プロローグ 2
翌月7月9日の早朝に犬の散歩をしていた女性が平井海岸の波打ち際に俯せで倒れている警察官を発見し通報した。
警察官は近くの交番で勤務する松葉晋と言う巡査であった。
更に二カ月後の9月11日。神奈川県横浜市港南区にある横浜刑務所内で1年前の3月に二人の警察官と代議士の殺人と殺人未遂で逮捕された元神奈川県警本部次長の勝尾源蔵の遺体が独房の中で発見された。
この時、それら全て無関係のように『自殺もしくは事故、病死』として処理され何事もなかったように日常の流れの中へと消え去った。
しかし半年後。
一通の密告メールが第74代警察庁長官鬼竜院闘平の元に届いた。
『警察に二つの組織あり。6月の暁埠頭。7月の鹿島平井。3月横浜山下での魔の1日を再調査されたし』
短い一文であった。
しかし、内容は異様なほど重いものであった。
『警察に二つの組織』とは警察内部に外部組織の人間が紛れ込んでいるという警告。国民の生活を守るべき警察の内部に外部組織の工作員が紛れ込むなどあってはならない。
俄には信じられない話である。
だからと言って、一笑に付することもできない。
メールを目にした鬼竜院闘平は厳しい表情を浮かべると即座に決断すると受話器を手に取った。
「赤木勇介警視監、鷹司警視に連絡を取ってもらいたい」
……直ぐにだ……
常にない重々しい声に警察庁刑事局長を担う赤木勇介はメガネのブリッジを押し上げて
「わかりました」
と答えると内線を切って素早く個人の携帯電話に指先を伸ばした。