愛知県警のケイドロ プロローグ 3
それに将は目を見開くと
「本格的な? いま俺たちがしているのが警狼ゲームでは?」
と聞いた。
桐谷世羅は笑って
「いやいや、今はまだ唯のゲームだ。お子様向けだな」
と言い
「警狼ゲームは警察内部で行う人狼ゲームだ。あんな特殊な設置をしていかにも“やっています”感は出さない」
と告げた。
「通常業務の中で『狼』を暴く。それは長官が考えているみたいだがな」
将と翼と省吾と由衣は互いに顔を見合わせた。桐谷世羅は彼らを見て
「だからこそ俺は、絶対に心が揺らがない人間を……お前らを選んだんだ」
と告げた。
「人狼ゲームの狩人が村人を裏切ったらゲームが成り立たねぇだろ。それこそ警察も日本も崩壊だ。それだけ重要な任務を背負っていると思ってやってくれ」
将は固唾を飲み込むと強い瞳の輝きを宿して
「はい!」
と答えた。
翼も省吾も由衣も頷いて
「「「はい!」」」
と答えた。
桐谷世羅は笑むと
「じゃ、前置きはそれくらいにして……次に仕掛ける先だが、愛知だ。愛知県警と鹿児島県警は林間合宿の申し入れに警戒した返答だった。つまり内部に反対者がいるということだ」
と告げた。
「先ず仕掛けるのは愛知県警だ。一か月後に実行する。それまでにゲームの形を練っておいてくれ。必要な人材、物資、そのほかのモノはこちらで用意する」
……お前たちのゲーム脳に期待する……
「特に東大路、お前のプランナーとしてのセンスが問われるぞ」
将は笑みを浮かべると
「任せてください」
と答えた。
翼は苦笑して
「まあ、先のサバイバルゲームは中々いけたけど……自信満々だな」
と小突いた。
将は笑って
「そりゃ、お前や根津や菱谷さんっていう強力な仲間がいるからな」
と言い
「根津の解析能力の高さは先のサバイバルゲームでわかったし、それから天童、お前の眼もな」
と告げた。
翼は目を見開くと
「ん? なんだそれは?」
と聞いた。
将は笑むと
「天童にはきっと俺には分からない空気を読む力があるんだと思う」
と告げた。
「きっとそれが必要になると思う」
翼は苦く笑むと
「まあ、それは……」
と呟いた。
将はあっさり
「俺はその力はお前がどうだったとしてもあったと思う。所謂、天賦の才だな」
と告げた。
翼は目を見開いて将を見た。
将は笑むと
「それにゲームプランは俺のやりたかった仕事だから思いっきり楽しませてもらう」
と明るく答えた。
「楽しみながら狼を暴き出すリアルゲームをプランする。人の人生を左右するから狼の取り違えをしないように慎重にしないといけないけどな」
それには翼も省吾も由衣も目を見開いた。
そう狼でないモノと狼とを間違えてはならないのだ。
JNRに対する感情で目を晦ませてはならないということである。
由衣が静かに笑むと
「確かに……そこは忘れてはいけないところですね」
と告げた。