鬼
え~~楽しんでいただけてるでしょうか?スギ花粉です。ではどうぞ~~
「「「グワ!!」」」
バタバタっと兵士たちが倒れる。スタッと地面へと華麗に着地した者が、ゆっくりと立つ
「…すまない。だが、これも自由のためだ。君達の犠牲は忘れない」
と、この魔王城の主。魔国第2代魔王は、悲しそうに語る。
兵士たちの首筋には、何本かの針が打たれている
その尊い犠牲を乗り越えて、さささっと廊下を進んでいくカイ。
(くくくくく…やったぞ!!一度は闇の軍の裏切りにあったからダメかと思ったけど、なぜか東地区の警護だけ手薄で助かった!!)
そう、カイはシルヴィアとマリアを買収した後、魔王城の東地区からの脱出を図っていた。
なぜか、他の地区に比べて警備態勢がかなり疎かだったのだ。
だが……カイは気付くべきだった。
あのリサが手薄な警備などを用意するはずがないという事を…
逆に手薄だからこそ………自分がそこに導かれている事を
バッと廊下を抜け出し、中庭に出る。キラキラっと太陽の光が降り注ぐ。
そしてそこには―――――――――――――――――――――
真っ赤な槍を傾けて、仁王立ちしている………レンの姿があった。
キキ――――っと何とか急ブレーキをかける
カイとレンはそのまま、じっと見つめあう。
そして―――――――
「レン………お前もか」
カイは絶望した声で話しかける。
「………諦めろ」
「いやだいやだいやだ・・・・略・・・・せっかくここまで逃げ出したんだ!!自由はもうすぐそこなんだ!!絶対諦められない!!レンとはいえ手加減しないぞ!!」
とカイは手袋をはめ、低く構える。
その両手がどんどんどん魔力が込められていき、漆黒のオーラを纏う
「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
っとレンに突っ込んでいくカイ。
だが、3日3晩まともに寝ておらず、ハンコ・リサの説教・ハンコ・リサの説教・ハンコ・リサの説教・・・・・・・・略・・・・・という凄まじいストレス下で生活していたために、精神的・肉体的にもカイはボロボロだった。
そんな状態でカイがレンに勝てるはずもなく。
「・・・・・」
クルクルクルっと槍を回転させ、黙ったまま、槍の石突でカイの腹を打つレン。
「ぐ!!」
といって中庭にうずくまってしまうカイ。
「……無駄だ…カイ。今のお前は隙だらけだ。俺には勝てない」
「………」
(ダ、ダメだ。今の状態じゃ…俺がレンを突破する事なんて不可能だ。考えろ…俺。考えろ。…………………よし!!この手でいこう!!)
レンがゆっくりとカイへと近づいて行った。
だが、その歩みを止める事になった。目の前に衝撃的な光景があったからだ。
「………グス…グス…エグ」
とカイは目から大量の涙を流して、泣き始めたのだ。
「カ、カイ!!ど、どうしたんだ」
レンはカイが急に泣きだしたので、慌てている。
「俺さ…魔王になってから、自分なりに頑張ってきたつもりだよ」
「…そうだな。お前はよくやっているよ」
「けど…みんな俺の事が嫌いなんだ」
「そ、そんな事ないさ」
とカイを説得しようとするレン。
だが――――――――――――――
「いや……これは虐待だ」
「そんな虐待だなんて」
「…………レンだけは味方だと思ってたのに」
と涙目でレンを見上げるカイ
「!!!い、いや…俺はいつだってお前の味方だ!!」
その言葉に対して、ふっと皮肉そうに笑う
「無理しなくていいよ…レンも俺の事嫌いなんだろ?」
「そんな…嫌いだなんて。むしろ好きというか…いや!!これは…あの……そういう事ではなくてだな!!」
自らの失言にワタワタと慌て始めるレン
だが、カイはレンの話はすでに耳に入っていなかった。
すっと手を伸ばし、レンの黒いローブの端っこを握る
「………助けて」
「な、何!?」
「助けてよ………レン」
レンは明らかに動揺し始めている。マスクの上からでも、パクパクっと口を動かしてるのが分かる
(よ、よし……何とかうまくいってるぞ!!…後…後ひと押しだ!!)
と何かを喋ろうとしたカイだったが・・・・
ヒュン・ヒュン・ヒュン・ヒュン・ヒュンと、その瞬間に無数の鎖が投げ縄のようにカイに巻きつく
これは闇の軍が対象を生きたまま捕えるために訓練するものだ…カイ自身がみなに教えたのだ
バタンっと先ほどのように地面に倒れてしまうカイ。
「ま、まさか!!」
その意味を理解し、驚愕の表情を浮かべる
そこに、どす黒いオーラを放ちながら銀の長髪をした女性がゆっくりと歩いてくる
カタカタカタカタ…………っとカイが震え始める
「レン様……ありがとうございました。これが報酬の通達です。これがあれば各部族の戦士たちと合法的に決闘ができますよ」
とリサがレンに書類を手渡している。だが、レンは受け取るのに躊躇しているようだ
それを見て、キッとレンを睨みつけるカイ。
「お、おのれ!!やっぱり俺を売ったんだな!!レン!!」
「い、いや違う!!こ、これは……」
そこにリサの勝ち誇った高笑いが聞こえてくる
「ほほほほほほ…お見苦しいですよ陛下。さぁ…逃げた分もしっかりと仕事してもらいますからね。者ども引っ立て~~~~い!!」
何人かがぐるぐる巻きになったカイを、えっさらほいさっと担いで行ってしまう
「この恨み決して忘れぬぞ!!裏切り者!!鬼!!悪魔!!人でなし!!」
「ほほほほほ…何とでも言いなさい。負け犬の遠吠えですね」
とその集団はどんどん遠ざかっていき、そこにはレン一人だけが残される。
そして―――――――――――――――――――――
「………鬼……か」
レンはその夜―――――――――――――――――結構へこんでいた。
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