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警狼ゲーム  作者: 如月いさみ


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新潟県警の狼 9

 将はジッと翼を見て

「……別に天童は天童だし、俺は俺だから俺のようにしなくていいぜ」

 と告げた。

「天童らしくすればいい。俺だって天童のようにはきっとできない」


 翼は小さく息を吐き出すと

「お前にはわからないさ」

 と立ち上がると、そのまま背中を向けて立ち去った。


 将は動きかけたものの傷を抑えて

「はぁ!? ったく、わかってないのは天童だろ」

 と呟いた。


 将は天童翼の持つ目を持っていないのだ。誰が悪に染まろうとしているのか。JNRが誰の手を引こうとしているのかなど分からない。それをこれまで見つけてきたのは彼なのだ。


「わかってないのは本当に天童の方だ!」

 将は息を吐き出すと窓の方を見つめた。


 桐谷世羅は暗い表情で戻ってきた翼を見ると

「やっぱりだな」

 と心で呟き、立ち上がると

「よし! 色々手配もあるから明日には計画書を提出しろ。それで明後日から新潟に乗り込め」

 と告げた。

「根津は合宿時の天童のフォローと向こうでの設置とかの準備をしろ。菱谷は根津と警備部の連絡係だ」


 ……天童は本番まで自由行動だが新潟県警の協力者に計画書を説明しながらそれでよいかを相談する……


「わかったな!」


 三人は頷いて「「「はい」」」と答えた。


 省吾は翼の表情を見ると

「翼、大丈夫かなぁ」

 と心で呟いた。


 これまでずっと側にいたが、東大路将と出会ってからの翼は少しずつだが変わり始めていたのである。それは良い方の変化だと省吾は思っているが、その変化につきものの壁にいま当たっているのだろうと感じた。


 初めての一人での人狼ゲームのストーリーテイラーだ。ただのゲームならそれこそものの見事にやってのけるだろう。だがこのゲームは唯のゲームではない。警察に入り込みその権力を使って隠蔽や事件を起こそうとしている悪意を抱く人間を見つけ出し、その人間を屈服させ、且つ、そこにいる善良な新人警察官を鼓舞する役割があるのだ。


 一度はJNRという組織に足を踏み入れ光がまぶしくて目が開けられない状態でいたのだ。そんな人間が善良な新人警察官を鼓舞する役割が担えるのかを不安視しているのだと省吾には気付いていた。


「だけど、東大路は東大路だし……翼は翼だから……俺はきっと大丈夫だと思ってる」


 省吾はそう呟いて準備を始めた。

 二日後、翼と省吾と由衣は新潟へと旅立った。将は見舞いに訪れた桐谷世羅からそれを聞き

「天童はどうでした?」

 と聞いた。


 桐谷世羅は笑むと

「まあ、お前がいなくて不安そうだったが……大丈夫だ」

 と言い

「お前はどうだ? 天童がいなくなったら」

 と聞いた。


 将はそれに

「勿論、不安だけど……でもやるしかない……と思ってます」

 と真っ直ぐ見つめて応えた。

「もちろん、天童や根津や菱谷がいて安心できるし、俺は天童達のように悪意を抱こうとする人間を見極める目を持っていないと思ってる。それでも見つけたら見逃す気はない」


 桐谷世羅は「そこだな」と言い

「お前は多々倉と同じタイプだ」

 と言い

「お前はそれでいい。それにな、お前はちゃんと悪意を抱く人間を見つける目を持っている」

 と告げて

「天童は大丈夫だ。成長して帰ってくるから安心して待っておけ」

 と立ち去った。


 将は笑顔で見送り

「退院したら……高見の見学にいってやる」

 と呟いた。


 将がそんなことを考えているとき、翼と省吾と由衣は新潟駅の雪景色に目を見開いていた。駅の周辺の道路は雪がなく道が見えているが……その雪が寄せられた場所にはこんもりとした雪の山が出来ている。しかも歩道には雪が積もっているのだ。


 翼は慎重に歩きながら

「山形と変わらないな。滑らないように気を付けねぇと」

 と言い、隣で滑りかけた由衣の腰を支え

「……そうか菱谷は」

 と呟いた。


 彼女は笑みを浮かべて

「ありがとうございます。はい、大阪の方は殆ど雪が降りませんから」

 と答えた。


 省吾も慎重に足を進め

「まあ東京の方は少しだけど降るからね」

 と言いながら走ってやってくる人物を見て

「強者だ」

 と告げた。


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