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警狼ゲーム  作者: 如月いさみ


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新潟県警の狼 6

 桐谷世羅は目を細めて

「しかし人事権は教官一人じゃぁどうしようもないだろ。まあ、学校での成績がモノを言うのは言うけどな」

 と告げた。


 神生波留は頷いて

「ええ、その辺りも内偵したら警務部警務課第一人事係の松本圭也巡査が警察学校へ度々訪れて勝尾時春と接触しているのが分かっています」

 と言い

「松本巡査の話では配属の助言をもらうためと言っているそうですが……まあ、この辺りは普通でもあることだったので見過ごされていました。それに3年前に勝尾教官の教育担当が語学に変更されていたんです。警務部の方の指示だったそうですが」

 通常ではありえませんが警務部から報告がないと気付きませんからね、と告げた。


 桐谷世羅は腕を組むと

「確かにそうだな。それに卒業したばかりの新人警察官の交番勤務の配置もそれほど重要視されてはいないところだしなぁ」

 と呟いた。


 白木啓介はそれに

「しかし、地域課の交番勤務から誰もがスタートを切って2年ほどで新しい配属へと移っていくと考えるとこれが重要なんですよねぇ」

 と告げた。

「成績によって中央に近い重要な交番勤務が埋まり、人のいない駐在所になると出世がね。それに交番員こそ現場の目ですから配置場所によっては色々な犯罪を隠蔽できるんですよ」

 

 桐谷世羅は目を細めて笑みを浮かべ

「いや、確かにあんたの言う通りだ。交番勤務の場所によって出世が変わるのは事実だし場所によっては重要な犯罪を隠すこともできる」

 と告げた。

「今年の初めに警察庁長官の元に外部からの密告があった。JNRと警察庁内部では呼んでいる組織だがそのJNRが人員を潜り込ませてその組織に都合の悪い事件を揉み消していたことが分かっている。そしてそれを見つけた交番員を消していたことも……もしかしたら勝尾時春とその警務部の第一人事係の松本圭也巡査もそうかもしれない」


 白木啓介は安堵の息を吐き出し

「いやぁ、何寝言を言っていると言われるかと思いましたけどね」

 と言い、神生波留を見ると

「神生課長は本物の勝尾時春の発見をお願いしますね」

 と告げた。


 桐谷世羅は彼を見ると

「本物は死んでいると?」

 と聞いた。


 白木啓介は冷静に

「そうでなければ良いと思いますが……本人が望まず他人が数年も成り代わり、且つ背後に組織がいると考えると可能性は高いかと」

 普通は人が生きて活動している以上は痕跡がある。と答えた。


 桐谷世羅は立ち上がりながら

「あんたは怖い人だな、するりと人の心に入る柔和さを持ちながら認めたくない現実を見つめる目も持つリアリストでもある」

 と敬礼をした。

「そうそう、こっちの若いのを送る手はずを整えるが……力を貸してもらいたい」


 白木啓介は立ち上がると

「こんなうだつの上がらない老兵のような人間で良ければ」

 と答えた。


 桐谷世羅は笑むと

「ああ、貴方が良いと思ったからな。宜しくお願いする」

 というと、神生波留を見て頷いた。


 その時、白木啓介が「ああ、そうそう」と呼び止めると

「これは余談なんですが……そのJNRという組織が各地の警察に浸食しているとしても秋田県警だけは大丈夫だと思いますよ」

 と告げた。


 桐谷世羅は肩越しに見て

「何故?」

 と聞いた。


 白木啓介はにこやかに笑むと

「あそこの県警本部長は隼峰統と言う人物がしていましてね。両脇もかなり固いし……何よりも秋田自体が特殊な土地柄ですから」

 と告げた。

「JNRの人間が潜り込んだとしても直ぐに神の眼で弾きだされてしまいますよ」


 桐谷世羅はピシっと動きを止めて

「本気か? それともからかわれているのか??」

 と心で突っ込みつつも

「……内容は突拍子もないが何故か信用していい気がするのが怖いな」

 と呟き

「ご助言ありがとうございます」

 とだけ返して駐在所を出た。


 雷駐在所の周囲はホテルもマンションもない片田舎。白い稜線にどこまでも続く白い田畑の向こうにぼんやりと木か町のビルか分からないものが見えるだけの場所である。


 桐谷世羅は車の助手席に乗り込み神生波留が車を走らせると暫くして

「白木啓介警部補はあそこでずっと?」

 と聞いた。


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