也と海野邦男も富山春陽も流石に苦笑した。大谷大地は天を仰ぐと
「まじかー」
とぼやいた。
これで狼一人は始末できると言う訳だ。
だが。と桐谷世羅はその様子をじっと見つめ口元を歪めて笑みを浮かべた。
多々倉聖は冷静に「確かに大谷は運だったんだろう。だが次に根津を選んだ理由は何だ?」と考えた。
将は冷静に彼らを見回して息を吐き出し
「だが、根津。俺がお前をセレクトしたのにはちゃんと理由がある」
と告げた。
……お前がもう一人の狼だ……
全員が顔を見合わせた。
将は心の中で
「これで普通なら狼は全滅だ。だが……これで終わるか、終わらないか」
と呟いた。
自分には望みがある。
それを叶えるために攻め切り込んだのだ。
上手くいけば叶う可能性はある。だが、失敗すれば狼を全滅させるだけで終わってしまう。
将は唇を噛み締めて全員の顔を見つめた。
将にとってもこのクビのかかった人狼ゲームは勝負なのだ。
将の独壇場は終わりを告げ、日射しが静かに降り注ぐだけで既に誰もが心を決めている状態では会話も何もなかった。