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プロローグ 4

「警察内部に確かに二つの組織があり異質組織が拡大している可能性がある」

 

 鷹司陽は警察庁長官の執務室を訪れ各調書と一通の遺書を鬼竜院闘平の前に置いて告げた。


「6月に暁埠頭で自殺をした吉永巡査についてだが、自殺した彼の手に硝煙反応が出ていなかった。本来、自ら銃を撃てば手に硝煙反応が残る。なのに、硝煙反応はなかった。本来なら自殺ではなく自殺に見せかけた他殺を疑うところだが……それが分かっていながら自殺と処理されていた」


 他殺を自殺として隠蔽した可能性を示唆した。

 鬼竜院闘平は目を細めて頷いた。


 そして遺書を示すと

「その処理を行った角倉警部を問いただしたところ彼は自らが射殺したことを認めた。彼の娘がその9月に心臓の手術を受けている。遺書には何も書かれてはいないが……恐らくその金のために手を染めたのではないかと俺は思っている」

 と言い、小さく息を吐き出すと

「角倉警部はその場で緊急逮捕しようとしたが……自殺を止めることができなかった」

 と顔を伏せた。


 鬼竜院闘平は遺書とその日付を見て

「こうなることを覚悟していたんだろう」

 と小さく呟いた。

 既に先に書かれていたものだったからである。


 鷹司陽は険しい表情で「だが止めなければならなかった」と小さく頷き

「更に7月の千葉県鹿嶋市平井海岸に流れ着いた松葉晋巡査に関しても自転車は海底から見つかり事故と処理されていたが、松葉晋巡査の血中から僅かながら睡眠薬成分が見つかっていた。しかも、自転車が見つかった波止場には自転車のタイヤ跡がなかった。つまり、松葉晋巡査は睡眠薬を飲まされ海に投げ込まれ、自転車を波止場に沈ませたということが考えられる。なのに、巡回中の自転車による転落事故として処理されていた」

 と言い

「自転車のタイヤ痕もないのに自転車は見つかった。その発見に至った自転車の捜査と調書作成は佐藤警部が行っていた。佐藤警部を問いただすと自白し、現在、所轄で裏取りと再捜査を行っている。最後の魔の一日に関しては辰村孝一と勝尾源蔵の二人が逮捕されたが……二人とも服役中に死亡している。原因は両方ともが心臓発作で同日の看守が同じ人物だった。問いただそうとしたが行方不明になっている」

 と告げた。

「これらの事件について俺はこの角倉警部の遺書に書かれていることが真実だと思っている。三件の事件には裏の共通項があるからな」


 鬼竜院闘平は三件の調書を見直して

「全て埠頭ということか」

 と告げた。


 鷹司陽は頷いて

「更に言えば辰村孝一と勝尾源蔵が供述していた船舶による密輸を隠蔽できる交番ばかりと言うこと」

 と告げた。

「もしかすると密輸によって得られる利益が何かの組織の資金源となっているのかもしれない」


 つまり、それに気付いた交番員を事故や自殺に見せかけて殺し口封じをしてきたということになる。

 その上で警察内部にいる組織の人間が隠蔽を行ったということだ。


 しかも遺書には

『私以外にも金で動いた警察官がいる。そして、彼らを使って本当の組織の人間を新人警察官として入れ込もうとしている。警視庁に入る二名の組織の人間は決まっているらしい。地獄へ持って行こうと思っていたがそれはしてはならないと。吉永には決して許されないことをしたと思っている』

 と書かれていた。


 三件の事件は同じ県警内ではない。浸食はかなり進んでいると考えて良い状態であった。

 事態は一刻の猶予も出来ない状態まで来ている。


 しかも『本当の組織の人間を新人警察官として入れ込もうとしている』と書かれているのだ。


 鬼竜院闘平は静かな声で戦線布告するように呟いた。

「警察機構に食いついてきた狼を狩らねばならない」


 大ナタを振るうことにしたのである。


 そして……この4月1日。


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