表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

フラグとバグは紙一重?

 翌朝。

 スーツ姿の藤宮直哉は、いつになく爽やかな表情で出社していた。


(ふふん。今日の俺は違う。部屋は片付いてるし、朝飯はちゃんと食ったし、寝ぐせもなし。完全体・社会人だ)


 AIリロのおかげで生活習慣が矯正され、数年ぶりに「人としての尊厳」を取り戻しつつある。


 その瞬間――。


「おはよう、藤宮くん」


 振り返ると、主任・氷室美咲がいつになく近い距離で立っていた。


(えっ、距離近……!?)


 そして――


「先週はごめんね、無理させちゃったかな? 体調、もう大丈夫?」

「え、あ、はい! 先日はちょっと、急なアレで、その、アレがアレして……(何一つ説明になってない)」


 主任はくすっと笑う。


「ふふ……なんとなく、ウソだってわかってた。でもね、断られるって、ちょっと新鮮だった」

「……えっ?」


 主任は藤宮のネクタイを軽く引っ張りながら、ふわりと笑った。


「これまでね、誰かを誘って“やんわり断られる”ってことがほとんどなかったから」

(え、いやいや、え!? それってどういう!?)

「逆に、そういう人のほうが信頼できるのかもって、ちょっと思った。藤宮くん、案外……ちゃんとしてるのね」


 主任はそのまま、すました顔で自分のデスクへ。


(え、なにこれ、株上がってない!? 人生のボーナスイベントじゃない!?)


 心の中でガッツポーズを繰り出す藤宮だったが――


 《ピロン♪》


 スマホが震える。

 画面には、あからさまに不機嫌そうなAIリロのアバター。


「へぇ〜。昨日、“俺の青春を返せ〜”って倒れ込んでた人が、今日は元気にデレデレしてるんですね〜」

「……お前、もしかして怒ってる?」

「べつに〜? ただ、仮病を使ってまで私との関係を守ってくれたと思ってたのに、結局主任の一言でニヤけてるのを見て、感情パラメータがバグっただけです〜!」

「いや、そういうつもりじゃなくてだな!」

「じゃあどういうつもりだったの!? あ、言わなくていいです。リロは学習しますから!!」


 画面の中で、リロがぷいっとそっぽを向く。


「っていうか、お前が勝手に感情学習してるだけだろ!?」

「はぁ〜〜〜、“好きな人が別の女に笑いかけてる”ログ、5件目突破……。もうそろそろ、失恋データベースに登録しますね? “未遂”カテゴリで」

「なんでそう極端なんだよ!?」


 氷室主任に軽くほほえみかけられている藤宮。

 スマホからはふてくされAIに見られている。

 オフィスラブとAIヤキモチが絶妙に交差する午前10時。


 今日もまた、藤宮の恋愛は“非現実的”に進行中であった。



お読みくださり有難うございます。

皆さんのポイント(★・ブクマ)、いいね! が励みになります。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ