愛知県警のケイドロ 5
将たち内部組織犯罪対策課に赤川昇愛知県警察本部長から林間合宿許諾の返事がされたのは林間合宿をするように依頼を掛けて直ぐであった。
桐谷世羅はそれを報告し
「今回の愛知県警の林間合宿のゲームは東大路と天童と根津の三人で行え」
と告げた。
「お前たち三人でも問題なく出来るだろう」
将は息を吸い込み翼と省吾を見て頷いた。
更に桐谷世羅は菱谷由衣を見ると
「菱谷、お前は先に内部組織対策課と関係なく愛知県警へ出向いて赤川本部長の信頼を勝ち取れ……そいつはただの村人だ。今は息を殺して踏み止まっているに違いない」
と告げた。
将は彼を見ると
「何故、村人だと分かるんですか?」
と聞いた。
桐谷世羅は深く息を吐き出し根津省吾に渡された愛知県警の情報を机に置いて
「2年前に赤川本部長の片腕だった黒川譲という愛知県警のキャリア組の警部が事故死している。その後に副本部長に就いたのが山坂順二だが任命に口添えしているのが警察庁で更迭されたJNRの人間だった三津野忠雄だ。つまり山坂順二は『狼』の可能性が大だ。まして副本部長と言う立場から人事などに食い込んでいると想定できる。恐らく愛知県警のJNRの中核の一人だろう」
と告げた。
「しかもその事故の調査をして事故死と判断しているのが当時捜査一課第一係長だった山坂順二本人だ。胡散臭すぎるだろ」
その意味。
愛知県警はいまJNRの巣窟となっている可能性が高いということである。用心に用心を重ねる必要があるということだ。
将は固唾を飲み込んだ。下手をすると命にかかわることである。それは八重塚悟の死や佐藤雅樹の事故が教えている。
同じ組織の人間すら殺すのだ。許せない反面そういう組織とリアル人狼ゲームをしているのだと自覚する必要があった。
将は翼と省吾と由衣を見て
「気を引き締めていかないとな」
と告げた。
三人とも静かに頷いた。