大阪府警のサバイバル 13
きつく巻かれた布を払うとブラジャーが彼女の双丘を描いていた。
藤原美也子は驚いて
「あいつに……兄妹が?」
と呟いた。
彼女は藤原美也子を睨み
「そうよ! 私は八重塚悟の妹、八重塚圭よ! 兄をどうしたの!? 雅樹兄さんは貴方に呼ばれて出て行ったきり戻らなくなったって……貴方は聞いても答えないって!!」
その時、将のイヤホンに桐谷世羅の声が流れた。
将は目を見開くと藤原美也子の前に進み
「藤原、お前の正体と背後についてはきっちり聞かせてもらう。だが、ここまでした八重塚の妹に本物の行方を教えたらどうなんだ?」
と告げた。
「どちらにしても俺たちはお前の口から聞き出す」
……警察はお前たちを逃がしはしない……
彼女は唇を噛み締めて俯いた。
だが口を開く様子はなかった。
彼女も組織の人間である。喋るということがどういう結末かが想定できるのでそう簡単に吐きはしないのだ。
翼は黙る藤原美也子にフゥと息を吐き出すと横に屈み
「藤原」
と静かな声で呼びかけて耳打ちすると
「なあ、失敗したお前の行く先もわかっているだろ? この時点でもう遅いんだぜ?」
と告げた。
そして静かな笑みを浮かべると囁くように目を向けた藤原美也子に
「……組織は『失敗者』を許しはしない。報告者じゃない失敗者だ」
と告げた。
「絶対にな」
……黙っていようといまいと、クビになった時点で『死』だ……
彼女は翼を見つめた。
「まさ、か……貴方……」
翼は業と酷薄な笑みを浮かべると
「俺はお前と同じだ」
殺される運命の方のな、と告げた。
「組織のやり方ぐらい……お互い分かってるよな? お前は俺側だぜ? 黙ってても警察をクビになった時点で殺されるしかない」
悪寒が彼女の背中を立ち昇った。
『死』が彼女の脳裏に現実として浮かび上がったのだ。