大阪府警のサバイバル 4
将はばさりと置かれた参加候補の書類の中から一枚手に取り
「八重塚悟? ……22歳で大阪公大法学部卒業か。けど……こいつ……」
と呟いた。
明るい笑顔がそこに映っている。
だが。
だが。
将は桐谷世羅を見ると
「この彼……が組織の人間の一人ということですか?」
と聞いた。
桐谷世羅は首を振ると
「わからん」
とあっさり応え
「わかっているのはこの人物がJNR……組織の人間を『JINROU』からJNRって呼んでいる。組織じゃあからさま過ぎるって事での隠語だ」
と最後の一枚を前に滑らせて
「こちらで分かっているのは、こいつだけだ。他の人間は全員グレーゾーンだ。お前達と同じだと言えばわかるだろ?」
と告げた。
確かに自分たちの場合も最初は省吾だけが分かっていた。そして、彼と同じ様な境遇の人間が選出された。
今回も同じだと言っているのだ。
分かっているのは一人だけ。
ただ前回はそれでももう一人いることは分かっていた。今回はそれすら分からないということだろう。
将は冷静に
「これからはこっちの方が多いんですか?」
と桐谷世羅に聞いた。
桐谷世羅は腕を組むと
「恐らくな。それどころか全員がシロでもするという可能性もある。こういう密告がある方が少ないし、この課が作られたのは異常事態が発生したからだが、存続していく理由は観察だからな」
と告げ
「ああ、一応正式に課が作られることが決定した。『警察庁刑事局組織犯罪対策部内部組織犯罪対策課』だ」
……お前たちはオープニングスタッフだな……
将も翼も省吾も視線を交わして
「「オープニングスタッフ」」
と呟いた。
省吾は笑って
「なんか、警察って感じじゃないね」
と告げた。
将も翼も苦笑して
「「確かに」」
と告げた。
桐谷世羅はふっと笑って
「まあ、そう言うことだな」
と告げた。
省吾は不思議そうに考えながら
「でも、課を正式に作るってことは俺たちの居た組織の人間を捕まえても続けるってことなのかな?」
と呟いた。
桐谷世羅は肩を竦め
「そんなことは知らん。まあ、ストップは一回にすると言っているから外部組織の人間を出したら終わりかも知れんけどな」
そういうのはストップ掛ける奴に言ってくれ、とさっぱりと告げた。
将は頷くと
「あの、それで俺から提案があるんですけど」
と告げた。
桐谷世羅は将を見た。
将は笑みを浮かべると
「だったら、今回はサバイバルでしませんか?」
と告げた。
「全員参加でもできますし『実地訓練』と言えます」
翼は目を見開き
「なるほど」
と呟いた。
桐谷世羅は笑むと
「ほう、方法は考えているのか?」
と告げた。
将は頷くと
「ただ場合によっては新人警察官半数以上をクビにすることになるかもしれませんが」
と告げた。
桐谷世羅はさっぱりと
「かまわん。クビにするかしないはこっちの裁量で了解を得ている」
と答えた。
将は笑んで
「では、大阪府警新人警察官全員で戦ってもらいましょう」
と言い
「足らない分の身上書や幾つか用意してもらいたいモノがあるのでお願いします」
と告げた。
……狼狩りのゲームなので警狼ゲーム第二弾を……
「開始しましょう」
先の人狼ゲームを畳みかけるように方向づけした時と同じ笑みを浮かべる将に翼も省吾の固唾を飲み込んだ。
大阪府警の新人警察官の運命を握る人生ゲームをどんな形のサバイバルゲームにしようとしているのか分からなかったからである。